毎日が観光

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桜の樹の下には

2009年04月07日 22時52分53秒 | らくがき


 坂口安吾は鈴鹿峠に咲く満開の桜の恐ろしさを物語り、梶井基次郎は桜の樹の下には死体が埋まっていると主張した。

「これは信じていいことなんだよ。何故つて、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことぢやないか。俺はあの美しさが信じられないので、この二三日不安だつた。しかしいま、やつとわかるときが来た。桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる。これは信じていいことだ」(梶井基次郎「桜の樹の下には」)

 咲き乱れる桜の常軌を逸した鮮やかさに人の心が惑わされるのは当たり前と言っちゃ当たり前だ。非日常を目の当たりにして、人は非日常の世界に引き込まれざるを得ない。だから桃の花の下ではなく、桜の花の下で人は非日常的な宴を張る。
 ぼくも桜の花の異常な光に不思議なものを感じていた。非日常の世界は日常を活性化する。死は非日常側にあるわけで、だから逆説的だけれど、死は生を活性化する力を持っている。満開の桜も死も同じ非日常の世界の存在であり、ぼくは昔から桜ほど卒塔婆が似合う花はないんじゃないかと思っていた。
 写真はソメイヨシノ発祥の地と言われる、染井霊園。高村光雲・光太郎、宮武外骨、二葉亭四迷などが眠っている。隣接する慈眼寺には、芥川龍之介、谷崎潤一郎、司馬江漢、本妙寺には歴代の本因坊、遠山の金さんたちが桜を愛でてる。


 歴代本因坊を従えるような形で家元制度最後の本因坊秀哉の墓がある。川端康成の「名人」がとても好きだが、あれは秀哉の引退碁を描いたものだった(なぜか木谷實が弟子の大竹という名字になっているが)。
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