民俗断想

民俗学を中心に、学校教育や社会問題について論評します。

秘密保護法

2013-10-26 11:06:13 | 政治

いよいよ安倍政権が数を頼んで、やりたいことに打って出てきました。国民には知らせない「秘密」とは何でしょう。そうしてまで守らなければいけない「国」とは何でしょう。家族がいて国民がいて、国があります。まちがっても、国があって国民があるのではないのです。健康のためには死んでもいい、といえば笑われますが、国のためなら死んでもいいといえば、ほめられるのでしょうか。人々が皆死んで「国」だけ残るなどというのは幻想で、人がいてこそ国があるのです。戦前の治安維持法第七条には以下のような定めがあります。

第七条 国体ヲ否定シ又ハ神宮若ハ皇室ノ尊厳ヲ冒涜スベキ事項ヲ流布スル事ヲ目的トシテ結社ヲ組織シタル者又ハ結社ノ役員其ノ他指導者タル任務ニ従事シタル者ハ無期又ハ四年以上ノ懲役ニ処シ情ヲ知リテ結社ニ加入シタル者又ハ結社ノ目的遂行ノ為ニスル行為ヲ為シタル者ハ一年以上ノ有期懲役ニ処ス

国の元首は天皇だと憲法で定め、天皇制を否定したら最高無期懲役となるという規定です。戦争に反対する考えをもっていた人々は、皆これでひっぱられ拷問を受けて死んだ人も多くいます。1つの法が国民をあらぬ方向へ導いていく事を、私たちは過去の経験から知っているはずです。今また、どうしたことでしょうか。そうした批判に対して今度の法案では、第六章 雑則 第二一条を定めたといいます。そこにはこうあります。

第二一条 この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない
2 出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。

これを読みますと、 大日本帝国憲法の以下の条文が思われます。
第二十九条 日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於(おい)テ言論著作印行(いんこう)集会及結社ノ自由ヲ有(ゆう)ス

国民の知る権利、報道の取材の自由は、行政によって「配慮していただく」ものなのでしょうか。配慮とはどの程度のもので、配慮しなかったらどうなるのですか。取材行為を誰が著しく不当なものと認めるのですか。法律でありながら、あまりにもアバウトで時の政権にとって都合の良い解釈が無限に可能になっています。こんなのを法律の専門家である官僚がよくも作ったものです。どう考えても、21世紀の先進国の法とは思えないものです。現政権は数を頼みに、こんな法をごり押しでも認めてしまうのでしょうか。次にやってくるのは、更なる日米密約か、憲法改正への水面下の動きか。全て秘密裏に行い、気が付いたら国民は何も知らなかったという事になるのでしょうか。 

民がいて国がある 政治家にはこのことを忘れてほしくありません。