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ジェーン・スー「私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな」

2013年11月20日 11時57分23秒 | 読書
 自己言及のパラドックスを持ち出すまでもなく、往々にして自分語りは気持ちが悪い。
 その頂点に君臨するのが二谷友里恵の「愛される理由」だとすればこの本は対極にある。自慢話の対極が自虐話だと思われがちだけれど、この本は決して自虐ネタ本ではない。自虐的な部分もあるにはあるが、それらを含めてこの本の最大の特徴は透徹したメタ視線である。つまり我を忘れた自慢話の対極は自虐ではなく、冷静なメタ視線なのだ。もちろんそれにしたって自己言及という罠に陥る危険はある。そこを救うのが未婚のプロ(あるいは「ジェーン・スーと愉快な未婚の仲間たち」)という一人称複数形なのだ。自分の話を友人話にスライドすることによって自己言及にありがちな気味の悪い語り口を避けている。彼女特有のしゃべり方を彷彿とさせるなめらかな語り口ですらすら読めてしまうが、結構用意周到な仕掛けの張り巡らせられた本である。
 未婚のプロとは「「自分が自分じゃなくなるぐらいだったら、さみしさが楽しさを凌駕するまで独身生活の楽しさを味わいつくしたい!」と独身チキンレースを続けている」女性たちのことである。自分ジャンキー、自分が大好き、仕事が面白い、独身生活が楽しくてたまらない、そんな女性たちが40過ぎて自分に適した男を見つけて結婚するだろうか。というより、結婚生活がその独身生活を凌駕すると想像できるだろうか。未婚のプロとは女性の問題ではなく、社会の変化に応じて生まれたライフスタイルなのではないか、と思う。そうした未婚のプロが優れた知性をもって男と女についてユーモラスに語る、これが面白くないわけがない。
 それにしても星野智幸の「毒身」ものから10年、同じ独身にしてもそれを巡る境遇、語るスタイルの変遷に思いを馳せると興味深い。

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