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ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

猫が教えてくれたこと

2017-11-16 14:44:43 | な行

はあ~たまらん!
これぞ猫天国!

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「猫が教えてくれたこと」72点★★★★


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トルコ・イスタンブールの街に暮らす猫たちを追ったドキュメンタリー。

ただ「かわいい」だけじゃなく
人と猫、そして街の関係から
さまざまが見えてくる、良作でした。


登場するのは7匹の猫たち。

カフェのテーブルを行き来し、
あちこちで上手におねだりする白茶や
かかあ天下の白黒など、みな個性豊かで


それぞれの猫についての街の人たちの解説が、
実にユーモラスで的確でおもしろい。

特に
いかついトルコ男たちが
メロッメロな様子に笑ってしまいます(笑)


今回、プレス資料にコラムを書かせていただいて
そこにも書いたんですが

ホントに街の人と猫たちの関係って
恋人以上、飼い主未満、みたいな距離感なんだよね。


最初こそ、往来で交通事故に逢いやしないか、とか
ゾッとする高所に悠々と座る様子に
ヒヤヒヤ、ハラハラしたけれど

いやあ、こういう人たちに見守られているなら安心。
自由でうらやましいなあと感じました。


猫に人生を助けられた、と話す人も少なくなくて
みんな、猫を助けているようで、猫に助けられているんだよね。

それは街においてもしかりで、
猫が住みやすい街は、人も住みやすいということ。

日本と同じように都市化が進んでいくイスタンブールで
この楽園をどう維持していけばよいのか

日本の保護猫活動事情と照らし合わせたりもしちゃって

日本のいちネコ好きとして
いろいろ考えさせられました。


来週11/20発売のAERAで
ジェイダ・トルン監督にインタビューしています。

美人で優しくて、生粋の猫LOVER!

映画と合わせてぜひご一読ください~


★11/18(土)からシネスイッチ銀座、YEBIS GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「猫が教えてくれたこと」公式サイト
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不都合な真実2 放置された地球

2017-11-13 23:50:17 | は行

異常気象の現状に
あらためてゾッ。

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「不都合な真実2 放置された地球」73点★★★★


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2006年にアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した
「不都合な真実」。

あれから10年。地球はどうなっているのか?――を
アル・ゴア氏が語る続編です。

前作で
世界中に警鐘を鳴らせた、という大きな一歩の裏で
「大げさなことを言って、人々を怖がらせた」とか
ひどく批判も受けてきたゴア氏。


でも、彼が正しかったどうか、
その答えは
残念ながら、10年経って、実に明確でしょう。


日本でも世界でも
ほぼ毎日、どこかで繰り返される
「記録的豪雨」や「台風」、
大規模な山火事による災害――

そうした我々も知っている最近のニュースに
最新のデータを加え、
ゴア氏の講演の様子や、解説を
じっくり聞くことができる映画です。


冒頭、白髪になってるゴア氏に
「うわあ!歳取ったなあ!」と誰もが驚くと思うけど

それだけの時間をかけて、いまこういう状況なんだ、を
さらけ出してる結果なんですねえ。

彼の風貌自体に、説得力があるし
つかみとしてうまい(笑)


あらためて
「ヤバい」状況を実感しますよマジで。


さらに
なんといっても今回は

進まない環境破壊対策に何度も絶望しつつ
しかしくじけない
ゴア氏の信念とパッションがどこから来るのか?
最大の見どころだと思います。


2015年のパリ協定を
裏で動かし、粘り強く交渉する様子も興味深い。

反対の立場を取る
インドの率直な言葉にも
この問題の根深さも写ってる。

でも、必死の努力で
なんとか合意に取り付けた――と思ったら

トランプの出現で
また全てが水泡に帰するかー?!となる。


でも、それでも、ゴア氏はあきらめないんです。

負けそうな戦いでも
くじけず、それを気力を振り絞る彼の姿は

環境問題だけでなく
声をあげても変わらない政治、
伝わらない民意に絶望し、無力感を感じている人にも
なにか力をくれると思います。


★11/17(金)から公開。

「不都合な真実2 放置された地球」公式サイト

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ロダン カミーユと永遠のアトリエ

2017-11-11 12:40:00 | ら行

「ポネット」(96年)のジャック・ドワイヨン監督が
芸術家ロダンを描いています。


「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」68点★★★☆


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1880年。

40歳の彫刻家・ロダン(ヴァンサン・ランドン)は
長い下積みを経て、
ようやく国から大きな仕事を任された。

創作意欲に燃えるロダンは
若く美しい弟子カミーユ・クロデール(イジア・イジュラン)に
心を奪われていく。

だがロダンには
内縁の妻ローズ(セヴリーヌ・カネル)がいた――。


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「考える人」で知られる
芸術家オーギュスト・ロダンを描いた作品。


すでに偉大な彫刻家になった
40歳からスタートし、
若く美しい弟子カミーユ・クロデールとの愛、

そしてロダンの影になることに
次第に不満を募らせるカミーユの苦しみ、
内縁の妻ローズの葛藤などを描いています。


映画「カミーユ・クロデール」
ってあったし
(イザベル・アジャーニ主演)
彼女の側の話は知ってたので
ロダン側からの視点に、へえと思った。


セリフが多くて、ドラマが単調な感もあるけど
実際に裸体のモデルを見ながら粘土を操る方法などにも
へえと思ったし、

彼のアトリエで
彫像に光の当たる感じや
常に中や外のガヤガヤが聞こえる音の雑多さもいい。

あと
仕事には厳しいけど
批評や世間には内気だったというのも、へえ。

なにより
歳を取っていっても衰えない創作へのエネルギーのすごさと
女性に対して精力的なさまに
まあ驚きました(笑)


ちょくちょく画家や小説家、芸術家の人生を描いた映画を見ますが
往々にして、創造と女性へのパッションは比例している。

やっぱ「創造する人」はこうでないと、か。


★11/11(土)から新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマほか全国で公開。

「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」公式サイト
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人生はシネマティック!

2017-11-09 23:29:33 | さ行

「17歳の肖像」監督作品。
うん、うまいなあ!


「人生はシネマティック!」73点★★★★


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1940年、第二次大戦下のロンドン。

コピーライターの秘書として雇われた
カトリン(ジェマ・アータートン)は

徴兵されたライターの代わりに
広告コピーを書いていた。

なかなかセンスある仕事をする彼女に
情報省映画局の脚本家・バックリー(サム・クラフリン)が目を留める。

実はバックリーたちは
イギリス政府は国民を鼓舞するための
プロパガンダ映画を作ろうとしていた。

バックリーにスカウトされたカトリンは
あの「ダンケルクの戦い」を題材に
映画作りに参加することになるが――?!


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映画制作を描く映画って
なんでこんなにおもしろいんだろ(笑)

映画愛が詰まってるから?

それに
「ダンケルク」がちょうど話題になっているだけに、タイムリー!


素人脚本家の奮闘を描きながら、
「どうやって物語を生み出すか?」「どう盛り上げるか?」などの
制作過程が描かれて

映画をおもしろくするために、脚本がどれだけ重要なのかを
改めて教わりましたハイ。

しかも
そのことをしっかり補完するように、
いいセリフがちゃんとあるんですよ。うまいなあ!


ヒロイン、カトリン演じる
「ボヴァリー夫人とパン屋」のジェマ・アータートン、大好きだし(笑)

ここぞの存在、
ビル・ナイがまたいい味出してて。


カトリンを映画作りに巻き込んだ超本人で
彼女にほのかな恋心を抱いていく脚本家バックリーが
彼女のよさを
「その切れ味がいい」と評する、そのセンスも好きだ。


既婚者であるカトリンに対し
進むに進めぬ、バックリーのもどかしい愛。

戦争中という「明日をも知れない」時代の刹那。


そんななかで、映画にどんな役割があったのか。
人々がその存在にどれだけ影響され、勇気付けられたかのか。

そんなことも考えさせて
映画愛がますます深まる良作でした。


★11/11(土)から新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

「人生はシネマティック!」公式サイト
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ザ・サークル

2017-11-08 23:41:04 | さ行

明るいトーンが
逆に薄気味悪いんだよね(苦笑)


「ザ・サークル」70点★★★★


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大学卒業後、
地元で冴えない仕事についていた
24歳のメイ(エマ・ワトソン)は

友人の誘いで
超・巨大SNS企業「サークル」に入社することができた。

サークルは、いわばフェイスブックやツイッターの進化形。

全ての人がつながることができる、オープンな社会をめざし
カリスマ経営者イーモイ(トム・ハンクス)のもと
急成長を遂げていた。

理想のオフィス環境と
手厚い福利厚生に夢心地のメイは

あることをきっかけに
イーモイの目にとまる。

そして彼女はサークルの“顔”として
24時間、自分の生活をオープンにする
試みに参加することになるが――?!


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近い未来、とかじゃなく
ほぼ現実だよねコレ、というコワいサスペンス。


「いいね!」欲しさにSNSに自分の日常をアップし
自らプライバシーを世界中にさらしている我々に対し
「わかってます?」
「だいじょぶですか?」と警鐘を鳴らす映画でもあり

そんな現代の監視社会を
「多少のプライバシーは犠牲にしても、犯罪やテロも未然に防げるし、いいことじゃん!」
「自分には、別に隠すことないし!」と、
本気で「よし」とする人々が確かにいるんだろうな、という
さまざまなリアルにゾッとする話でした。

なにより
自身もSNSで積極的に発言をしている
リアル・アイコンであるエマ・ワトソンを主演にした説得力はすごい。

また
「すべてを可視化する」理想を話す
経営者イーモイ(トム・ハンクス)の動機が
病気の息子だったりとか、

「政治家がすべてをオープンにすることで
クリーンになり、世の中がよくなる!」とか


なんだか説得されてしまう
“善意”の武装をしているところが
実に巧妙で(ほめてます。笑)

この問題の微妙さを、非常にうまく捉えていると感じました。

ただ、
すでにリアルに傾いている、この危機をどう回避するか。
その部分が、ちと弱いところが
映画的には惜しいんだけど

現実味があるといえば、これもまたありかと。


監督は1978年生まれのジェームズ・ポンソルト氏。

来週発売のAERAにて
社会学者・古市憲寿さんと監督の対談記事が掲載されます。

選挙とSNS、トランプとSNSなど
現代のソーシャルを斬る内容になっております。

映画と合わせてぜひご覧くださいませ~!


★11/10(金)からTOHOシネマズ 六本木ヒルズほか全国で公開。

「ザ・サークル」公式サイト
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