退藏院は、方丈の南側に回遊式庭園、「余香苑(よこうえん)」がひろがっています。
昭和38年に造園家の中根金作氏が設計した庭園は、中央に「ひょうたん池」が配され、
桜や蓮、楓など一年を通して華やかな景色を見ることができるそうです。
ところが、訪れた日は6月1日でしたが、藤はすでに散り、サツキは終わったあと、
スイレンや菖蒲、アジサイはこれから、といったところで、
残念ながら、花はありませんでした。
退藏院には、国宝の水墨画「瓢鮎図(ひょうねんず)」が伝わっています。
出来上がった「ひょうたん池」には、鯰(なまず)が放されました。
原本の瓢鮎図は、室町時代の画僧・如拙の作といわれています。
現在は京都国立博物館に寄託されているそうです。
ただでさえ、ぬるぬるして捕まえにくい鯰を口の細い瓢箪に入れようとする様子を
書いたものです。
実際に、どうしたら鯰を瓢箪で捕まえられるのか。
当時、京都五山の禅僧たちが必死に頭をひねったそうです。
これは、「正解を求めて考えすぎるな、平常心が大切」、ということだそうで、
あれがない、これがないと、人と比べて欲を満たそうとすることのむなしさを
「禅」の教えを借りて説いているのかもしれません。
(「退蔵院」の項 おわり)