万国共通のリアル問題。
でも、つらくない。
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「わすれな草」73点★★★★
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ドイツ発、認知症の母と、その母を介護する父を
30代の息子が撮ったドキュメンタリー。
万国共通のリアル問題ですが
しかし悲壮感はなく、意外なほどピュアなラブストーリーなんです。
彼女の病気をきっかけに
家族がその関係を再構築してゆく様子に
あたたかい希望も感じます。
なので、警戒せずに見てほしい。
なによりまず、このお父さんとお母さんが
けっこうな美男美女カップルで
夫は数学者、母は政治活動家――という経歴が
絵的に、映画的においしい(笑)
さらに
息子が両親の昔話を探っていくと
意外な過去が出てくるのもすごい。
二人が浮気も公認の「進んだ」カップルであり、
それゆえの嫉妬や複雑さがあった・・・とか
思いがけず“普通”っぽい家庭の「裏事情」が描かれるんです。
いやあドラマチック!
もちろん美しいことばかりではないです。
美しかったお母さんが、記憶障害とともに、
信じられないスピードで老いていく。
その姿は切ないし
会話のもどかしさや、家族ならではのイラつきも、痛いほどリアルに刺さる。
きれいごとでない
介護のリアルもきちんと見えるんだけど
それでも「家族」がいる、そこには光がある。
彼らはリアル家族だけど
この「家族」はどんな形式だっていいと思うんですよ。
やがてくる未来を、
こんなふうに、感じられるのは悪くない。
70歳になってもハンサムな夫と
優しい息子にたっぷり愛情を注がれて
はにかんだようにするお母さんは、幸せものだなあと
しみじみ思いました。
★4/15(土)から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。
「わすれな草」公式サイト