ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

初恋~お父さん、チビがいなくなりました

2019-05-11 14:01:08 | は行

好きだなあ、いいなあ、この感じ。

 

「初恋~お父さん、チビがいなくなりました」72点★★★★

 

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専業主婦の有喜子(倍賞千恵子)は

夫(藤竜也)と、猫のチビと3人暮らし。

 

結婚50年、3人の子どもたちは巣立ち、

無口で頑固な夫とは会話もないが

まあそんなもの、とあきらめ

チビを膝に、韓流ドラマを鑑賞する日々だ。

 

そんなある日、チビがいなくなってしまう。

 

寂しさがマックスになったお母さんは

ある行動に出るのだが――?!

 

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なんでもない、フツーの話なんですけどね、そこが素敵。

 

倍賞千恵子氏×藤竜也氏の

「いるいる」な昭和すきま風な夫婦が

まったくもって本物のようで、味わい深いったらない。

 

末娘役の市川実日子氏も、とてもいい。

 

深刻になりすぎない、

かといって軽いわけじゃない、

猫も主役の一人だけど、猫映画、ってわけでもない。

 

ちょうどいいあんばいなんです。

 

外出から帰れば、靴下を脱がせてもらい、

口を開けば「お茶!」と一言、みたいなお父さん。

そんなお父さんにも、もう慣れっこで

猫のチビを膝にのせ、韓流ドラマに夢中なお母さん。

 

しかし、ある日、なんとなく夫婦のかすがいだったチビがいなくなり、

お母さんの寂しさ、無為感はマックスに。

 

耐えられなくなったお母さんは――?という展開。

 

ああ、猫一匹と老夫婦、

家に帰れば、いつも「相棒」の再放送(いったい何回見てんだよ・・・・・・

たまに電話で「お父さんがね!」と愚痴ってくる

うちの親も、まさにこれですよ・・・・・・と

困り顔になりつつも、ふっと笑ってしまうような。

 

倍賞さんのお母さんはとてもチャーミングで

藤竜也さんのお父さんも、終始しかめっ面なのに、なんだか愛してしまう。

 

なんでもない日常ドラマって、少なくはないけれど

誰もがこういう味わいを出せるものじゃない。

 

監督の小林聖太郎氏は

「毎日かあさん」(11年)も、とてもよかったし

「ああ、そこ!」というツボを押すのが、上手なんだと思います。

 

そして、今週の「週刊朝日」の「もう一つの自分史」で

藤竜也さんにお話を伺ってきました。

 

ああ、もう素敵すぎて、完全にノックアウト!(笑)

AERAdot.にも記事がアップされております。

映画と併せて、ぜひご一読ください~☆

 

★5/10(金)から全国で公開。

「初恋~お父さん、チビがいなくなりました」公式サイト

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