ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

陽だまりハウスでマラソンを

2015-03-17 20:03:00 | は行

もっとハートフルかと思ったけど
逆に、そこがずしんときた。


「陽だまりハウスでマラソンを」70点★★★★


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1956年、オリンピックのマラソンで金メダリストとなった
西ドイツ出身のパウル(ディーター・ハラーフォルデン)。

いまはすっかり年を取り、
妻(ターチャ・サイブト)と隠居生活だ。

だが妻の体調が悪くなってしまう。
一人娘(ハイケ・マカッシュ)は仕事に忙しく
面倒を見られない。

しかたなくパウルは妻と老人ホームに入るが、
そこはとてつもなく退屈な場所で――?!


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70代の元オリンピック選手が
もう一度、フルマラソンを走ろうとするが――?というドイツ映画。

もっとハートフルで
“老人がんばるコメディ系”かと思ったんですが
想像とは違って、けっこうシビアで重さもあった。

でも、そこがずっしりきた。


しかし
「人生はマラソンだ!」もちょっと想像と違ったし
ワシが宣伝素材からイメージするものが単に間違ってるのか(苦笑)


ともあれ、本作は
いやでもやってくる“老い”を考えさせ、
仲睦まじい老夫婦の行く末に胸を詰まらせ、
(妻役の女優の慈愛に溢れる優しい眼差しがたまらなくいい!

若い世代が親の面倒をどう見るか――という
万国共通の問題を突きつけられる。

そして老人施設でのケアの問題もある。

「走りたい!」という70代のパウルを
施設のスタッフは「やめなさい!」「ホームの秩序を乱さないで!」
なんとしてでも止めようとするんですね。

本当は一人一人に合ったケアが必要なのに
「他と違うことをさせられない」という状況に
なにより人手不足があるのだろうか、
日本で聞くのとまったく同じだな、と「ふーむ」と思いました。


まあ、
しのご言わずに、パウルを走らせてやれば
こんなに問題が長引かなかったのに・・・という気もするんですが
それを言ったら、せっかくの話が台なしか。すみません(苦笑)

ちなみに主人公が
1956年のメルボルン・オリンピック金メダリストだ、という設定は
フィクション。

冒頭に流れるニュース映像が
あまりにもリアルなんで
てっきり事実かと思いました。


★3/21(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館

「陽だまりハウスでマラソンを」公式サイト
コメント
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