ダウンワード・パラダイス

「ニッポンって何?」を隠しテーマに、純文学やら物語やら、色んな本をせっせと読む。

スタートゥインクルプリキュア第49話(最終回)「宇宙に描こう!ワタシだけのイマジネーション☆」について。おまけ。

2020-01-30 | プリキュア・シリーズ

 ファンタジーは社会性を捨象することで成り立っている。それが児童向けアニメであればなおさらだ。あえてそこに社会的な要素を持ち込み、リアルに考察したらどうなるか。野暮なこととは承知のうえで、ちょっと試みてみたい。


 最終話(49話)Bパートは今から15年後の設定らしい。2035年。その時代に日本初の「有人ロケット」計画が遂行されることの意味を考えてみたいのである。ただ、これはぼくたちの暮らすこの世界ではなく、あくまでも「スタプリ」というSFふう児童向けファンタジーアニメの「世界観」の中での話だ。それに、「宇宙開発」に関するぼく自身の知見たるや誠にお粗末なもので、それこそ『宇宙兄弟』から得たていどの知識しかない。それやこれやで、野暮どころか滑稽なことになるやもしれぬけれども、頭の体操ないしは一種の知的(?)ゲームとしてお読みください。


 「宇宙開発特別捜査局」に属する香久矢まどかがリーダーとなって推し進め、星奈ひかるがパイロット(のひとり)として搭乗する「日本初の有人ロケット」計画。このふたりが、いわば同志としてタッグを組み、片や国家機関の中枢で、片や現場の最前線で、プロジェクトの立ち上げから推進に至るまで、それぞれに尽力してきたことは想像に難くないけれど、打ち上げの中継でアメリカ合衆国大統領(女性であり非白人でもある)からのお祝いの声明を通訳している天宮えれなもまた、たんに通辞に留まらず、卓抜なコミュニケーション能力を生かして築いた人脈によって対外的にプロジェクトの地固めをしてきたのであろうとぼくは思う。宇宙開発はじつは軍事の領分でもある。技術面での協力関係もさることながら、周到な根回しもなしに、一国だけで軽々に進められるものではない。その貢献あってこその、晴れ舞台での同時通訳なのだろう。


 つまりこの3人はプリキュア活動卒業以降、それぞれの夢を着実に追いかけながら、「宇宙に行く。/(ひかるを)宇宙に行かせる。」という一事に向かって力を合わせて邁進してきたわけである。その情熱および連帯感、そこに費やされた努力(むろん彼女たちはそれを楽しんでいたには違いないけれど)に思いを致せば、あの秒読みのシーンがいっそう感慨深くなる。


 ところで、ぼくたちの暮らすこの世界においては「国際宇宙ステーション」なるものがあり、たんに「宇宙へ行く。」だけならわざわざ自前のロケットを飛ばさずともそこに滞在する資格を獲得すればよい。たぶん児童向けにわかりやすくした、ということなのであろう。しかし、そこで話を済ませずに、スタプリの世界観に即してあえて深読みするならば、もうひとつの可能性が考えられないか。どうしても日本が独自に宇宙へアプローチをかけねばならぬ理由である。


 この手の計画には莫大なコストがかかり、いかにまどかの父君・冬貴氏の総理大臣としてのバックアップがあろうと、生半可なことでは進められるはずがないのである。相応の理由がなければならない。いうまでもなく、ひかる個人の「ララたちに会いたい。」という思いのたけなど、国家レベルの思惑の前では物の数にも入らない。


 スタートゥインクル☆プリキュアの世界観(世界設定)においては、宇宙には「宇宙星空連合」なる機関がある。地球における国際連合に相当するもので、一定以上の文明をもつ惑星は基本としてこれに加入することになっている。加入資格については作中では語られずじまいであったが、いずれにしても要件を満たしておらぬようで、地球は未加入なのである。それどころか、何らかの打診すらなくて、その存在を知っているのはかつてプリキュアであったひかるとえれなとまどかだけなのだ。


 しかし、まどかと冬貴氏との信頼関係の厚さから見て、おそらくこの現職の総理は「宇宙星空連合」のことを娘から聞き、その存在を確信するに至ったと思われる。のみならず、調査員として長期滞在しているP.P.アブラハム氏(地球での職業は映画監督)と何らかの接触をもったのかもしれない。仮にそうだとするならば、表向きは他の名目を押し立てているにせよ、日本が「初の有人ロケット」を飛ばす真の理由が「いずれ星空連合に加入するためのワンステップ」だということは十分に考えられるのではないか。


 むろん現実のニッポンはつねにアメリカの顔色を窺わなければ何もできない国であり(言いすぎかな? まあいいや)、自国だけでそこまでの深慮遠謀を描けるほどの才腕と覚悟を備えたリーダーが現れるはずもないけれど(それこそ中学生女子が変身して敵と戦うくらいありえないことだ)、少なくともこのアニメの世界設定に即すかぎりは、そのような憶測は成り立ちうるとぼくは思う。


 じっさい、そうとでも考えなければひかるたちの苦労が報われない。ひかるの乗ったロケットがどこを目指していたかは不明だけれど、現在の科学技術では有人ロケットの到達範囲として想定しうるのはせいぜい火星までであり、それはスタプリの描く2035年でもさほど大差はないはずなのだ。どちらにしても、ララのサマーンやユニのレインボーには行き着けるはずもないのである。それを承知で「自分の力で宇宙に行く。」という約束にそこまで拘るならば、やはり「星空連合」という介在者を措定しないわけにはいかぬのだ。


 作中では、覚醒したフワ(結局、声だけで姿は見せないままだった)の不思議な力によって約束は果たされるのだけれど(公式ツイッターによると、「感謝祭プレミアム公演の朗読劇は、再会したひかるたち5人の15年ぶりの同窓会が舞台になります!」とのこと)、そのようなかたちで非科学的な奇跡が起こったのも、ひかるたち3人が熱い想いを失うことなく力を合わせて精進を重ね、自分たちのできるかぎりのことをやったあげくの結果なのだ。だから、「ファンタジーに逃げたな。」という感じはぜんぜんなくて、後味はひたすら爽やかだった。






参考画像。ひかるたちの地元であり、本作の主な舞台となった観星町。中央に「P.P.アブラハム」氏がいる。ルックスは、髭を蓄えていた頃のマイケル・ムーア氏にも似ているが、たぶんF.F.コッポラ氏がモデルではないか。じつはこの姿(外殻)はロボットで、本体はトカゲていどの大きさしかなく、内部で操縦している。つまり『メン・イン・ブラック』に出てきたアレである。宇宙星空連合から監視のために派遣された調査員で、数百年に渡って隠れ住んでいたが、百数十年前に地球人が生み出した映画文化に魅了され、ハリウッドで映画監督として活動を続けている














8 コメント

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「キラやば」ですね (aki)
2020-01-30 13:48:11
 お久しぶりでございます。実は1月16日発売の『三國志14』と、1月17日公開の『メイドインアビス劇場版』にしばらく浮気してましたw 特に『メイドインアビス』の方は・・・・。一つの作品に強烈に精神を支配されると、他作品が心に入ってこないというw そんなこんなで最終回を視聴したのもつい先ほどです。

 そんなわけで、今の私は『スタプリ』の結末をきちんと咀嚼できる状態にあるかどうか心許ないのですが、それでも最後のひかるのセリフ「キラやば・・・・」は心に沁みましたね。彼女のこの口癖は、このためにあったのか、と思えるほどに。

 元々私は42話からの途中視聴組で、プリキュアに対する思い入れもeminusさんやもりのさとさんには遠く及ばないと思います。正直言って、私はひかる嬢のこの「キラやば!」が苦手とは言わないまでも、耳にキンと響く声質(失礼!)とも相まって「もうちょっと落ち着こうよ」と一歩引いた受け取り方をしてしまってました。
 好奇心の赴くままに「キラやば!」とぐいぐい踏み込んでいくエネルギーは、ストレートな若さでもありますが、同時に相手を顧みない無遠慮さでもあります。それこそが彼女の魅力ではあっても、やはりそのまま大人にはなれない。人生には失敗も心無い批判も失笑も罵声も山ほどあるわけで、そういった数多の経験を経て、人は「思いを内に秘める」ことを覚える。そしてその沈黙にその人の人格や教養がにじみ出ることを「奥ゆかしい」と言うわけです。

 大人になったひかる嬢の「キラやば・・・・」には、そういった奥ゆかしさを感じるんですね。内に秘めた思いが、抑えきれずに思わずあふれてこぼれたのが、あの小さなつぶやきだった、と。
 一言で言えば、あのつぶやきに、ひかる嬢の重ねてきた年輪が垣間見えるわけです。大人に成長する中で変わった部分もあるけれど、しかし変わらず抱き続ける想いもある。そういったことも感じさせる名セリフでしたね。

 声優さんは成瀬瑛美さん、ですか。ググってみるとアイドルグループ「でんぱ組.inc」の現役メンバーで、現役アイドルがプリキュア声優をやるのは初だそうですね。声優は本業ではないので、他の作品で拝見することはないのかな? ともあれ、好い演技でした。

 ・・・・で、本題はここから(笑)
 日本初の有人ロケット打ち上げが2035年のこととして、アメリカ大統領が祝福のコメントを全世界に放映しているという観点から見て、これを我々の現実世界に当てはめると、これはNASAが進める「有人火星探査計画」のための前線基地(地球と月の間に作る計画だそうです)への物資輸送、及び人員派遣の可能性が高いと思います。
 有人火星探査計画実現のためには越えなければならないハードルがいくつもあるのですが、中でも大きなものが資金難です。NASAはこの計画のために必要な資金を1兆ドル(!)と見積もっているそうで、とても自前では調達は見込めず、民間企業や他国をも巻き込んでプロジェクトを進める方針のようです。前線基地建設のため、及び火星探査宇宙船建造と火星探査のための資材運搬のためにも膨大な数のロケット打ち上げが必要で、その一端を日本が参入して担うことになったのだとすれば辻褄が合います。

 まだまだ太陽系の中ですので、サマーンとかレインボーとかは遥か彼方ではありますが。千里の道も一歩を踏み出さねば始まりませんからね。
 しかし、ひかるが生きているうちに、地球が星間宇宙探査に乗り出せる可能性はほぼゼロですので、やはりララたちに再会するためには奇跡が起きるのを待つしかない。大人になった彼女たちにはそれは判りすぎるほど判っているいるでしょうから、切ないところです。
 それも踏まえての「キラやば・・・・」なんでしょうね。
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ひとつのお遊び、もしくは「夢」として。 (eminus)
2020-01-30 20:53:52

 お久しぶりです。『メイドインアビス』はまったくの初耳だったので、wikiで当該項目を、youtubeで予告映像をみました。あと、ネタバレ紹介系の解説動画もいくつか参照したんですけども、ひとことで印象を述べると、「業が深いなァ……。」ですね。冥界巡りの系譜なのだと思うんですが、ダンテ『神曲』の地獄篇よりも何十倍も地獄篇だよ。と感じましたね。これもまた3・11以降の想像力が生んだ世界観というべきでしょうか。アニメはどこまで行くんだろう。純文学はやはり時代に置き去りにされているのかなあ。とりあえず私として現時点でいえるのはそれくらいでございます。

 「キラやば」は、金色さんのブログによると、秋の劇場版でも「ここ一番」のシーンで使われていたようですね。以前に本編でも書いたんだけど、成瀬瑛美さんの「キラやば~。」は第1話では「平山~。」にしか聞こえなかった。意味不明なのでネットで調べたほどです。でも回を重ねるにつれてぐんぐん上手くなっていかれました。余人をもって代えがたいキャスティングだったと思います。
 全編をしめくくる「キラやば……」は絶品でした。「内に秘めた思いが、抑えきれずに思わずあふれてこぼれた。」そうですよねえ。おっしゃるとおりだと思います。「あのつぶやきに、ひかる嬢の重ねてきた年輪が垣間見える。」「大人に成長する中で変わった部分もあるけれど、しかし変わらず抱き続ける想いもある。」どれも頷けるご指摘です。どれも頷けるもんだから、ぜんぶ抜き書きしてしまいました。

 それで、「本題」のほうなんですが、ぼかぁほんとにこの件に関して無知だから(無知なのはこの件に関してだけじゃないけど)、例によってとても勉強になりました。なるほど。「2035年に日本初の有人ロケットが打ち上げられる。」という事態が我々の現実世界に起こりうるならば、「NASAが進める有人火星探査計画のための前線基地への物資輸送、及び人員派遣の一端を日本が参入して担うことになった可能性が高い。」わけですね。
 じっさいぼくは『宇宙兄弟』から仕入れた知識くらいしかないので、これを機に少し勉強しようかとも思ってますが、ただ、そのばあい、日本はいわばアメリカのサポートというか、もっと言うなら「お手伝いさせていただく。」みたいな具合になるかも……ですね。つまり、いまの日米(正しくは米日)関係の基本形と変わらない。
 それだとどうも、あまり「キラやば~」じゃないぞということで、「スタプリ」という児童向けアニメの中でだけ、ワタクシは夢を見させてもらおうと思います。最終話Bパートで提示されたあのプロジェクトは、日本独自の裁量によると思いたい。だって、本来ならばJAXA(宇宙航空研究開発機構)が前面に出て進められるべき計画を、「宇宙開発特別捜査局」なんてアヤシゲな部署が(まどかさんごめんなさい)主導してるんだから……。これはもう、一般の常識で想定しうる理由ではなく、「地球外の文明」(星空連合)とのコンタクトがひそかに企図されているんじゃないか……いやまあもちろん、こうなると「イマジネーションの力」というよりもはや「妄想力」で、制作サイドの思惑さえも超えちゃってるとは思いますけども、ひとつのお遊びとして、ぼくはそう考えてみたいです。
 だからこのプロジェクトはけっこう無理を重ねて実現へと漕ぎつけたもので、まどかもえれなも、国の内外で、相当に力技を駆使したんじゃないか……ここまで来ちゃうとほぼ悪乗りで、「二次創作でも書いてなさい。」と怒られるかもしれないけれど、とりあえず自分としては、そんな裏設定を思い描いて楽しんでます。
 だけどまあ、これではいくらなんでも子供っぽすぎるので、akiさんのように鑑賞するのが正当には違いありません。本文の補足として、このコメント欄はなるべく多くの方に開いて頂きたいですね。ぼくもほんとにもう少し実際のところを勉強してみます。
 ひきつづき、的確な補足や鋭いつっこみをお待ちしております。



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みんなで宇宙へ! (aki)
2020-01-31 03:01:29
 こんばんは。ご返信を読ませていただき、私も少し考えを述べたいと思いまして。


>日本はアメリカのサポート

 基本的にはその通りで、国力差から言って日本がアメリカを凌駕するような動きを見せることは危険だと思います。第二次世界大戦で、そして80年代の貿易戦争において日本が実際に叩かれたように、自らの覇権を脅かすような国の存在を、アメリカは国家として認めないでしょう。日本はその点において夢というより妄想を追うべきではない。そもそも「覇権国家」なんて、協調を重んじる日本人っぽくないし。
 しかし、中国が急激に膨張し(この膨張は「張りぼて」に近いと個人的には思ってますが)、アメリカに肩を並べようとする動きを見せている昨今こそ、日本が「従属関係」ではなく「対等のパートナーシップ」をアメリカと結べる絶好機なのです。その点、現在の安倍総理は実にうまくアメリカとの関係を取り持っていると思いますね。(他の面では失敗も多いですが)
 日本は日本として、世界正義に基づいた提言を行い、アメリカの覇権の在り方を修正していく、という成熟した国家関係を築けたらいいな、と感じているこの頃です。もちろん、言うほど安くはないことは十分自覚していますが。そもそも日本の政治家自体がまだまだ成熟しているとは言えない。日本の民主主義そのものも然りです。

 ・・・・で、これをまどかえれなひかる達に当てはめるとどうなるかと言うと。

 おそらく、まどかと父の尽力によって、「星空連合」については密かに日本・アメリカ両政府の上層部に伝わっているのではないでしょうか。プリキュアの力を失った彼女たちでは「物的証拠」を提示することができないため、「妄想だろ?」と言われない範囲における限定的な情報だろうとは思われますが。そもそもNASAの火星探査も、「地球外生命もしくはその痕跡を探す」ことが最重要な目的として現に存在します。そこにたとえ限定的な情報であっても、「宇宙には地球以外の知的生命が現実に存在する」という希望が生まれれば、プロジェクトの重みは一気に倍加します。その鍵となる情報を日本側が提供することで、単に「プロジェクトに加えさせていただく」だけでなく「最重要かつ最強力なパートナー」として参画することができるはずです。そして重要な提言を行っていくことで、「覇権国家的」なプロジェクトの中身を「星空連合との協調、将来的な参画」へと変質させていくのです。
 プリキュアとして様々な経験をした彼女たちなら、いや彼女たちだからこそ、できるはずです。

 事は地球人類全体(いやもっと言えば宇宙全体)の問題ですから、日本独自で事を進めるより、全世界と連携して「みんなで宇宙へ」進出していく在り方こそが、より彼女たちらしい、と個人的には感じます。


>メイドインアビスについて
 プリキュア記事のコメント欄に他作品について長々と述べることは差し控えるべきなのですが、ちと我が儘をお許しいただきたいと思います。それくらい、本作は自分にとって衝撃的だったので。

 eminusさんがおっしゃった「業が深い」というのはまことにその通りで、名もなき視聴者が「見る地獄」と本作を形容したのをネットで見たこともあります。それは否定しない、のですが。
 それだけなら、これほどの衝撃を受けることはなかったでしょう。
 全編を通して、視聴者は容赦なく悲惨さや残酷さに打ちのめされるのですが、最後の最後に希望を与えられます。その「希望」が、珠玉のように尊い意味を持っているわけです。だからそこに感動が生まれる。
 ストーリーの手法として見れば、「希望」と「絶望」の落差が大きければ大きいほど、感動を呼び込むことができるわけですが、その落差が作品の中で説得力を持たなければ、かえって視聴者をしらけさせてしまう。そこにストーリーテラーの腐心があるのでしょうが、本作はその塩梅がまことに絶妙なのです。
 すくなくとも私には、こういう話は絶対に書けない。「絶望」の部分を書く段階で負荷に耐えられないし、そういう自分の性向を知っているが故にそういう話を書こうとも思わないでしょう。その意味でも、自分にとって貴重な作品でした。

 eminusさんはネタバレの感想もご覧になったとのことですが、どのレベルまでご覧になったのか分からないので(と言っても「業が深い」とおっしゃる時点でかなりの部分まで見られたのであろうとは思いますが)ネタバレは極力控えさせていただきました。

 まあ、「どうぞご覧ください」とはとても勧められる話ではないですね。はっきりと好みの分かれる内容でしょうし。ただし私個人のことを言えば、この作品から受けた衝撃の大きさはよりもい12話に匹敵するものでした。
 よりもいとはちがい、こちらは続編制作がすでに決定しています。またこの世界観に浸れるのか、と今から楽しみです。

 長文、誠に失礼いたしました。<(_ _)>
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弁明タイム(笑)。 (eminus)
2020-01-31 22:46:30

 いただいたコメントが長文であればあるほど頬が緩んでしまう今日この頃です。ありがとうございます。
 前回の返信は、書いてから「これだとなんか国粋主義のひとみたいだぞ。」と自分でもすこし思ったので、こんなふうに話をつないで貰えて幸いでした。では今から弁明タイムに入ります(笑)。
 なお、これをきっかけに現実の政治の話へと移行することを厭うものではないし、なんならコメント欄を使ってakiさんの政治論を存分に語っていただいても一向に構わない、というよりむしろ大歓迎なのですが、とりあえずここは、頭の体操ないしは知的ゲームとして、あくまでも、スタプリの世界設定に即して話を進めていきましょう。

 コメントの中の、

 「宇宙には地球以外の知的生命が現実に存在する」という希望が生まれれば、プロジェクトの重みは一気に倍加します。その鍵となる情報を日本側が提供することで、単に「プロジェクトに加えさせていただく」だけでなく「最重要かつ最強力なパートナー」として参画することができるはずです。そして重要な提言を行っていくことで、「覇権国家的」なプロジェクトの中身を「星空連合との協調、将来的な参画」へと変質させていくのです。

 というくだりは「我が意を得たり」という感じで、ぼくもそう言いたかったんです(笑)。いやほんとに。いったいに、akiさんから頂戴するコメントは「そうそう。そう言いたかったんだよ。」と思わされることがほとんどだけど、今回もまさにそれです。
 もちろん、

 事は地球人類全体(いやもっと言えば宇宙全体)の問題ですから、日本独自で事を進めるより、全世界と連携して「みんなで宇宙へ」進出していく在り方こそが、より彼女たちらしい、と個人的には感じます。

 という結論の一節についても同意です。日本という一国による覇権主義ではなく、協調志向。それは現実においても望ましいことだし、何よりも、本作の趣旨に鑑みて、とうぜんそうでなければいけません。

 ただそのばあい、「星空連合」にかかわる情報をどこまでアメリカと共有できているか。がポイントになると思うんですよね。だから、

 プリキュアの力を失った彼女たちでは「物的証拠」を提示することができないため、「妄想だろ?」と言われない範囲における限定的な情報だろうとは思われますが。

 ここなんですよね。証拠をどう見せるか。akiさんは42話からの参入なので馴染みがないと思うのですが、本作においては、星空連合から監視のための調査員が派遣されております(本文に画像を貼りましたのでご参照ください)。P・P・エイブラハム氏。現役の映画監督です。ハリウッドと宇宙人にまつわる都市伝説を匂わせて大人の視聴者をニヤリとさせるお遊びでしょう。

 「証拠」というなら、このひとを連れていったら一発なんですよね。物的どころか人的証拠。つまり、エイブラハム氏(の本体)に頼んで、星空連合の認可のもとに、日米の上層部に接触して貰えればいい。そうすれば、ひかるたちの成長を待つまでもなく、すぐにでもプロジェクトは立ち上がり、劇的に動き出したでしょう。

 しかし、本編のBパートを見れば、そういうことが起きなかったのは明白です。どうしてもこのプロジェクトは、15年という歳月をかけて、ひかるやまどかやえれなたちによって進められねばならなかった。なぜか。

 それを考えるために、すこし時間を戻します。

 「宇宙星空連合」の法律では、異星人が身元を知られると罰せられるため、これまで彼はひかるたち以外に正体を明かしたことはない。しかし今回は、「あわや宇宙の消滅?」というほどの事態が起こり、それをプリキュア勢が収拾したわけだから(考えてみたら凄い話ですが)、なんらかの進展があってもいい気がします。具体的には、星空連合サイドから「地球の加盟を前向きに検討する。」くらいの流れができてもよかったんじゃないか。

 でも考えてみれば、あれはあくまで「ひかるたちの功績」であって「地球人の功績」ではまったくない。エイブラハム氏(の本体)はすでに数百年にもわたって地球に滞在しているそうですが(ルネサンスの頃からでしょうか)、「地球の加盟は時期尚早」との判断は一貫して揺らぐことはなかった。それはそもそもなぜなのか。

 科学技術が足りぬのか。あるいは、いまだ地球人としての連帯をもてず、格差を広げ紛争に明け暮れている精神的な未熟さゆえか。いずれにしても、外から見れば「まだまだ幼い。」という評価を近代~21世紀以降もずっと下されているわけです(SFではひんぱんにみる設定ではありますが)。

 以下はぼくの想像ですが、エイブラハム氏および星空連合は、外部からの働きかけではなく、あくまでも地球人による内発的な志向として、科学的かつ精神的に、より高次で成熟したレベルに歩を進める……ことを引き続き求めているのだと思います。

 ぼくなんか、もういい齢なんで恥ずかしいんだけど、残念ながら今の大人たちにはどうやらそれはできそうにない。それで、ひかるたちの世代に希望が託され、彼女たちは「もういちど宇宙に行って、ララやユニやフワたちに会いたい。」という麗しき初心を貫きながら、その夢をしっかり軌道に乗せ、内外のいろいろな機関(公のものも民間のものも含む)をもちゃんと味方につけて、プロジェクトという形で実現にまで漕ぎつけた……のだと思うわけです。

 それでまあ、プリキュアという作品は日本の会社がつくって日本の視聴者が見るものなので、日本が主体になっている。それで作中でも万事、日本が中心となって話が進むわけですが、ぼくが述べたかったのは、「ニッポンは米中に伍して宇宙に進出し、世界の覇権を握るべし。」といったことではなくて、上記のごとく、「地球に暮らすひとたちが、科学的かつ精神的に、より高次で成熟したレベルに歩を進める」ために、日本という国っていうか、まあ共同体かなあ、ニッポンという共同体が、先陣を切っていけたらいいなァ……という感じでした。いわばそのシンボルがひかるであり、まどかであり、えれなであるということですね。「妄想」といったのはおおむねそういう含意であります。確かにちょいと言葉足らずではありました(笑)。

 だからぼくの本意は、akiさんのコメントと大筋のところで一致してると思います。これでいちおう弁明タイム終了ですが、弁明になっていたでしょうか(笑)。



 『メイドインアビス』については、もう少し自分なりに掘ってみるつもりではいますが、今回は長くなるので割愛します。もしakiさんが、この作品についての論評、考察、感想、ないし「思いのたけ」とかそういったものでもいいけれど、まとまった文章を公にしたいと思われるのであれば、ここのコメント欄をご利用いただいても一向に構いません。ひきつづきよろしくお願いいたします。

返信する
返信です^^ (aki)
2020-02-01 20:47:53
こんばんはです。(^^)

>弁明

 いやこれは、こちらこそeminusさんの本意を汲み取れず申し訳ありませんでした。

 大国アメリカの思惑に唯々諾々と従うだけの参入ならば、結局「アメリカだけのため」の宇宙進出に手を貸すことになってしまう。まどかえれなひかるたちの宇宙計画は、そういった「一国のみの利益」でなく、「将来の星空連合加盟を見据えての、そして地球に生きる人類すべてのための、大局観に立った計画」であってもらいたい。

 こういうご主旨だったわけですね。納得しました。正直、「なんかeminusさんらしくねえな?」とか大変失礼なことを思ってしまってたんですよね(爆) いやはや汗顔の至り。失礼の段は平にご容赦を。<(_ _)>

 前のご返信にあった「力技」ですが、エイブラハム氏という存在があるならば(ご指摘の通り、彼のことは存じませんでしたw)、彼の存在を明らかにせずとも、彼の知恵を少し借りて「地球人類の力で解明できる、しかし未知の事実」を日米両政府、あるいは科学界に提示すればいい。三人は政治家、翻訳家、宇宙飛行士なので「科学者」がいませんが・・・・いやいや待て待て。ひかるが「科学者」の立場として宇宙に行く、という可能性も十分ありますw とすると、ひかるが科学界に提出した「未知の事実」がセンセーションを引き起こし、ひかるの宇宙飛行士への道を開いた、ということもあるかも・・・・。
 ただ、もしそうだとすれば、エイブラハム氏の知恵を借りなくても、「宇宙には自分たちの科学力を超える知的生命が存在する」という確実な事実を知っている、という点だけで、まぎれもなく三人は地球の科学界を何十歩もリードしているわけですから、そこにひかるの持ち前の好奇心と驀進力、そして努力が加われば、独力で「人類未知の事実」を発見し、科学界に提示することも可能だと思われます。エイブラハム氏は、ただそれを静かに見守り、彼女たちの成功に彼自身も感動したのかもしれません。・・・・そう理解したほうがこの物語にふさわしいですかね。

 ・・・・なんか三人が人類の偉人に見えてきましたw まあ宇宙を救った時点で人類史上どころか宇宙史上において冠絶する偉人であることには違いないですね。

 いやはや。今回の私のコメント内容も大概妄想に近いですが、その妄想を受け止められるだけの器を彼女たちは持っている気がしてしまうんですよね。なかなかにそれはすごいことです。


>メイドインアビスについて

 御温言ありがとうございます。
 ただまあ、今の私は「衝撃を受けた」という段階で、その衝撃を咀嚼して自分の言葉に置き換えることができていません。何をするにも時間が掛かる性質なので。ですので、今回は先の発言で一応言いたいことは言えています。また何かの拍子に発言することがあるかもしれませんが、その時はよろしくお願いします。
 ・・・・実を申しますと、『fate』と『機動戦士ガンダム』についても、発言する機会を窺っておりますw まあ『fate』はネタですけどw
返信する
素晴らしい最終回でした (金色)
2020-02-02 00:58:18
お久しぶりです。
eminusさんの記事を拝見しまして、えれなさんが通訳者として対外的にプロジェクトの地固めをしていたのではないかという考察には思わず声が出ました。えれなさん、まどかさん、誰のイマジネーションが欠けてもひかるさんは宇宙に行くことができなかったのだと考えると、胸がいっぱいです…。

あと、まどかさんが冬貴さんに星空連合の話をしていたというのも私は思いつかなかったので、確かに…!とうんうん頷いています。そう考えると、あの最終話は本当に想像力が刺激される工夫が張り巡らされているなと思います。

スタプリ、本当に素晴らしい作品でしたね。eminusさんも素敵な考察をありがとうございます。それでは。また遊びに来させてください。
返信する
金色さんへ。 (eminus)
2020-02-02 02:42:42
 ようこそお越しくださいました。完結を機に、改めて金色さんのブログで過去記事を拝見したところ、自分は本作をまだ半分ほども読み切れていない……と感じていささか悄然としました。それくらい丁寧に作られた作品だし、それに見合った丁寧さで読み解いてこられたなあと思います。1話から最終話まで、ほぼ全編にわたってかくも精密に組み立てられていたんですね。いやいや……。
 細かいところで思いつくまま挙げるのですが、カッパード、テンジョウ、ガルオウガ、アイワーンの化粧や瞳の色が相手役のプリキュアたちのイメージカラーに対応しているとのご指摘がありましたね。この最終話でも、成長したひかるとララがかつての互いのヘアスタイルを模しているほか、えれなの髪型はテンジョウの編み込みを彷彿とさせるし、まどかのキャリアウーマンらしい髪型はガルオウガの頭部のシルエットに通底しているようにも思えます。また、ユニとアイワーンとの身長差が逆転しているのは、かつてのバケニャーンと少女期のアイワーンとの対比になっているのかもしれません。
 これらはいわば「図像学的」な読解ですけど、もちろんテーマやモチーフの面からも、ストーリー構成からも、さらには物語論的にも、神話学的にも、まだまだ深読みができそうです。また、この記事に頂いたakiさんの考察にもあるとおり、現実の世界情勢なり宇宙開発の現状なりと突き合わせて、いろいろと考えさせられるところもあります。本当に内容ゆたかな作品でした。
 よろしければいつでも遊びにいらしてください。こちらからもまたお伺いしたいと思っています。その際は「長文癖」を自重するよう細心の注意を払わねばなりませんが(笑)。
返信する
akiさんへ。(言い足りぬ部分があったので差し替えです) (eminus)
2020-02-02 09:52:10


〉大国アメリカの思惑に唯々諾々と従うだけの参入ならば、結局「アメリカだけのため」の宇宙進出に手を貸すことになってしまう。まどかえれなひかるたちの宇宙計画は、そういった「一国のみの利益」でなく、「将来の星空連合加盟を見据えての、そして地球に生きる人類すべてのための、大局観に立った計画」であってもらいたい。

 ↑
 そうです。これです。でも、この記事の本文と、ぼくからの一度目の返信を読んで、「この書き手の言わんとする趣旨を200字以内でまとめなさい。」と言われたとして、はたして誰がこのように読み取れるでしょうか。ぼく自身にさえ無理です(笑)。だから、「失礼」とか「汗顔」なんてことはまったくなくて、結果として全体の補足となるよう話をつないで頂いたことに感謝しております。
 こんなふうに直截に、ずばっと書けなかったのは、「地球」の現状に鑑みて、それがあまりに美しすぎる夢だからでしょうね……。

 コメントの後段もたいそう面白く……いうまでもなくスタプリは、「SFっぽいファンタジー」なんだけど、「SF」の比重をより大きくして視聴対象層を上げていけば、そのような展開も十分に成立しますよね。いずれにせよ、あのプロジェクトは、ひかるたち3人が核となり、前面に立って、力強く推し進めたものであることは間違いないでしょう。

 それくらいあの3人は、さらにいうならララもユニも、まことに器が大きいですね。歴代のプリキュアさんたちは皆さんそうで、とても中学生(一部に高校生含む)とは思えません。だから、今年はもっぱら「メロドラマ」という切り口で論じましたが、昨年は「英雄伝説」の系譜を継ぐものと見なして、プリキュア論をやっておりました。物語の歴史において一貫して「男」の表象で描かれてきた「英雄」が、女性、それも少女の姿で描かれるところが現代ニホンの面白さだと思うのです。

 『fate』の話は前に出ましたが、ガンダムもお好きなんですね。いずれもぼくには疎い分野だし、どちらも「サーガ」と呼びたいほどに長大かつ複雑なものになっているようで、ちょっと気後れしますけれども、まとまったご意見などあれば、いつでもここのコメント欄をご利用いただければと思います。「ハイテク社会と孤立」の時のように、何回かに分けて送信して下されば、こちらで繋げて記事としてアップしますので。
 もちろん、ほかの話題に関することでも構いませんし。

 というわけで、今後ともよろしくお願いいたします。

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