ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

オオカミは嘘をつく

2014-11-17 23:42:48 | あ行

イスラエル映画でパッと思いつくのは
「戦場でワルツを」とか。
事情を知ったという点では
「いのちの子ども」
とか。

まあ戦争、紛争がらみばかりなんですけど
これは違うんです。


「オオカミは嘘をつく」65点★★★


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現代のイスラエル。

少女をターゲットにした凄惨な殺人事件が続き
また一人の少女が犠牲になった。

容疑者として浮上したのは
おとなしそうな中学教師ドロール(ロテム・ケイナン)。

刑事ミッキ(リオール・アシュケナズィ)は
ドロールをつかまえて暴力で自白をさせようとするが
うまくいかない。

しかし、ほかにも密かにドロールの後をつける
人物がいて――?!


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イスラエル人の30代監督2人組による
誘拐サスペンス。


タランティーノ監督が「2013年のナンバーワン!」と絶賛した作品。
まあこの方はよくそんな賛辞をしていますが(笑)
でも、なるほど見応えありました。

冒頭、かくれんぼをして遊んでいるいたいけな少女を
スローモーションで写すところからして
非常に“王道”といえる
ハリウッドふうホラー&サスペンス演出なんですね。


監督らは子ども時代から
スピルバーグやロバート・ゼメキス監督に夢中になり、
そういう映画をイスラエルで作りたかったそうです。


容疑者となる教師、暴走する警官、被害者である少女の父親・・・と
登場人物の誰もが怪しいというか、危険。
イスラエルは皆兵制なので、全員に軍隊経験があったりして
そのへんの社会背景もにじませてあります。

娘を誘拐された父親の暴走
「プリズナーズ」を思い出せる感じもあるんですが、

でも凄惨な拷問シーンのなかに
なんだかマヌケな笑いもあったり。

クオリティは高いんですが、
ただ
「なぜこやつが容疑者なのか?」など
肝心の部分や根拠がけっこう飛ばされていてモヤモヤしたり
やや“要素の寄せ集め感”は否めなかったかなー。


しかし
来日した監督コンビと政治学者・藤原帰一さんの対談を取材させていただき
おなじみ「ツウの一見」で藤原さんに解説もしていただき
わかったことは

“イスラエル映画がこれを作った”ことの意味と大きさ。
そして背景にイスラエル社会が見えることのおもしろさ。

あまり考えずに見て、
後で解説を知ると、よりおもしろいタイプの映画だと思います。


★11/22(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

「オオカミは嘘をつく」公式サイト


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