今後の活躍がさらに期待されるロシア、サンクト・ペテルブルク出身の若手指揮者ヴァシリー・ペトレンコ(Vasily Petrenko/1976~ )については少し前に「NAXOS」録音のチャイコフスキー「マンフレッド交響曲」を紹介したと思うが今回は彼が同様に同レーベルに「ロイヤル・リヴァプール・フィル」とレコーディングを進めているショスタコーヴィチの交響曲を取り上げてみたい。これまでに「第5番&第9番」・「第8番」・「第11番」がリリースされたと思うが特に筆者は写真の「第8番」と「第11番」の演奏が興味深かかった。
「第8番」は有名な「第7番、レニングラード>」に続く所謂「戦争」をテーマにした交響曲で苦難を乗り越え勝利へと進む当時のソヴィエトを描いた作品と言われている。ペトレンコの演奏スタンスはむしろこの作品が持つもう一つの何か独特な「軽妙洒脱」な雰囲気をうまく引き出しているところに筆者は面白味を感じている。一方、「第11番」は副題に「1905年」とあるように「第1次革命」である「1905年」の実際に起きた事件(「血の日曜日事件」)をテーマにした作品である。全4楽章がすべて「アタッカ」でつながれ切れ目なく演奏される。まさに「無間地獄」の悲惨な状況を描いた強烈な性格を持った交響曲である。ペトレンコはこの作品が持つ「悲劇性」を各楽器の音のバランスを巧みにコントロールしながら聴き手の心にはたらきかけているように思える。また録音も大変良好なこともプラスになっているのかもしれない。いずれにしても素晴らしい演奏である。
尚、録音は「第11番」が先で2008年4月22日ー23日、「第8番」が2009年4月6日ー7日にいずれもリバプールの「フィルハーモニック・ホール」で行われている。次回のリリースも楽しみだが筆者は「第7番」あたりをぜひ聴いてみたいと思っている。