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ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

思い出のマーニー

2014-07-15 20:39:08 | あ行

脱・宮崎駿、で作られた作品だそう。
それは、いいことなんじゃないかと思う。


「思い出のマーニー」68点★★★☆



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心を閉ざした12歳の少女・杏奈(声=高月彩良)は

親戚が暮らす北海道の海辺の村に
ぜんそくの療養に行くことになる。

そこで杏奈は、入江の向こうに建つ、
古い屋敷を見つける。

もう長いこと、誰も住んでいないというその屋敷に、
灯りがついたのを見た杏奈は
夕暮れ、一人で屋敷を訪ねるが――?

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北海道の湿地帯に建つ古いお屋敷・・・という
舞台設定と絵の美しさが、とにかく魅力的です。


ふてくされ度ハンパない少女主人公が
(『千と千尋』よりも上手だ・・・笑)

不肖不肖行かされた北海道の田舎で、
不思議なお屋敷と
そこに暮らす美少女マーニーと出会う話。


夢か幻か? 幽霊話か異次元系か? それとも…?
というミステリー要素もあり、
普段イメージするジブリ年齢層より、やや高めだと思います。

なにより
マーニーが少女というには美しく
なんか色っぽいというか、生々しいので

少女同士とはいえ抱擁シーンに
ちょっとドギマギするんですよね(笑)。


夢か幻か?ってな展開が
ラストに全て明らかになるのもスッキリするので
いいところも多いのですが

ただ、やはり脚本が弱いのが残念なところ。


そもそも主人公の少女・杏奈のキャラが微妙っていうか

出生の事情など、小さい心に
いろいろ傷を抱えていそうなのはわかるんですが

自分が世界に感じる疎外感を
「みんなは輪の中(=フツーの人間)
自分は輪の外側にいる人間(=特別な人間)」という体で
モノローグしちゃったりすると

思春期特有の自意識とはいえ、直裁にすぎて
どうしても、主人公に寄り添いにくいんですよ。

国からの手当て云々も、
少女の傷つく要因としては自然でないし。


まあだんだんといい子になってはくるし
本当に舞台の絵の力が壮大で
その自意識をもっていた、10代のころの感覚を呼び覚ますところはあり、

美術監督・種田陽平さんは
アニメーションの美術監督は初めてだそうですが
かの、男鹿和雄さんにすごく近い感じで

その存在はデカい!


★7/19(土)から全国で公開。

「思い出のマーニー」公式サイト
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エスケイプ・フロム・トゥモロー

2014-07-13 16:37:49 | あ行

こういう黒いネタ、大好物!(笑)


「エスケイプ・フロム・トゥモロー」70点★★★★


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幼い娘と息子、妻の家族4人でディズニー・ランドでの
休暇を楽しみにやってきたジム(ロイ・アブラムソン)。

しかし、ホテルでの朝、
会社からいきなりの電話でリストラされてしまう。

妻に言えぬまま、
とりあえず「夢の国で楽しもう!」とするジムだが
今日の夢の国は、どこか、いつもと違っていて――?!


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楽しいディズニー・ランドにやってきた
ごくフツーの家族が
ヤバいことになっていく……というブラックな作品。


2013年のサンダンス映画祭でプレミア上映され
「やばすぎ!」と話題になっていたそうですが
そりゃ、これ、やばいわ(笑)

でも、この
“黒ディズニー”というアプローチ、
最高に好きだわ(笑)

モノクロなのも上手いね。


想像ではもっとホラーなイメージだったんですが
それよりも日常のなかに紛れ込ませた「ん?」が、
じわじわ不気味で怖いパターン。


長い行列を待たされてイライラしたり
連れの態度で感じるちょっとした「ムカッ」とか

誰にも経験あるだろう
夢の国で“心が黒くなる瞬間”を、
うまく切り取り、増幅させてるんですね。


しっかしホントに
コレどうやって撮ったのだろう――?と考えてしまいますよ。

この内容で、撮影許可でるわけねーし。
しかし隠し撮りにしては、ちゃんと映画になってるし・・・。

ぜひ「なんで?!」を楽しんでいただきたいんですが
まあ観た方に種明かししちゃうと、


ランドでのシーンは
ホントにすべて無許可の隠し撮りだそう。

使われたのはキャノンのデジタル一眼レフ5D MarkⅡ、
録音はオリンパス製の小型ポケットレコーダー(ワシも使っとるで!)。

おそらく現場では
ごくフツーの家族連れのホームビデオ撮ってまーす、な体でカメラをまわし、

周囲にもどこにでもいる親子連れ
――子どもがぐずったり、乗り物に酔ってゲロったり、
夫婦が険悪なムードになったり――に見えていたはず。

そう考えると
ますます、おもしろい!(笑)

その素材を持ち帰って、すごい苦労をして
音と映像を合わせたり、特殊効果を加えたりしたそうです。


素晴らしい・・・パチパチパチ。


でもね~それだけに、
ラストのグジャグジャが残念~~。

収束まで考え抜いていれば、すごい完成度だっただろうな。

まあ
そんなところも含めて
とばしてる映画ということで。

でもさ、
やっぱりあの最初のシーンで、首飛んでるよね?!(笑)
あとさ、プレス資料に息子エリオット役の子の紹介がないんだけど、
これって、なんかマズいことになったの?(笑)

いろいろ憶測、呼びます(笑)


★7/19(土)から全国で公開。

「エスケイプ・フロム・トゥモロー」公式サイト
コメント (4)
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リアリティのダンス

2014-07-11 22:55:36 | ら行

この金髪の子ね、男の子なんですよ(笑)


「リアリティのダンス」55点★★★


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1920年代、軍事政権下のチリ。

幼いアレハンドロ・ホドロフスキー(イェレミアス・ハースコヴィッツ)は
権威的な父(ブロンティス・ホドロフスキー)と、
元オペラ歌手の母と暮らしていた。

ロシア系ユダヤ人である彼は
学校でいじめられているが

父親は少年の苦しみに向き合ってくれない。

そんな少年に
現在のホドロフスキー(アレハンドロ・ホドロフスキー)が寄り添い、
彼の家族の物語を紡いでいく――。


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「エル・トポ」(70年)「ホーリー・マウンテン」(73年)などで知られる
アレハンドロ・ホドロフスキー監督、23年ぶりの新作。

先に公開されたドキュメンタリー
「ホドロフスキーのDUNE」がきっかけで
本作を撮ることになったそう。

自身の自伝をもとにしており、
主役である彼の父親役を、監督の長男が演じています。


その内容はというと・・・
変わらず、トンでます!(笑)

御年85歳!やるう!(笑)


母親はオペラで会話してくるし、
障害者を虐めるわ、放尿するわ(笑)

しかし自身の父への想い、
故郷への愛、独裁政治への批判など
さまざまなメッセージや、暗喩を含んでいることはわかります。

特に、チリの独裁者を暗殺しようとする父親が
なかなか目的を果たせず、

関わった人々を無駄に死なせ
その贖罪なのか、帰りたいのになかなか家に帰れない・・・というくだりは
ちょっと複雑なものが。


今回、監督は少年時代に離れたきりの故郷の街に戻って、
撮影をしたそうで、

父親の姿は、
監督自身をも表しているのかなと、想像してみたりして。


鮮やかな色使い、豊かなイメージと
心にズキュンと入り、留まるシーンが多いのですが

映画としてはわかりよい作品ではなく
実際のところ、本人のドキュメンタリー「DUNE」のほうが
おもしろくはありました(笑)

★7/12(土)から新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開。

「リアリティのダンス」公式サイト
コメント (2)
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黄金のメロディ マッスル・ショールズ

2014-07-10 23:43:36 | あ行

ボノにキース・リチャーズに、ミック・ジャガー・・・
ワシでもわかる、すごいメンツですよハイ。


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「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」62点★★★


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アラバマ州テネシー州のほとりにある
小さな町「マッスル・ショールズ」。

ここにある2つのスタジオは
「そこで録音するとヒットする」と言われる
ミュージシャンたちの聖地だそう。

その「マッスル・ショールズ」について
ボノにキースにミック・ジャガーにアレサ・フランクリン・・・と
名だたるミュージシャンたちが
語り尽くすドキュメンタリー。


見ていると
そこにスタジオを創った
リック・ホールという人物がすべての核だとわかります。

彼の才能ある厳しいプロデューサーぶりと、
彼のもとに集まった腕の立つスタジオミュージシャンたちによって
“聖地”が生まれたのだ、と理解。

あまり表に出なかった人々に光を当てる点では
「バックコーラスの歌姫たち」に近いものもある。

また、彼らの証言によると
この地にはリバプールやデトロイトのように、
音楽の生まれる“磁場”があるのだそう。

ふーむ。

さまざまな大物ミュージシャンが登場するし、
ものすごく濃い内容なんですが
まずワシのような音楽素人には優しくなく
「知っててトーゼン」科目が多すぎる(笑)。

インタビューつなぎも繰り返しで、
構成がいまいち乗り切れないし、

みんなのコメントもカッコよすぎというか
キマリすぎてる感じ。

1時間51分は長かったな。


ヘタにすごーく気持ちよさげな
美しい風景や水辺などの映像がつくので
ちょっとヒーリング映像ふうでもあるんですよねえ。



結局、その“磁場”が何なのか
ミュージシャンたちの“感覚”を写しているので、

音楽好きには“感覚的に”共有できるのだと思うんですが
素人にはもうひとつ置いてきぼりな感じでした。

ただ、リック氏のスゴイところを表すヒントの
「不完全な完璧主義者」という意味が
最後の最後でようやく受け取れた・・・気はしました。

★7/12(土)から新宿シネマカリテほか全国順次公開。

「黄金のメロディ マッスル・ショールズ」公式サイト
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大いなる沈黙へ―グランド・シャルトルーズ修道院

2014-07-08 23:42:25 | あ行

これ、一睡もしないで見られた方には
「悟りの境地で賞」を差し上げます。マジで。


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「大いなる沈黙へーグランド・シャルトルーズ修道院」68点★★★★


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169分、音楽なし、ナレーションなし、会話もほとんどなしで、
フランスアルプス山脈にある
超厳格な修道院内部を静かに映すドキュメンタリー。


ドイツ人監督が1984年に撮影許可を求め、
16年後に「OK」をもらい、構想から21年で完成させたもの。

一般の人は入れないし、とても貴重な映像で、
サンダンス映画祭ほか各賞受賞!
公開が待たれていた作品です。



20人強か30人くらいでしょうか
修道院にいる修道士たちの暮らしは、
とにかく一切、おしゃべりなし(日曜日の数時間だけOK!)

黙々と各人、日課の薪割りや掃除をこなし
粗末な部屋で、一人でひたすら祈るもので

本当に“沈黙”の映画。

面白かったけど
予想どおり、かなりの苦行ではある(笑)

試写室内のどこかで、
誰かのイビキと寝息は常に響いている・・・という状態(苦笑)。

ワシも前半1時間はけっこう眠かったんですが
でも、後半はハマった。

せめて2時間だとよかったかなと思うんですが
まあ、この時間自体が“体験”なので、
お試しあれ、というほかないです。

それに
格別凝った構図でもないんですが
まあ、その映像の静謐で美しいこと!
写真集にしてもらったら、買って手元に置きたい。


この生活、かなりの苦行なのかなと思ったけど
ラスト近く、年老いた修道士が
「死は怖くない。神に近づけるのだから」でなるほど!と
ちょっとわかった感じしました。


無言のなかに目配せの会話があったり、
猫にごはんをやるシーンがあったりして、ホッとしますよ。

また始まりに戻って終わる、約3時間は
魂の浄化になる。

けど、やはり長いよね(笑)

★7/12(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「大いなる沈黙へ ―グランド・シャルトルーズ修道院」公式サイト
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