ダウンワード・パラダイス

「ニッポンって何?」を隠しテーマに、純文学やら物語やら、色んな本をせっせと読む。

スタートゥインクル☆プリキュアについて09 笑顔の行方。

2019-12-06 | プリキュア・シリーズ

akiさんからのコメント

他人のための笑顔

 eminusさん、もりのさとさん、こんばんは。プリキュアに関しては全くのド素人、akiでございます。何しろ「プリキュア」と名の付くものを本腰入れて視聴したのは最新話の42話が初めてで、それ以外は初代の「ふたりはプリキュア」の数話をそれぞれ数分ずつくらい、という体たらくですw
 そんなわけで、お二人の会話に割り込むのは失礼かと思いましたが、最新話を見てド素人なりに感じたことがありましたので、お二人に聞いていただきたいと思い、コメントさせていただきました。


 ちなみに上記の通りですので、私はこれ以前のえれながどんな様子であったのか、全く知りません。100%42話を視聴しただけの感想です。


 私は、えれなの問題とは「他人のために笑顔になることを心がけていて、自分の欲求や願望を度外視してきた」ことにあるのではないかと感じました。使命感によって、あるいは必要に迫られて彼女は笑顔でおり、みんなのために頑張る自分であろうと努めていて、自分の志望がそもそもどこにあるのか、自分が本当は何をしたいのかがわかっていない、わかっていないが故に、「他人のために笑顔でいる」ことが自分の志望だと錯覚している、ということなのではないかと。eminusさんのご指摘にもありましたが、私もそう感じます。


 開幕パートで、まどかが「自分が本当は何をしたいのか、自分と向き合ってみたい」と言ったとき、えれなはぽかんと呆けたあと、口を結んで真面目な表情を浮かべていますが、
「自分の考えたことのない、不可思議なことを友が口にしたために」呆け、
「その意味が理解できたとき、まどかの言葉に対する答えを自分の中に見出せないことにかすかに戸惑い、考えに沈んだ」のがあの真面目な表情だった、のではないでしょうか。


 それでも自分の思いに気付くきっかけはある。それはまどかとの会話の中にも見られるし、通訳という母親の職業に「すごいね」と関心を示したところにも表れています。進路相談のときにも「何かやりたいことはないか」と問われ、一度は口を開こうとしています。(呑み込んでしまいましたが)
 おそらく、えれな自身にも、まだ漠然とした想いしかなく、「何をどう生かして、何をしたいのか」を形としてはっきり他人に示せる状態ではないのでしょう。だから、今までの「他人のために頑張る」生き方をいきなり崩す勇気もなく、いわば惰性で(この言葉は容赦なさすぎる言い方だと思いますが、他の書き方をちと思いつかないので)今まで通りの在り方を選び続けてしまっている。


 そういうえれなの様子に敏感に気付いた母は、やはり「子を知るに親にしくはなし」というところですが、すぐに結果を求めようとするところはちょっと急ぎすぎかなあ。まあそれだけえれなに負担を掛けていることを強く気にかけていて、済まないと思っていたということなのでしょうけど。


 この後の話数で、えれながどういう心理的変遷をたどって自分の真の志望を見出すのかは判りかねますが…ただ、彼女がたどり着くであろう結論は判る気がする。


 多分、えれなは留学する(笑)


 …こういう物語の筋の予測って、実は何の意味もないと理解はしてるんですが、どうもその魅力に抗えないんですよねえ。(爆)
 まあド素人のたわごとですw 笑って流してくだされば幸い。




 あ、そうそう。大事なことを書き忘れていました。
 今までの話数で、えれなが今回のような表情を見せたことがない、ということについてですが。


 勝手な推測ですが、「進路」という問題がこれまでえれな自身の問題として俎上に上ったことはなかったのではないでしょうか。「他人との関係を良好に保つため」という目的のためには、今までのえれなの生き方に全く問題はないわけで。だから自分の生き方に悩むこともなかったし、信念が揺らぐこともなかったでしょう。
 今回えれなの心情が揺らいでいるように見えるのは、「自分は本当は何がしたいのか」という自分の志望が初めて自分の問題として意識されたから。考えのまとまらない状態では、「自分の志望」と「笑顔の意味」という本来は切り離して考えるべき二つの問題が、ごっちゃになって見えてしまっても仕方がない。そういうことではないかな、と思います。
 すなわち、今回のえれなの浮かない顔は、「自分の志望」を意識するきっかけとなった…開幕パートでのまどかの言葉がその発端ではないでしょうか。




 42話を見ただけで、知らない部分を妄想で補っての意見なので、多分に「決め打ち」じみた部分が大きいと思います。「当たるも八卦」くらいにお聞きくださればw でも、おかげ様で当の42話は何度も繰り返し視聴致しました。eminusさんのご苦労の一端を推し測ることができて、個人的には良かったです。(^^)




☆☆☆☆☆

ぼくからのご返事

 こういう話は大勢のほうが楽しいんで、参入して下さったことに感謝します。テレビアニメってのはこういうところがいいんで、たとえば「溝口がどうの」「ゴダールの新作がどうの」なんて話だったなら、まず俎上に上がってる作品そのものにアクセスするのが容易じゃないから、なかなか広がらないんですよね。プリキュアならその点、日曜の朝にチャンネルを合わせれば確実に見られる。もし見逃してもその週のうちならTVerで見られます(笑)。


 えれなの問題が「他人のために笑顔になることを心がけていて、自分の欲求や願望を度外視してきた。」ことだというのは、例によって簡明かつ的確な要言で、「なんでオレはこういう具合にスパッと言えないかな。」と少々悔しいんですが(苦笑)。


 ぼくのばあい、初めに「(えれなは)無理をしている。」と書いちゃったんで、それを引っ張りすぎたかもですね。「自分の欲求や願望を度外視」するのが幼い頃から習い性になってる状態を指して「無理してる」と呼ぶなら確かにそうなんだけど……。なんというか、うーん……。


 ともあれ「進路」ですね。「進路」なり「志望」は常にプリキュアシリーズにとって大きな問題です。それこそ過去タイトルのあれこれと比較検討して論ずるに足るテーマなんだけど、でもここは、あくまでも今作のなかだけで考えてみます。


 父親からプレッシャーを掛けられていたまどかとは異なり、えれなはいま岐路に立ってるってほどでもないでしょう。とりあえず地元の高校に進んで、それからゆっくり考えてもいいはず。だから、「進路」そのものが重要ってわけじゃない。もっと根深くて、彼女のアイデンティティーにかかわる話ですね。今作ではとにかくそれを、とことん「笑顔」に収斂させておりますが。


 だから、そこはもう、このたびのコメントのなかの、


『今回えれなの心情が揺らいでいるように見えるのは、「自分は本当は何がしたいのか」という自分の志望が初めて自分の問題として意識されたから。考えのまとまらない状態では、「自分の志望」と「笑顔の意味」という本来は切り離して考えるべき二つの問題が、ごっちゃになって見えてしまって……。』


 というご指摘のとおりだと思いますね。混乱している。それはまた、えれなが混乱してるってだけじゃなく、脚本自体がそのように描いてるってことでもあります。えれなにまつわる事柄は何でもかんでも「笑顔」に紐づけちゃうもんだから、かえって話がややこしくなっちゃうという。




 えれなの属性は笑顔。だからえれな案件はぜんぶ笑顔でいっとけ。みたいな。つまり属性(キャラ立て)を何より重視するんですね。でも、これはことさらプリキュアに限らず、あまねき(笑)エンタメに通底する手法ではあります。今作では「イマジネーション」が最重要のキーワード(キーコンセプト)ですが、この「イマジネーション」もよく見るとかなり多義的に使われてます。


 とはいえ、テンジョウとの絡みでいえば、今のえれなの「笑顔」は果たして「仮面」なりや否や? って問いはそうとう重いでしょうね。というのも、テンジョウはつねに仮面をかぶっているから。外したのはジョー・テング先生としてえれなに接触した時だけ。だから次回は仮面が大きなポイントになるかと。




 ともあれ今話はえれ×まどがほんとうによかった(むしろまど×えれというべきか。そういえば暁美さんの相方の人と同名ですね。いま気づきました)。コメントでふれられていた冒頭のシーンののち、宇宙船から二人で帰路につく時にかるく「前ふり」があって、えれなの三者面談のあと、彼女の浮かない顔をみて、まどかが真摯に問いかけます。まどかのほうが、心を決めて自分からえれなの内へと踏み込んでいく感じ。ずっと太陽を眩しく思っていた月が、これまでのプリキュア活動を経て今は太陽を照らす立場に回る……。ああいうのは、1年ものの長丁場でなきゃなかなかできない。


 プリキュア活動といえば、そもそもえれなが自分の進路を問い直す(というほどまだ明瞭ではなかったけれど)きっかけが、ほかならぬそれなんですね。


「プリキュアになってさ、色々あったよね。色んな星に行ったり、ぜんぜん価値観が違う人たちと出会ったり。そういうの、すてきだなって。この経験、ムダにしたくないなって。でも、どうしたらいいのか……」
「ちゃんとヒントはあるじゃないですか。……自分の経験してきたことを無駄にしたくない。それはひょっとしたら、えれなが、もっともっと、新しい経験を求めているんじゃないでしょうか」
「そう……なのかな」
「笑顔。わたくしは見たいです。えれなが、選んだ道で、輝いてる笑顔」








 まあ、結局は笑顔の話になっちゃうんだけど、あのシークエンスはほんとにいいです。ふたりの信頼感が伝わってくるし、今年1年の前半でやってきたことが、ちゃんと彼女たちの糧になってるってのがよくわかるし。



 されど、これはまどかがきちんと正面から向き合ってくれたからこそ口にできたこと。そもそも、えれな自身すらこの瞬間まではここまではっきり自分の気持ちを言語化できてなかったはずです。だけど何かしらの違和感はあった。母のかえでは三者面談のあたりからそれに気づいてはいて、たぶん、どうやって娘と話し合ったらいいか、彼女なりに考えあぐねていたでしょう。もちろん、ふだんから、「えれなに負担を掛けていることを強く気にかけていて、済まないと思っていた」だろうし。そこにいきなり異界から変なのがわっと乱入してきて、事態が一気に切迫して、えれなにとっては最悪の形で母の内面を知らされる羽目になったんだけど、あれはもう、まさしく「メロドラマ的展開」というよりない。
 すなわち、


(1)喜怒哀楽の「激情」に「ヒロイン」が見舞われる。
(2)すべての人物が、つねに劇的な、誇張された行動をとる。
(5)日常生活のなかで起きるドラマを美学化する。どんな出来事も、さまざまな手法を駆使して「崇高」なものに仕立てる。


 というやつですね。えれなには気の毒だったけど、これを発条にして、次回は胸のすく活躍を見せてくれることでしょう。


 それで、ぼくはこのたびのコメントに関して9割5分くらいまで賛同するんですけど(いつもはだいたい99%近くまで賛同してます)、一点だけ異議を唱えたいです。多分、えれなは留学しません(笑)。卓越したコミュニケーション能力を生かして、ひととひととを結びつけるような道を志すとは思うけど、ここで家族から離れるような選択はしないと思うのです。


 じゃあどうするか。「これだ!」という決定打は正直見つからないんだけど、二つだけ、わりと自信をもっていえることがあります。


 ひとつ。ヒントはきっと、今話のひかるのドーナッツ(とフワのお菓子)。迷ったあげく、食べたいのをぜんぶ食べちゃった。そして最高の笑顔になった。あれが伏線だと思うな。えれなもきっと、今あるものを大事にしたうえで、その上にさらに自分の志まで載せて、ぜんぶ抱えちゃうんじゃないでしょうか。もちろん、無理をしてでは全然なくて、にこにこと満面の笑顔を浮かべながら。




 もうひとつ。そのためには、えれなだけでは駄目だし、えれなとかえでだけでも駄目。パパさんや、とうま君はじめ、弟妹たちが協力してくれると思いますね。今話でも、かえでさんに急な仕事が入って、「久しぶりにママご飯が食べられる~」と喜んでいたみんなががっかりして、末の子が泣き出す場面がありました。あのとき、まずパパさんがすっと末っ子に寄り添った。それで、いつの間にやら上の子たちが(自分たちだって意気消沈して悲しいだろうに)みんなでにこにこ笑いながら、末の子を包み込むようにしてましたね。ほんとを言うと、まど×えれ以上にあの短いショットが今話でいちばん印象に残ってます。あの一家なら、えれなが夢を見つけてそれを追いたくなったなら、それぞれができる範囲で応援してくれると思うんですよ。






 さて。あと2日となりましたが、どうなりますか。ぼくも、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」で、楽しみにしています。













2 コメント

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笑顔の仮面 (aki)
2019-12-08 01:45:05
こんばんは。返信ありがとうございます。

>悔しい
 実は私も、eminusさんの精密かつ詳細な記述と豊富な知識量に、密かに嫉妬しておりますw 元々多読でも速筆でもないので、戦える部分と言えば「短い中に情報量を詰め込む文言」くらいなので。
 ただ今回の場合、eminusさんの記事を拝読してはいたので、そこで得た背景知識が大いに役立っていたことは疑いありません。すなわち、お褒め下さって恐縮ですが、「簡明かつ的確な要言」も言ってみれば「後出しじゃんけん」みたいなものです。どうかお気になさらずに。(^^)

>えれなは無理をしている
 矛盾する言い方ですが、えれなは「ナチュラルに無理している」ように私には見えますね。つまりみんなのために無理することが常態化していて、本人はそれを無理だと思っていない。思っていないから無理を感ずることなくこなしてしまえるわけですが、でもやはりしわ寄せは本人の気づかないところに表れていて、それが「自分のやりたいことについてそもそも考えない」という、今回表面化した問題なのではないかと。
 まどかとの会話でも、進路について一度は
「地元の高校に進学かなあ、弟や妹たちの面倒もあるし、卒業したら、そのままうちの花屋を手伝うのもいいかなあ、って」
 …と「現状維持」とも言えるような答えを返していますし。まあその後、自分の想いと向き合って、まどかに心情を吐露する流れになりますが。
 そういうわけで、個人的には「えれなは無理してる」という言い方にも違和感は覚えないのです。

>ドーナツ、全部食べる
 …なるほどw これがえれなの選ぶ結論の伏線ということか…。
 さすがに主人公。ナチュラルに仲間の悩み解決の後押しをするとは…。

 ただ一言言いたい。あんたら、それ全部自分らで食べるつもりなんか?(笑)
 プリキュアの体はドーナツでできているのか…「この体は、無限のドーナツでできていた!!」(スンマセン他作品パロです)

 冗談はさておき、私は42話のえれまどの関係性から「自分と向き合うために留学を保留にしたまどか」と「自分と向き合った結果留学を選んだえれな」という対比は面白いかも、と思って前回のコメントをしたわけですが、今回のeminusさんのコメント、
「えれなもきっと、今あるものを大事にしたうえで、その上にさらに自分の志まで載せて、ぜんぶ抱えちゃうんじゃないでしょうか。もちろん、無理をしてでは全然なくて、にこにこと満面の笑顔を浮かべながら。」

 こっちの方が素敵だな、と読んで思いましたw ハードルはぐっと上がった気はしますけど。


 ああ、もう本日か。えれなの悩み解決回になりますかね。楽しみにしたいと思います。
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ハードル。 (eminus)
2019-12-08 07:54:44

 こちらにきっちり返事を書いてたら、まず間違いなく途中で本編が始まることでしょう(笑)。
 「この体は、無限のドーナツでできていた!!」のネタ元が「Fate」というアニメシリーズらしい、ということは突き止めました。いやいや、それは今べつにどうでもよくて。

 時間が押してるんで、以下は箇条書きでいきますね。

 >「えれなは無理してる」という言い方にも違和感は覚えないのです。
 安心しました。

 >「えれなもきっと、今あるものを大事にしたうえで、その上にさらに自分の志まで載せて、ぜんぶ抱えちゃうんじゃないでしょうか。もちろん、無理をしてでは全然なくて、にこにこと満面の笑顔を浮かべながら。」
 こっちの方が素敵だな、と読んで思いましたw ハードルはぐっと上がった気はしますけど。

 たしかにハードルは高いですね。だから、ひょっとしたら今回では一気に解決とまではいかないかもしれない。まどかがそうだったように、「進むべき道を見つける」というあたりに留まるかもしれません。

 それでは、コーヒーなど用意して、放送を待つことに致します。


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