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ジョン・ケージの”音の庭”-「龍安寺」(1983-85)

2011-07-26 17:42:29 | 現代音楽

 「龍安寺」ー現在は世界文化遺産に登録されている「石庭」で知られる京都の禅寺である。筆者も今から半世紀近く前に中学校の修学旅行で初めてこの寺を訪れた。創建は1450年で有名な枯山水の「石庭」は室町時代末期に優れた禅僧たちによって作られたと言われている。アメリカの前衛音楽家として名高いジョン・ケージ(John Cage/1912~1992)がこの「龍安寺」に最初に足を運んだ年は1962年のことだった。
 彼がこの禅寺の「石庭」からインスピレーションを受け後に音響表現として作曲にとりかかったのが本日紹介する「龍安寺」である。写真のCDの解説によれば当初彼はこの作品を「エッチング」によるグラフィックからスタートしたとのことである。龍安寺の「石庭」は幅22m、奥行き10mのスペースに白砂を敷き15個の石を一見無造作な感じに5箇所に点在させたシンプルな庭だがそこには日本人が持つ「心」が直感的に感じられる不思議な魅力がある。ケージはこの作品の作曲過程にも偶然性がかかわる独自の「チャンス・オペレーション」を導入した。楽器編成はフルート、オーボエ、トロンボーン、コントラバス、パーカッション、それにヴォーカルという6人の「室内楽編成」である。
 このCD録音は1995年6月22日、ベルリンの「芸術アカデミー」でデジタル・ライヴ録音されている。演奏時間60分余りを要する大曲だが「ヴォーカル」が唱える「詩経」が何か無気味さも感じさせ夏の夜に一人耳を傾けるのもなかなか味わい深いものがある。因みに写真のCDは1996年にスイスのレーベル「HAT HUT RECORDS」からリリースされたものである。(hat ART CD6183)