福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

呑川(のみがわ)

2011-06-02 00:52:00 | 低温研のことごと

一昨日のエントリー「流行には乗らない」で書いた最後の一文。「さてと、立川へ行くか。でも、立川よりも呑川がいいな」

 

大学院生から、「あの一文はどんな意味なんですか?」と質問されました。そうですね、とても難解でしたね。

 

茅野春雄先生のご著書「昆虫の謎を追う」で、こんな文章を見つけました。1953年、茅野先生が25歳の頃のこと。

 

大学の近く、戦後間もなく建てたかという小さな家に住むことになった。ガスも水道もなかった。水は手押しの井戸から、炊事はプロパン、風呂は石炭。隣の家は山羊とニワトリを飼い、家の前は呑川という名の小川が流れ、その土手には桜の並木、魚がいたかどうかは覚えがないが、カワセミが時々やって来た。大学までは、緩い坂を歩けば十分たらず、そんな所がその小さな家の周辺だった。

 

そして、当時の研究室の人たちの溜まり場の「路地」が紹介されています。

 

(「路地」は)川にどぶ板を渡して建っていた。大学院生の津末玄夫君が見つけた飲み屋だ。その川の上流に我が家があった。それが呑川だ。さんざん安ウィスキーを飲み、天下国家を論じ、サイエンスを語り、時には殴り合い寸前もあった。むろん、私はいつもその仲裁役であった。夜風に吹かれて呑川の土手を歩けば我が家に辿り着いた。この「路地」は、それから実に二十年以上も私の交友の場となる。一体、ここで何人の良き友と飲み、語ったことか。

 

呑川は、東京の世田谷区深沢や目黒区八雲あたりを流れる二級河川。茅野先生宅付近の呑川は、すでに埋め立てられ、緑道となっています。いつだったか、飲み屋「路地」を探す旅に出かけたことがあります。くまなく歩き回ったのですが、残念ながら見つけることができませんでした。しかし、「ちもと」を発見。甘党の人には憧れの和菓子店です。栗蒸し羊羹がお勧めです。


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春の呑川は、桜が咲き、散歩や花見にお勧めです。大学院生の皆さん、機会がありましたら、茅野先生がこよなく愛した呑川を訪れてみてはいかがでしょう。

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