ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ある少年の告白

2019-04-18 22:49:50 | あ行

「マンチェスター・バイ・ザ・シー」(16年)のルーカス・ヘッジズ、

出演作が続きます。

 

「ある少年の告白」71点★★★★

 

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アメリカの、ある田舎町。

 

大学生のジャレッド(ルーカス・ヘッジズ)は

牧師の父(ラッセル・クロウ)と優しい母(ニコール・キッドマン)に愛され

なに不自由なく育った。

 

大学の寮で、ある経験をしたジャレッドは

自分が男性が好きだということに気づく。

 

しかし、両親にそのことを告白すると、

父は牧師仲間らの助言で、彼をある場所へと連れて行く。

 

それは「同性愛を治す」矯正施設だった――。

 

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「同性愛を治す」矯正プログラムに参加させられた

アメリカの少年の実体験を描いた作品です。

 

その「矯正施設」とは

人権侵害も甚だしく、

かつ人格否定によって入所者を追い詰め、

自殺者まで出すような最悪の場所なんですが

 

これ

2016年発表の実話が基。

事が起こったのは04年ですが、

プレス資料によると、いまも約70万人がこの矯正治療を経験し、

うち35万人が青年のうちに受けているそう。

ごく最近の話なわけです。

 

いまも

先進国でも都市部と地方で

LGBTを取り巻く状況にはまだまだ厳しいものがある・・・・・・とは聞いていたし、

わかっていたつもりだけど、

こんな人権蹂躙が、いまの時代も続いているとは!、と

そして特に親の庇護下にある若者にとって

いまだ、これが現実なのか?と

改めて、矢で貫かれた感じです。

 

彼の場合は、母親が意思を持ち、立ち上がったことで救われるし

現在の彼らの姿に、希望はあるんですが

 

しかし、ホントに

LGBTをめぐる周囲の認識の現状ってどうなんだろう、と思ってしまう。

 

例えば、先日試写で観た

「ハーツ・ビート・ラウド」(6/7公開)

 

 

NYでシングルファザーの父と暮らす10代のヒロインは、

ごく自然に「彼女」を作るんだけど

父親が心配するのは相手の性別なんぞではなく

「遅くなるなら、ちゃんと連絡しろ!」とか、そういうことなんですよね。

あと、真人間なのか、ってこと。

相手が“彼女”であることはふつうにスルー(笑)

 

まあこの話はフィクションですが

作ってる人がこう描き、観客もそれを受け止めてるから

こういう映画ができるんだと思うんです。

で、

それがフツーだと、ワシも思ってたんですが

こんな「矯正施設」なんて話に出会うと、

しかも最近の話ときくと

まてよ、と思う。

 

結局は、やっぱり当事者の家族・社会も含め

受け止める側の「人間力」、「懐の深さ」が頼りなのかなあ、と。

 

考えさせられるのでありました。

 

★4/19(金)からTOHOシネマズ シャンテほか全国で公開。

「ある少年の告白」公式サイト


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