ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ネルソン・マンデラ 釈放の真実

2014-04-10 23:47:46 | な行

“謎の人物”本人が登場して説明してくれるのに
よくわからないという

ワシの頭が、もうミステリー?(笑)

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「ネルソン・マンデラ 釈放の真実」45点★★★


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1962年、国家反逆罪で逮捕され
1990年に釈放されるまで27年間も投獄されていた
ネルソン・マンデラ氏。

昨年、2013年12月に亡くなりましたが

彼の釈放には
“フランスの謎のビジネスマン”という人物の動きがあった……という
知られざる事実を描いたドキュメンタリー。


釈放の裏で何が起こっていたのか?

これまで口を閉ざしていた
謎のビジネスマン「ジャック氏」こと
ジャン・イヴ・オリヴィエ氏自身が登場し、
その釈放の作戦を語るというもの。


石油ビジネスで成功した彼は
反アパルトヘイト精神に目覚め、

政治家が表立っては失敗する、という当時の状況のなかで
さまざまな要人に会い、交渉をしていくのだが・・・・・・

と、興味深い内容なのですが

そのさまざまな要人たちやら
関係者やらが登場し、

つまりインタビューされる人間が多すぎて

さらに
そのたびにカットが変わる
カットバックが慌ただしすぎ、で頭がチカチカ。

そのせいなのか
影の立役者となった本人が出ているというのに、
なぜ裏工作がうまく行ったのか、
よくわからないのだ。あーあ。

もうこれはワシの頭の問題かもしれませんが(失笑)
おそらく、もう一度見てもよく分からない気もする。

昔の話をドキュメンタリーで
スリリングに見せるにはテクがいるけど、

こういう手法はあまり正しくない気がする。
もうちょっと、全体を落ち着いて
見せてほしかったですね。

5/24公開のドラマ
「マンデラ 自由への長い道」でも引き続き勉強したいと思います。

★4/12(土)ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。

「ネルソン・マンデラ 釈放の真実」公式サイト
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アクト・オブ・キリング

2014-04-08 23:43:15 | あ行

この映画は、ホントに判定がムズカシイ。

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「アクト・オブ・キリング」60点★★★


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全世界50以上の映画賞を受賞した
超・話題のドキュメンタリー。


1965年、インドネシアで
スカルノ大統領(当時)の親衛隊の一部が起こした
クーデター未遂事件。

事態収拾にあたったスハルト(のちの大統領)は
事件の背景にいたのは共産党だとして、
1965年~66年の間に
インドネシア各地で「お前は共産党員だろう!」と
むやみに市民を引っ張っては虐殺をした。

虐殺を実行したのは
いわゆる街のチンピラだったギャングたち。

彼らはいまも罪に問われるどころか
政治の要職についたり、街の顔役として、堂々と生きている。

この映画は、その虐殺を行った
アンワルという男やその仲間たちに

「当時、あなたが行った虐殺をもう一度、カメラの前で演じてみませんか?」という
前代未聞のドキュメンタリーなのだ。

フツーはあり得ないシチュエーションですが

なんと
アンワルたちは意気揚々と
「映画?やるやる」「かっこよく撮ってくれ」
もうノリノリで、当時を再現するんです。

いったい、どういうこと?と思いますが、
その理由は映画のなかでわかってきます。


なにより、ワシこの事件自体、不勉強で知らなかったんで、
最初かなり前のめりで見ました。

んで、まず1回目。

冒頭、魚のオブジェから女たちが踊り出てくるシーン
その色使いとシュールさにあぜんとし
がぜん興味沸くんですが

これがですね、
肝心のドキュメンタリー部分の語り口が猛烈に単調で
すごくしんどかった。


アンワルが自分がやった虐殺を演じると同時に
殺される側も演じる場面があって
それをしながら
「やられた側の気持ちがわかった」とか、
わずかな懺悔の思いを浮かべるシーンがあるんですが

まあ
嘘くさく白々しいなあと(苦笑)。

監督も、そういうツッコミをしてるし(笑)


ラスト、アンワルのあの場面も
芝居なのか、厄払いなの――?と
どうも疑ってしまった。


でも2回見たら、
これはやっぱりすごい映画なのかもと思えてきました。

アンワルの懺悔も、ラストにこみ上げてくる嗚咽も
もしかしたら、日常にはありえないものを、
カメラが確かにとらえているのかもしれない、と感じた。

正直、ムズカシイ。
でも、見て、判断する価値はある、と言える映画です。


★4/12(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。

「アクト・オブ・キリング」公式サイト
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ワレサ 連帯の男

2014-04-04 21:57:16 | わ行

周囲のちょい下世代に
「ワレサ書記長って知ってる?」と聞いたら
「知らない」が100%。


ワシ、一応名前くらいは知ってたけど・・・(世代間ギャップ、ガーン)


「ワレサ 連帯の男」63点★★★


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1970年12月。

ポーランドでは物価高騰のなか、労働者が激しい抗議行動をし、
政府が武力鎮圧に乗り出していた。

造船所の、ごく普通の電気工だった
レフ・ワレサ(ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ)は、
持ち前の責任感で、次第に労働者の代表となっていく。

そして1980年、
リーダーとしての使命を自覚したワレサは
独立自主管理労組「連帯」初代委員長に就任し
反体制のカリスマとなるのだが――?!

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「灰とダイヤモンド」(58年)、そして
「カティンの森」(07年)と、最近ますます元気な
アンジェイ・ワイダ監督作。

実在人物を描くこの作品を、
「本当は作りたくない。しかし作る義務がある」と監督は語っており、
監督の決然たる思いを感じ取りました。


余計な心理描写などはさほど描かれないので、
「勉強」っぽくはありますが
これは「必須項目、最低限の知識を学ぶ」映画だと思います。


ワレサ氏の
「弱者を放っておけない、責任感」はよくわかるし、
第一、ノーベル平和賞のワレサ氏が
本当にいち労働者、電気工だったなんて知らなかったんで

そういう人が
「弱者の、労働者の声を伝えるため」
前に出ざるを得なかった時代の状況が

いま、この時代に
すごく重要な意味を持って迫ってくる気がしました。

ロックミュージックで時代の声を代弁するなど
演出も若々しく

ワレサ氏の妻役、アグニェシカ・グロホフスカがすごくいい。
「ソハの地下水道」(10年)に出てた女優さんです。


★4/5(土)から岩波ホールほか全国順次公開。

「ワレサ 連帯の男」公式サイト
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アデル、ブルーは熱い色

2014-04-01 23:58:43 | あ行

179分!
しかしホントに退屈なしで驚愕。


「アデル、ブルーは熱い色」73点★★★★


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高校生のアデル(アデル・エグザルコプロス)は、
ある日、道でブルーの髪の女性に目を奪われる。

アデルはボーイフレンドとデートしても
彼女のことが忘れられない。

そんなとき、偶然入ったバーで
アデルは彼女と再会する。

彼女の名はエマ(レア・セドゥ)。
美学生だというエマと、アデルは親しくなっていくが――。


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最初はね、びびりましたよ179分。
しかしホントにあっという間というか
時間が飛んだ(笑)。

しかも内容は
女と女が出会って恋し、その後……?という
極めて“フツー”のラブストーリー。

なのに、この時間の飛び方は何なんだろう。

アデル役のアデル・エグザルコプロスの
その息づかいや、感情の揺れすべてを共有しているように
親密に撮られた映像のせいでしょうか
ドキドキするんですよね、リアルに。

また
運命の女性と一番最初に出会う瞬間も
見せ場だろうに、これがまたさり気なかったり!(笑)


ホント、女性同士の愛とか、そういうのはどーでもいい話で、
(ラブシーンは少々刺激的かもしれないけど)

人と人が出会って、惹かれ合う
その熱い感情に「触っている」感じがする。
そこにみんなハマるんだと思います。


ラブラブ期間を経て、お互いの家族も紹介し合う二人。
しかしアデルの家と、エマの家はちょっと違う。

アデルの家は労働者階級で、
両親ともにごく一般的。
アデルも安定した職業である教師を目指している。

エマの家は美術品に囲まれ、
ワインとオイスターでまず乾杯、みたいな家庭。
エマ自身もアーティストとして成功したいと思ってる。

この環境の違いが
実はけっこうキモ。


エマはアデルに、もっと思考も仕事も、
自分の側に来て欲しいと願うんだけど、

アデルはエマに影響されそうでいて、
実は影響されないんだよね。

そしてすれ違ってしまう、その過程の子細さもすごい。

打ちのめされる、ではないんだけど
喉に何かがひっかかったように、
なんともいえない感情が、思い出しても続く作品でした。

あと、スパゲティボロネーゼが
めちゃくちゃ食べたくなった(笑)


★4/5(土)から全国で公開。

「アデル、ブルーは熱い色」公式サイト
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