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吉原御免状

2007年01月12日 16時30分01秒 | 読書


 隆慶一郎「吉原御免状」は大変面白い本だった。一風斎さんはこの本をビルドゥングスロマンとして捉えてらっしゃったが(こちらの記事)、確かになあ、と納得したものだった。山から下りてきたばかりの何も知らない松永誠一郎。何もできないのではなく、何も知らないのだ。恋愛、剣、そうしたものはおろか自分の出自まで。それまで彼が彼の中に蓄えてきたものは、すべて彼の無意識下にある。この小説を生きることによって主人公は、そうしたものを一つ一つ意識するようになる。いわば覚醒するのだ。ここに成長がある。
 この小説のバックボーンはこの松永誠一郎の成長である。これを縦軸に話が進んでいくのだけれど、ぼくにはその横軸とも言える吉原や江戸の当時のしきたりなども大変興味深く、読むにつれ「へー、そうなんだ」と知的にくすぐられてばかりいた。
 もう一つのテーマである苦界=公界や、あるいは天海僧正実は明智光秀、徳川家康実は影武者などの絡みも面白い。
 公界の権威づけに皇室が用いられるのは木地師の例もあるし、吉原の面々が松永誠一郎に期待するのもよくわかる。
 いや、なかなか読み応えのある時代小説でありました。新感線で昔やってたんだよなあ、切符取りたかったなあ。DVDになっているから買っちゃおうかなあ。

 実は、これは前フリ。
 来週は自転車に乗って「吉原御免状」散歩へ!

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