民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

朝部活問題

2014-02-10 15:32:21 | 教育

 長野県教育委員会は、朝の部活動を原則として禁止する方針を打ち出しました。このことについて、パブリックコメントを求めたり意見交換会を開催したりして、広く県民から意見聴取もおこないました。新聞などでも多くの意見が公表されました。しかし、どうも現場の教員の本当の考えが伝わっていないように思われます。もちろん教育は子どもにとってどうなのかが中心に論ぜられなければなりませんが、それを実践する現場の教員にとってどうなのかも、忘れてはならない視点だと思います。しかし、県民の税金を食む教員が、自分の利益になるようなことを述べるのはけしからんという風潮があり、教員の立場からの意見表明はほとんどなされていません。

 行政がいうところの朝部活禁止の理由は、生徒の健康上の問題と家族生活、もう一つははっきりいっているかどうかわかりませんが、学力問題があります。多分大概の中学校で朝練習は、7:30から始業10分ないしは15分前までとなっています。7:30からすぐ練習を始められるには、着替えて用具の準備をする時間があるということで、早い子どもはいけないといわれても、7:00くらいには登校します。学校まで家が遠い生徒は、歩いて40分くらいかかりますから、6:30ころには家を出ることになります。そうすると朝食は6:15ころには食べないと間に合いません。しかも、放課後の練習ができない冬こそ朝練習が大事だとかいって、1年中朝練習を行うようになりました。冬には暗いうちに朝食を食べます。こんな早い時間には家族で食べるとはいきませんから、中学生だけ先に食べて、後で家族はもっと遅い時間に朝食をとることになります。家族で食事をとりましょうなどといっても、そうできなくしているのは学校なのです。早朝に朝食を食べた生徒が、給食を食べるのは日課の関係で多くの中学校では1時ころになります。6時間以上子どもたちは何も食べずに、午前中の学習をすることになります。また、早朝に起きて激しい運動をした子どもは、1時間目から寝ていることもあります。朝早く起きるためには、遅くまで勉強することもままならず、朝から疲れていて学力がつくのかという心配もあります。

 部活動が、生徒指導に大きな役割を果たしていることも事実です。勉強がなかなかわからない生徒に、部活が生きがいを与えてくれます。その部活も続かず、やめてしまった生徒が生活を崩していきます。あるいは、部活に入らない生徒が問題行動に走るのだという教員もいます。そんな効果を十分承知した上ですが、部活指導が中学校教員の大きな負担になっていることも事実です。朝夕はもちろん、土日も練習をみてやらなければなりません。いずれも、勤務の時間外です。年間の報酬は、1万円あればいいほうです。間違えてはいけませんが、年間で1万円です。中学校教員の家族生活はどうなるのでしょうか。ところが、生徒指導で確かに部活が大きな役割を果していることから、部活に命を掛けているような教員の発言力が強く、部活を自粛しようなどとは学校では口にできません。でも正直にいえば、多くの教員にとって負担が重いのです。夜8時9時まで学校に残って仕事していれば、せめて朝くらいゆっくりしたい、といっても勤務時間までに出勤すればいい、と思うのは誰でも自然な考えです。放課後練習時間がとれないから、朝練習をやらしてほしいなどと多くの顧問が思っているような報道ですが、とんでもない話です。勝利至上主義でよその学校より30分でも余分に練習させて勝ちたいと思う顧問はそう考えるでしょうが、それは一部です。朝練習などやっている県は少ないようですが、では毎日朝練習やっている長野県のスポーツは強いのかといえば、決してそんなことはありません。むやみと子どもを拘束しているだけのように思われます

 朝練習やめたから学力がつくか問われれば、明確な答えはだせません。成績が下がったから部活やめさせるという保護者の方がよくいますが、やめさせたらよけい落ちますよと伝えたい。やみくもに勉強に時間を費やせば、学力がつくというものではありません。何事もバランスが大事です。学力に関してはなんともいえませんが、生徒の健康と先生方の負担を考えれば、早急に朝部活は廃止すべきだと思います。