名古屋市博で、企画展「文字の力」をみてきました。改めて、文字とは何かと考えさせられました。刀や鏡に刻まれた文字は、権威の象徴としての意味合いが強かったようですが、文字の読めない者にとっての文字は呪的なものだったように思います。文字の文字としての重要な機能は、人間の管理にあったと思います。徴税のためにはどうしても記録が必要です。支配する領域が広くなるほどに、記録あるいは情報伝達手段としての文字は不可欠だったでしょう。文字が国家を造ったといえる面もあったことと思います。文字の普及について、経典の果した役割も欠かせなかったでしょう。文字(漢字)の読み書きができるということは、大きな力をうみました。それで思い浮かべるのが、映画「たそがれ清兵衛」のなかで、女も文字を読み学問をしなければいけないといわせた台詞があったこと、先日のドラマ「足尾からきた女」でも文字を読めば世の中のことがわかるから、文字を学ばなくてはいけないといった台詞です。教室の机にすら座らず、校内を徘徊している生徒たちに、どれだけ読み書きが大事かわかってもらいたいものです。
徳川美術館では、源氏物語絵巻の複製も見ました。こちらの優美な紙と文字は、支配する側の遊びとしての文字でした。生活の心配がないところに文学は生まれるのですね。伝承文学の系譜と個人の創作による文学との系譜がどこで交錯し、どこで分かれたのかも気になりました。