ダンサー出身の監督による作品。
これ自体がダンスのような。
「イサドラの子どもたち」71点★★★★
********************************
20世紀初頭の舞踊界に
革命を起こした伝説のダンサー、イサドラ・ダンカン。
1913年、彼女は二人の子どもを事故で亡くしてしまう。
悲しみと痛みに苦しみながら
ダンカンは亡き子どもたちに捧げるソロダンス「母」を創作した。
それから100年。
現代を生きる女性たちが
それぞれの解釈で、ダンカンのダンスを継いでゆく――。
********************************
コンテンポラリー・ダンサー出身の監督による作品。
4人の登場人物を順番に追った映像は
ドキュメンタリーのようでもあり、
余分をそぎ落としたミニマルさと
ナチュラルで静謐な空気が実に美しく
この作品そのものが、ダンスのようでありました。
最初のパートは
イサドラ・ダンカンの自伝から、この悲劇を知り、
彼女が残した踊りの譜面(そんなものがあるんだ!ということに驚いた)を研究しながら
「母」のダンスを振り付けていく若きダンサー、アガト。
悩みながら一足、一動き、一振りづつ
自分のなかにダンスを落とし込み、表現していく彼女の動きひとつひとつに
見入ってしまう。
次は
障害を持つダンサーに、対話をしながら振り付けを教える振付師。
2人の関係性、その振動が
ダンスに現れるようでおもしろい。
そして、最後に登場するのは
「母」のダンス公演を鑑賞し、
その余韻に浸りながら家路につくアフリカ系の初老女性。
いったい、彼女とこのダンスの接点はなんなのか――?
すべてのパートが淡々と訥々と描かれるのをみながら
芸術の豊かさ、大切さがじわじわと、体に広がっていく。
芸術を探求し、それに触れることこそ
人間に与えられた最上の喜びでなのではないか?
いま、このときに
あらためて考えさせられました。
劇場や美術館に行きたくなります。
★9/26(土)からシアター・イメージフォーラムほか全国順次公開。