ダウンワード・パラダイス

「ニッポンって何?」を隠しテーマに、純文学やら物語やら、色んな本をせっせと読む。

宇宙よりも遠い場所・論 61 行きて帰りし。そして、きっとまた…… 06 ラスト・スピーチ

2019-01-29 | 宇宙よりも遠い場所
 ぼくはいしづか監督や花田氏のほかの作品を見たことがないため、それがこの方々のいつもの流儀かどうかはわからないのだが、『よりもい』は様式美をことのほか重んじるアニメだ。それゆえに、いわば数学の公式にも似た均整をおぼえる。まるでバッハやフェルメールのように。
 南極の地と、お世話になった(それに見合うくらいの勤労奉仕はしたと思うが)大人たちに向けた報瀬のこの堂々たるラスト・スピーチが、出航前夜のあのヤケっぱち気味のスピーチと対になっていることはいうまでもない。



「みなさん、おはようございます。」



「みなさんご存知のとおり、私の母は、南極観測隊員でした。」



「南極が大好きで、夢中になって家をあけてしまう母を見て、じつは、私は南極に対していいイメージを持てませんでした。」



「私は、そんな自分の気持ちをどうにかしたいと思って、ここに来たんだと思います。」



(ここで上半身を起こす)



「宇宙(そら)よりも遠い場所。おかあさ……いえ、母は、この場所をそう言いました。」



「ここは、すべてが剥き出しの場所です。」



「時間も、生き物も、」



「心も、」



「守ってくれるもの、隠れる場所がない地です。」



「私たちはその中で、恥ずかしいことも、隠したいことも、ぜんぶ曝け出して、」



「泣きながら、裸で、まっすぐに自分じしんに向き合いました。」



「一緒に、ひとつひとつ乗り越えてきました。」



「そして、わかった気がしました。」


12話で、「内陸基地」を前にした時の映像のつづき。あのあと3人が迎えに来ていたのだ


「母がここを愛したのは、この景色と、この空と、この風と、同じくらいに、」



「仲間と一緒に乗り越えられる、その時間を愛したんだと。」



「何にも邪魔されず、仲間だけで乗り越えていくしかないこの空間が大好きだったんだと。」




結月が真ん中にいるのがいい。12話のあの、廊下のシーンでもそうだった




「私はここが大好きです。越冬がんばってください。必ずまた来ます。ここに。」








かなえが泣き笑いになってるのは、藤堂が(泣いてないよ)とばかりに強がってるのが可笑しかったからだが、貴子のことをずっと背負い続ける親友が、ここで肩の荷をひとつ降ろしたことをみての安堵もあるんだと思う




 かくて別れの時は来る。






3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
バラバラカルテットは南極観測隊員に成長する (qrye)
2019-01-29 11:16:26
南極に来た理由は報瀬にとってはお母さんだった。
4人それぞれ別の理由だった。
出発前夜のスピーチでも言ってることはバラバラだった。

今ここで何を得たのか。
4人全員の一つの
ここを好きになった理由を
報瀬が越冬隊員達に報告する。

それは越冬隊員達にとっては
出発前夜には貴子の娘としか見えなかった報瀬が
高校生4人組が
それぞれ立派な南極観測隊員に成長した事に見えたのだろう。
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1月29日って (古い怪獣映画好き)
2019-01-29 19:24:34
1月29日って「昭和基地開設記念日」ですってね~。
カーナビが教えてくれました。
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2通のご返事 (eminus)
2019-01-29 20:42:29
qryeさん

 そうですね。
 報瀬ひとりのことだけでなく、4人みんなが、一緒になって成長したのを見ての涙ですね。
 それにしても見事なスピーチでした。


古い怪獣映画好きさん

 そうだったんですね。
 この日にぴたっと完結してたらカッコよかったんですが。
「もうちょっとだけ続くんじゃ」という感じです。

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