ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

はじまりへの旅

2017-04-01 15:19:11 | は行


ヴィゴ・モーテンセン、本作で
アカデミー賞主演男優賞ノミネート。


「はじまりへの旅」69点★★★☆


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アメリカ北西部の山の中。


哲学者ノーム・チョムスキーを信奉する
ベン(ヴィゴ・モーテンセン)は

現代文明に背を向け、
6人の子どもたちと自給自足の生活をしていた。

そんなある日、
街の病院に入院していたベンの妻が
亡くなったという知らせが入る。

ベンは山を下り、子どもたちを
葬儀に参列させようとするが――?!


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うわーこれは鑑賞後感が複雑。

ちょっとウェス・アンダーソンふうの
ユーモラスな雰囲気のポスターだけど、
いや全然、マジなんですよ(笑)


ヴィゴ・モーテンセン演じる父親は
山の中で子どもたちとコミューンを築いている。

そこでは彼が王であり、絶対のルール。
子どもたちは彼に獲物の仕留め方を教わり、体を鍛え、

古典文学や哲学を学び、
6カ国語をマスターしている。

そんな彼らが“世俗にまみれた”下界に降りてきて
ホットドッグに驚き、巨大スーパーに驚き
ブヨブヨな現代人を「この人たち、病気???」と本気で心配する(笑)

そんなギャップが生み出すの笑いや
ユーモラスも諸処あるんだけど

どうも
根っこにあるものマジさに、ちょっと考え込んでしまうですよね。

ワシはこの父親の志に、十分共感するほうだけど
やっぱりここまでくると「狂信的」と言わざるを得ない。

特殊な環境で育てられた子どもたちは
社会に適応できるのか?

大人になって生き方を選ぶのは勝手だけど、
子どもにそれしていいんだろうか?

マジメに考えてしまうし
たぶん、監督もそれをさせたいんだと思う。
決して「おちゃらけた」(っていうのもヘンか)話じゃないっていうか。


その人が信じるものを、誰が正しいと計るのか。
見る人を気持ちを動揺させるんです。


まあ
正しい、正しくない以前に
「人の価値観を押し付けるのはダメ」って
この父親も学んでいくんですけどね。

シャマラン監督の
「ヴィレッジ」をマジ方向に掘り下げるとこうなる、
みたいな気もしました。


★4/1(土)から公開中。

「はじまりへの旅」公式サイト
コメント (5)
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