ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ソウォン/願い

2014-08-03 19:39:36 | さ行

わざわざ辛い題材の映画を見るのはねえ・・・と、
観る前に、思ってしまったのは事実。

でも、見てよかったかもと。


「ソウォン/願い」70点★★★★


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韓国のある街。

8歳の少女ソウォン(イ・レ)は
ある朝、登校中に出会った見知らぬ男に
恐ろしい暴行を受けてしまう。

一命を取り留めたものの
大きな傷を負ったソウォン。

父(ソル・ギョング)も母(オム・ジウォン)、
そしてソウォン自身も

自らを責め、怒りと不安と戦いながら
なんとか傷を癒そうとするのだが――。


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「王の男」イ・ジュンイク監督が
2008年に韓国で実際に起きた、
幼女暴行事件を基にした作品。

辛い題材ですが
意外に想像する“韓国映画”らしからぬところが、よいポイント。

どぎつい暴力描写などはなく
泣き叫ぶことも少なく、
優しい風合いを持ちながら、

被害者をサポートする人々や、手探りのその方法、
それによって被害者の少女と家族が少しずつ回復をしてゆく
その道のりに焦点を当てたのが、なかなか貴重だと感じました。


少女の傷ついた心をなんとか助けようとする
両親や友人たちなど、周りの人々の奮闘が清らかで

そんな人の優しさに触れると、
いかに濁った番長の心も「うっ」となりますわい。


主演ソウォンを演じる少女が実にうまく、
被り物キャラクターの使い方など、演出も達者。

判決は到底受け入れられるものではないけれど
これが現実なのでしょう。

終始、抑えた描写が
晴れない気持ちと恨みを持ちながらも
それを重ねるだけでは前に進めない、そのなかで日々を生き続けねばならない
犯罪被害者の哀しみを
よく表していたと感じました。


おなじみ『週刊朝日』ツウの一見で
子どもへの虐待の専門家である森田ゆりさんにお話を伺いました。

「こうした問題を防ぐにはどうしたらいいか」という問いに
森田さんは
「大人の見守りには限界がある。
子ども自身に、自分で自分の身を守る術を教え、力をつけさせるしかない」と
おっしゃっていました。


ワシも子どもを犯罪から守る方法とか、防犯プログラムとか
けっこういろいろ取材してきましたが
なるほど、と改めて勉強になった。

そのすぐ後に、
倉敷の女児連れ去り事件の一報があり、
うーむ。このドンピシャのタイミング。

森田さんのお話は、8/5発売の『週刊朝日』に掲載予定。
特に幼い子を持つ親御さん、
映画とともに、必見っす!


★8/9(金)から新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「ソウォン/願い」公式サイト
コメント
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