football smile

the days turn into months and years

ウルトラ・コンサバティブ

2007-04-16 | football
最近「ポリバレント」なる言葉をよく聞くようになった。言わずと知れた日本代表監督イビチャ・オシム氏の言葉だが、その意味は「複数の役割をこなせる能力」ということらしい。ゲームの流れや状況に応じて役割を変えて対応しなさい。攻撃だけあるいは守備だけというのではダメです。さらに、走りながら次のプレーを考えなさい。そう、現代サッカーには、スペースも時間もないのだ。そして今日もまた、ポリバレントな選手を駆使した戦術論が繰り広げられている。

戦術は日々進化している。UEFAチャンピオンズリーグのセミファイナルに進出した、チェルシー、リバプール、マンチェスターU、ACミランといった世界のトップクラブを見てみると、どういう戦い方をするチームが勝つのかがわかるかもしれない。どんなに魅力的なサッカーをしても、バルセロナやアーセナルは勝てなかった。そんな言い方ができるかもしれない。しかし、こういった戦術論ができるのは、あくまで最高レベルでの話しであって、大方のプレーヤーにはあまり関係なかったりする。

そして、こういった戦術論に縛られ過ぎるのもどうかと思ってしまう。それが楽しければ最高だけど、楽しくなければ最低じゃない?時代の寵児である、最先端の戦術を理解した有能な選手ばかりが集まって、最先端の戦術を遂行するために寸分違わぬプレーを繰り返す。とにかく勝てば良い。結果が全て。「この道一筋云十年」といった職人さんや、「自分、不器用ですから」といった高倉健さんのような昔気質のプレーヤーが活躍する可能性は、当然ながら低くなる。それはそれで寂しいような気がする。

そんな折、サッカーマガジンに面白い記事を見つけた。フランスの中堅クラブ、オセールについて書かれた西部謙司氏のテキストから。

「おそらくトータルフットボールなど模倣する気もなく、ほぼ40年間にわたって同じ戦術を続けてきたウルトラ・コンサバティブなクラブであった。ところが、その間に対戦相手のシステムは変化し、攻撃するサイドバックやらウイングバックやらが登場する。仕方がないから、システムは固定しながらも、オセールの選手は対応していった。結果的に、オセールのウイングプレーヤーの方が、他チームのウイングバックよりも、よほどポリバレントだったということもあった」

笑!結局、時代の流れを完全に無視することはできないし、ある水準を越えた人は、少なからずポリバレントな資質を持っているものなのだ。職人さんだって健さんだって、時代に必要とされなくなることはないのかもしれない。
コメント
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