イスラエル映画でパッと思いつくのは
「戦場でワルツを」とか。
事情を知ったという点では
「いのちの子ども」
とか。
まあ戦争、紛争がらみばかりなんですけど
これは違うんです。
「オオカミは嘘をつく」65点★★★
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現代のイスラエル。
少女をターゲットにした凄惨な殺人事件が続き
また一人の少女が犠牲になった。
容疑者として浮上したのは
おとなしそうな中学教師ドロール(ロテム・ケイナン)。
刑事ミッキ(リオール・アシュケナズィ)は
ドロールをつかまえて暴力で自白をさせようとするが
うまくいかない。
しかし、ほかにも密かにドロールの後をつける
人物がいて――?!
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イスラエル人の30代監督2人組による
誘拐サスペンス。
タランティーノ監督が「2013年のナンバーワン!」と絶賛した作品。
まあこの方はよくそんな賛辞をしていますが(笑)
でも、なるほど見応えありました。
冒頭、かくれんぼをして遊んでいるいたいけな少女を
スローモーションで写すところからして
非常に“王道”といえる
ハリウッドふうホラー&サスペンス演出なんですね。
監督らは子ども時代から
スピルバーグやロバート・ゼメキス監督に夢中になり、
そういう映画をイスラエルで作りたかったそうです。
容疑者となる教師、暴走する警官、被害者である少女の父親・・・と
登場人物の誰もが怪しいというか、危険。
イスラエルは皆兵制なので、全員に軍隊経験があったりして
そのへんの社会背景もにじませてあります。
娘を誘拐された父親の暴走
「プリズナーズ」を思い出せる感じもあるんですが、
でも凄惨な拷問シーンのなかに
なんだかマヌケな笑いもあったり。
クオリティは高いんですが、
ただ
「なぜこやつが容疑者なのか?」など
肝心の部分や根拠がけっこう飛ばされていてモヤモヤしたり
やや“要素の寄せ集め感”は否めなかったかなー。
しかし
来日した監督コンビと政治学者・藤原帰一さんの対談を取材させていただき
おなじみ「ツウの一見」で藤原さんに解説もしていただき
わかったことは
“イスラエル映画がこれを作った”ことの意味と大きさ。
そして背景にイスラエル社会が見えることのおもしろさ。
あまり考えずに見て、
後で解説を知ると、よりおもしろいタイプの映画だと思います。
★11/22(土)からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。
「オオカミは嘘をつく」公式サイト