毎日が観光

カメラを持って街を歩けば、自分の街だって観光旅行。毎日が観光です。

物見山

2009年04月21日 11時27分22秒 | 観光
 初めて物見山に行こうと思った。
 荒川サイクリングロードを走る者の間でよく話題にのぼるものの、なんだかバリバリのローディーがトレーニングしてそうで敷居の高さを感じてしまっていて、行かなかった。ぼくなんかがさ、行ってもさ、的な。
 まあ、行ったことのないとこは、とりあえず実際行ってみるのがいちばん。
 荒川を北上するんだけれど、この季節の天気予報ってよく「北の風、のち南の風 晴れで………」などと言いません? 言うんですよ、うちの近所の天気予報だと。で、北に向かって走っていると向かい風が急に追い風に変わる瞬間を体験できたりするんだけれど、その瞬間は、なんというか、クララが立ったのと同じくらい衝撃的な瞬間だったりする。向かい風と追い風って、上り坂と下り坂くらい自転車にとって大きな違い。坂はその違いが目に見えるけれど、風が変わると見た目変わっていないのに急に足が回る、スピードが出る、自転車が自分から進んでいく、全身の細胞が活気づく。「風立ちぬ いざ生きめやも」の瞬間。快楽とも言える特権的瞬間。ああ、ヴァレリー。
 思わず「論理のパラドックスを破壊するのは、論理じゃなくエラン・ヴィタールだあ!」などと叫んだりする、あたりを見回して(見回してって思わずじゃないだろ?)、小声で(しかも小声かい)。
 50kmほど走り、鳥羽井沼で荒川サイクリングロードを降りて、西に数キロ進むと今度はこども動物自然公園自転車道に行き当たる。

 長いよ、名前。荒川と違って道幅も狭く、スピードは出せないが、なかなか雰囲気のかわいい道。ちんたら進む。途中、なぜか自転車道を見失い、一般道を経て、こども動物自然公園着。バス停を見たら、「物見山登山口」と。OK。
 ふもとのコンビニでとりあえず補給。客にローディーが多いんだね、他のコンビニと比べて、カロリーメイトやら一口ヨーカンやらソイジョイなどのラインナップが豊富、おまけにそれらのローディー御用達補給食物が一棚占拠。
 ぼくは埼玉銘菓ガリガリ君で糖分補給、ポカリスエットで水分補給して、上り坂に取りかかる。アクエリアスよりポカリスエットの方がカロリーがあるので、多少なりともいいかな、と。
 どこら辺が物見山なのかわからないので、たまたま前を走っていた二人組のローディーのあとをついていく。結構な勾配が延々と続く。あ、ここが頂上かと思うまもなく、今度は下り坂。ものすごいスピードが出る。自転車で50km以上出すと、少し恐怖を覚える。快感といっちゃ快感なんだけど。また上り坂。ああ、今度こそ頂上かと安堵のまもなく、またまた下り坂。これが延々続き、気がつくとスタート地点に。おお、なるほど、このアップダウンを周回してトレーニングするわけね、ってぼくは別にトレーニングしたいわけではないのだ。

 結局最初の上り頂上近くに物見山山頂は存在していた。ひっそりと。
 物見山は坂上田村麻呂がここで周囲を見回したことに由来するとのこと。出た! 坂上田村麻呂起源。空海起源に並ぶ頻出度である。
 東北の昔話には「昔々」で始まるのではなく、「大同年間」や「大同2年」という具体的な年号で始まるものがある。これも坂上田村麻呂(長いから以下タムちゃん)由来。要するにタムちゃんに征討されて初めてわれわれは文明に浴しました、タムちゃんの蝦夷征伐にわれわれの歴史の起源があるのです、という感情のあらわれ。征服されて、でもそれがわたしのよろこび、うふ的な、そんな、どMっぽい気性を感じてしまう。
 毘沙門天が東北に数多く存在するのも、そんなねじれた感情を表しているかのようだ。
 関東、東北に数多くあるタムちゃん伝説は、その多くがタムちゃん賞賛の色に染まり、タムちゃんをもって、「未開/文明」の切り替えスイッチとしている。
 じゃあ、次の旅はあそこだ。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする