ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

リヴァイアサン

2014-08-21 23:32:17 | ら行

撮ったというより「撮れてた」素材が
「ナニコレ?」のおもしろさ。


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「リヴァイアサン」69点★★★★


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アメリカの漁港から出港する漁船に乗り込んだ
ハーバード大の学者であり、映像作家でもある監督コンビが

「GoPro」という超小型カメラを
船体や船員のあちこちに取り付けて撮った
「撮れたどー!」な、ドキュメンタリー。

とにかく手法も斬新なら、写っているものも画期的。


魚の目線になって
血まみれになって魚の腹を割いていく船員たちの様子を
ボーッと見つめたり(怖いぞ!笑)

カモメの目線になって
漁船の周りで獲物を狙ったり。


まさに
“見たことのない”体験ができるんですね

ただ
映画としては、手放しで「いい!」と言うには難しい。

結局「撮れたもの」の集まりであるのは確かだし、
何が写ってるのか
すぐには判別不能な映像もある(笑)

ネイチャー映画で「スゴイものを見た!」の“凄さ”とは
まったく異なる種類のもので、

そこが心に残るのも、また確かです。


冒頭、真っ暗な海に耳障りな金属音を響かせながら
漁船が網を下ろす、その様子だけで
「海の怪物=漁船か?!」、と想像できて

生態系のなかに無理矢理介入してくる
人間の傲慢さも、見て取れる。

魚やカモメだけでなく
“人間”も観察対象になっていたり。

「撮れたもの」を使っても、
確実に監督らには意図がある。

別に「環境ネタ」とかではないのですけどね。
違う視点で物事を見る、という提案のひとつかな。

なにより、凄いのは「音」!
機械のきしみ音やうなりが、不気味な音楽に聴こえるのがおもしろい。

それにね、これだけ揺れる画面なのに
船酔いも、映像酔いもしなかった。
魚眼レンズのおかげなのか――?いまだ最大の謎です。


★8/23(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「リヴァイアサン」公式サイト
コメント
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