ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

渇き

2010-01-26 01:42:11 | か行
なんとなく
おどろおどろしいムードの作品が
続きますが・・・


「渇き」51点★☆


「オールド・ボーイ」のパク・チャヌク監督、
言うまでもなく才能豊かで
番長好きな監督なんですが

これは生理的にどうしてもダメだった。


人助けのために
危険な人体実験に志願した
神父サンヒョン(ソン・ガンホ)。

彼は奇跡的に生き延びるが
その体には異変が起き、
人妻のテジュ(キム・オクビン)に
猛烈な欲情を抱いてしまう。


彼を襲った異変とはいったい・・・?


まあつまり
神父は吸血鬼になってしまった、という話なのですが


話自体はけっこうソソられるし
大胆なセックスシーンもよしとして

なにがダメって、これ
血を飲む音がすごいんですよ。

ゴクゴク、いやゴキュゴキュ、ゴックンゴックン。

うえー。マジで食欲なくなりました。


監督自身、幼い頃カトリック信者だったそうで
もしかしたら神父への道を歩んでいたかもしれないとか。

なるほど
番長はお会いしたことがありますが
ものすごく穏やかな好人物
かつ超冴えた頭脳の持ち主という印象。

その裏にこういう狂気を
持ち合わせているんだなあと思うと
畏怖というか、かなり怖い。


今回は
主演のソン・ガンホが
監督自身の妄想、イマジネーションを
本当になぞっているように見えました。


それに女の趣味が一環してるのも
ちょっと怖い(笑)。

テジュ役の子、
「オールド・ボーイ」のカン・ヘジョンを
ちょっと思い出させますもん。

垢抜けなさと色気を
うまいぐあいに併せ持つ
子鹿系クリクリ目がお好みなんですね。


10キロ痩せたソン・ガンホの熱演といい
本当は見応えある作品なので
「血なんて全然、大丈夫」というかたには
おすすめしたいです。


★2/27からヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

「渇き」公式サイト
コメント (2)
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コララインとボタンの魔女

2010-01-25 01:50:29 | か行
「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」(1993年)
の監督による待望の最新作




「コララインとボタンの魔女」66点★★


仕事ばかりの両親にかまってもらえない
少女コララインは
引っ越したばかりの家のなかで小さなドアを見つける。

ドアはレンガで封印されていたけれど
夜中、不思議なネズミを追いかけていくうちに
コララインはそのドアをくぐりぬけ
別の世界にたどり着く。

そこはコララインの話を聞いてくれる
優しいママとパパがいる
夢のような世界だった。

ただひとつ違うのは
彼らの眼がボタンだということ…。

やがてコララインは
夢のようなこの世界と現実の
どちらを取るかの選択を迫られる…というお話。


「ナイトメア~」の時と同じく
人形を一コマ一コマ動かして撮る
ストップモーションアニメの最先端、なのですが


うーん。
技術の進歩って、よしあしですね。

「ナイトメア~」のとき、ジャックの表情は15通りだったけど
今回コララインの表情は20万7336通り!だそうで

監督&スタッフは血のにじむような苦労をして
今回の人形アニメを作った…というだけあって

たしかに動きはスムーズだけど
正直、これならCGでもよかったんじゃない?
という感じなんです。


あまりにも動きも表情も自然すぎて
あの縫い目の浮き出たハンドメイドの
味わいがなくなってしまった。


3D版はさらに別のフィルターがかかり
ますますCGっぽい感じが強いんですよ。


3D版が日本語吹き替えのみ、というのも良し悪しで
イマイチ入り込めない原因かも。


それに、見るにつけ
「ナイトメア~」はやっぱり
原案・製作のティム・バートンの世界観が
ものすごくしっかりしていたんだなあと
思わざるを得ませんでした。


唯一「ナイトメア~」を思い出せたのは
音楽でしたね。


あ、映画のプレス資料のデザインは秀逸でした。
眼がボタンになってるの。
          →




★2/19から全国で公開。

「コララインとボタンの魔女」公式サイト
コメント (3)
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パラノーマル・アクティビティ

2010-01-23 16:47:11 | は行
これは怖かった。
怖いので、昼間に書いてます。


「パラノーマル・アクティビティ」68点★★☆


一軒家で同棲中のカップルが
最近、家のなかで起こる奇妙な現象を
ビデオカメラで撮影することに。

そこには衝撃の映像が映っていた…!


若い女の子ばかりと一緒の
一般試写会で見たのですが
上映後、場内のお嬢さんがた騒然。


いや、これは怖いですよ。
「フォース・カインド」より数倍怖かった。


まあ深夜の寝室をジーッと捉えた
静止画像の怖いこと。

ギシギシ床は鳴るわ
何かの影が見えるわ

で、どんどんエスカレートしていくんです。


“素人がビデオで撮った映像”というのもうまい手だし
(途中までけっこうだまされてた)

始まって30分で、スクリーンの上の時計を見ながら
「早く終わってくれー」と
カウントダウンしてました。

ただ
ホラー要素としては
けっこう使い古されたものもあり

さらに
「こんな目にあってるのにまたここで寝ないだろ!」とか
見た目もヒョロい彼氏がやたら勇敢すぎる…とか

突っ込みどころも満載ですが


実はこれ制作費わずか135万円で撮られた
インディペンデント映画で

全米で口コミで大ヒット。

あのスピルバーグが内容に驚愕し
リメイク権を獲得したものの

結局「これ以上のものは作れない」
リメイクを断念した映画なんだそうです。

なかなかおもしろそうでしょ?

さあ、見るか見ないか、
あなたの決断はいかに?

★1/30からTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国で公開。

「パラノーマル・アクティビティ」公式サイト
コメント (2)
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シャーロック・ホームズ

2010-01-22 00:00:42 | さ行
シャーロキアンとまではいかないけど
けっこうホームズ好きな番長も
予想以上に満足しました。


「シャーロック・ホームズ」77点★★★


かの名探偵ホームズ
頭脳や推理の醍醐味そのままに

攻撃力と体力をプラスして
ニューヒーローに変身させた
なかなかあっぱれな作品です。


19世紀のロンドン。
名探偵ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr.)は
頭は回るが社会性も協調性もゼロ
不潔で乱暴な男。


常に相棒のワトソン医師(ジュード・ロウ)がツッコミで、
ホームズはボケ役、といった感じ。

そんな二人は黒魔術を操るという
連続殺人を犯した謎の男
ブラッドウッド郷の逮捕に成功する。


郷はホームズに「私は復活する」と
不気味な言葉を残して絞首刑に。

そして数日後。
ホームズのもとにブラッドウッド郷が墓から這い出して
生き返ったとの知らせが入る。

いったい郷はどうやって生き返ったのか?
そしてホームズとワトソンを襲う
前代未聞の大事件とは?



ホームズならではの名推理に冒険といった
万人ウケする素材を素直に活用し
テンポよく楽しませてくれます。

ガイ・リッチー監督らしい
格闘シーンもありますが
殴り合いや血の出方がすごーくソフトに抑制されてる。

暴力シーンが苦手な人や
子どもさんにも見やすい配慮が大正解。


ホームズ役のロバート・ダウニー・Jr.は
正直あまり好みでないけれど

ワトソン役のジュード・ロウとの掛け合いの息は
すごく合っていて
なかなかおもしろい。


こんな名コンビもいいかも、と思わせる
新たな魅力を生み出した
監督の挑戦と、その成功に拍手。

これは続編が楽しみです。

あ、「また続編?」って
言わないで~~


★3/12から丸の内ルーブルほか全国で公開。

「シャーロック・ホームズ」公式サイト
コメント (5)
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アイガー北壁

2010-01-20 23:52:24 | あ行
「剣岳」ヒットにあやかって
これもぜひ・・・!

「アイガー北壁」79点★★★


1930年代に
ヨーロッパ最大の難所、アルプス・アイガー北壁に挑んだ
若き登山家たちの実話をもとにした

手に汗握る、見応えある山岳映画です。


1936年。
ナチス政権はプロパガンダのために
前人未踏のアイガー北壁を初征服した者に
ベルリン五輪の金メダルを授与すると発表した。


新聞社の見習い女性カメラマン・ルイーゼは
幼なじみの登山家トニーとアンディー
北壁に挑まないかともちかける。

ルイーゼを密かに愛し続けてきたトニー
最初は名声のための登頂を渋るが
ついに2人は人々、そして国家の見守るなか
登頂を始める・・・という話。


ナチスドイツの話はあんまり関係なく
とにかく訴えてくるのは
登山家たちが直面する雪山の凄まじい厳しさ。


容赦ない展開に、マジ凍えました。

「剣岳」より数十倍、半端ないですよ、コレは。


また
主人公トニーとルイーゼ
幼なじみのモジモジした愛が
ことさらに切なさと痛々しさを盛り上げる。


映像にも
実際に超過酷な状況で
撮影されたのだろうなあと忍ばれる
ギリギリの緊迫感があります。


ルイーゼが報道関係者だという設定なので
「目の前で人が死にかけたときに、シャッターを押せるか」という
ジャーナリズムの真髄に関わる問題提起も感じさせる

硬派な映画です。


いまも雪山での死亡事故は後を絶たないけれど
なぜ人はそこまで極限に挑むのか?

主人公たちの息づかいから
その謎が少し解けるような気もしないでもないですが

いや、実際
なんでこんな思いをするのか
まるでわからないのが正直なところです。


山の恐怖と縮み上がるような美しさに
圧巻される2時間です。


★3/20からヒューマントラスト有楽町、新宿バルト9ほか、全国順次公開。

「アイガー北壁」公式サイト
コメント (4)
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