福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

育志賞受賞の意義

2016-01-30 17:14:31 | 研究室紹介
昨日お知らせいたしましたように、大学院博士課程3年の渡邊美穂さんが育志賞(日本学術振興会)を受賞いたしました。

受賞の朗報から一夜明けて、彼女の受賞の意義を考えてみました。

育志賞は、将来我が国の学術研究の発展に寄与することが期待できる優秀な大学院博士課程学生を顕彰するものです。天皇陛下の御即位20年に当たり社会的に厳しい経済環境の中で勉学や研究に励んでいる若手研究者を支援•奨励するための事業です。

彼女の研究は、生態系を構成している多様な微生物に関して、工夫を凝らして集積培養を繰り返して未知細菌を単離し、新種として提案し、その系統進化および機能を解明しようというものです。そのためには地味でコツコツと粘り強く努力を重ねる必要があります(『ジミコツ研究』)。その努力の積み重ねで、新たな高次分類群のバクテリアを発見することができました。新種の発見にとどまらず、完全長ゲノム配列を決定し、機能の解明も行なうと言う、意欲的な研究です。

育志賞の選考基準の具体例は、下記の通りです。
○ 発想・着想、課題設定などにおいて、創造性・独創性が高い研究に主体的に取り組んでいる者
○ 当該学問領域や学際領域における重要な基盤となる研究に主体的に取り組んでいる者
○ きびしい研究環境の下でも創意工夫を凝らして、主体的に研究を進めている者
○ 短期的には論文等の成果が出にくい研究に対して、忍耐強く取り組んでいる者


彼女の場合、上記具体例の全てに該当しています。この度、北海道大学総長及び日本微生物生態学会会長から推薦を得て、育志賞受賞に至りました。


当研究室から育志賞受賞者が出たことは、とても嬉しいことですし、何よりも後輩の励みにもなります。これから続く後輩達へのエンカレッジこそが、美穂さんの育志賞受賞の意義であると、私は思っております。

ご参考までに、美穂さんの調査風景をご紹介いたします。厳寒の春採湖(北海道釧路市)で、氷厚70cm以上の湖氷をアイスドリルでくりぬいて、未知微生物の宝庫である湖底堆積物を採取。同時に、湖水の物理化学的因子ならびに微生物群集構造も調査。



春採湖から分離した新規微生物Limnochorda pilosaの電子顕微鏡写真は、当研究室のホームページのトップにも掲載されています!



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