気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

Suspect by Robert Crais

2013-12-01 09:44:42 | 読書感想

 進軍する場所の安全と爆発物の有無の検知を任務とする軍用犬MaggieはハンドラーであるPeteと一心同体であることが喜びであった。

Peteを守ること、喜ぶことをすることが彼女の使命であり喜びであると感じていた。しかし、探索活動を行っている時、敵の待ち伏せに会いPeteは殺される。彼女は危険を察知したにもかかわらずPeteを守ることができず彼が殺されたことにショックを受け、銃声やハンマーなどの打撃音に怯えるようになる(PTSD)。

軍用犬として活動することができないようになったMaggieは、LAPDのK9の部署で警察犬としての訓練を受ける。ハンドラーは新しくこの部署に配置されたScottという警察官だった。

 9ヶ月前深夜、パトロール警官のScottは相棒のStephanieとパトカーで巡回中、高級乗用車がトラックに追突される場面に遭遇する。直ちにパトカーを降り、ドライバーの様子を見に行こうとした彼らはトラックからの乱射を受け、Stephanieは胸に被弾する。Scotは彼女を安全な場所に移そうと救援に向かうが足や肩を撃たれる、彼女を移動させることが負傷した自分にできないとわかったScottはパトカーを盾にする事を考え、彼女をその場に残しパトカーに戻ろうとする。だが 武装した男に気づかれ胸に銃弾を浴び意識を失う。

かろうじて一命を取り留めたScottは 9ヶ月たった今もその出来事が彼の精神的なトラウマ(PTSD)となっていた。特に、殺されたStephanieが最後に彼に向かって叫んだ言葉「私を見捨てないで!」が。Stephanieが見捨てられたと思いながら死んでいったことが悪夢となって彼を苦しめていた。パートナーが殺されるという同じ精神的苦痛を二度と避けるため、怪我が癒えて復職した彼はパートナーとして物言わぬ犬を選んだ。

 事件は何の手がかりも得られぬままに9ヶ月が過ぎていた。当時、Scottは殺人課の刑事たちから尋問を受けるが人数が5人であったこと以外、彼らはマスクをかぶりグローブをつけていたため何一つ有力な情報を与えることができなかった。
そんなある日、Bud Orsoという刑事から電話があり Scottの事件を担当していた刑事が退職したため、彼が事件を引き継いだことを話し、Scottとの面会をもとめる。
 Orsoは 事件当日、数ブロック離れた店が盗難にあったことを話し 彼に心当たりがないか尋ねる。Scottは、最近、犯人の一人のもみあげが灰色だったと思い出したことを話し、捜査資料を自分にも見せて欲しいと頼む。Orsoは彼がそれを見ることによって何かを思い出すことを期待して了承する。

 8週間のハンドラーの研修が終わり、Scottは自分と組む犬を割り当てられるが、彼はその犬を拒否し、PTSDの症状が見られるとして飼い主に戻すことになっているMaggieを自分の組む犬にしたいと頼む。K9の責任者のDominick Lelandは2週間の期限を条件に彼にそれを認める。Lelandは 研修の間、Scottを見ていて彼が犬との意志疎通が全くできていないことから 彼がこの仕事に向いていないのではないか(suspect)と判断していた。そして、ストレスを抱えたMaggieもまた警察犬には向いていないのではないか(suspect)と。そして、MaggieをScottにつけることによって、Scottが辞職することを期待していた。

ScottはMaggieの訓練の合間をぬって、Orsoが許可してくれた捜査資料を参考にしながらMaggieを相棒に Stephanieを殺した犯人たちを特定するために独自に捜査にのりだす。

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パートナーを失ったことのショックからなかなか立ち直れない犬と男が新しいパートナーを見つけて立ち直っていく過程が語られていく。Scottが悪夢に涙するとき、Maggieがその涙を嘗めて彼に癒しを与え、Maggieが通りの騒音にすくむとき、Scottが「俺が守ってあげる」と囁きながら背中をそっとさすって癒しを与える。傷ついたもの同士がお互いに助け合いながら立ち直ろうとしている姿は読んでいる側にも癒しを与える。

物語の構成にMaggieの視点から見た章があり、彼女(?)がScott をどうみているのか、状況をどう判断するかという様子が詳しくかかれており、また内容に説得力があり、犬が行動するときの心理(?)がわかって、興味深く読めた。
 あるインタビューで著者がコメントしているが,かっての名犬リンチンチンやラッシーなどの人間のような頭脳や振る舞いをする犬ではなく あくまでも主人に忠実な犬として描かれている。そのため、主人が重傷で一刻も早く病院はつれていく必要がある時、同僚の仲間が彼を運び出そうとするのを彼を守るべく噛みついて阻止しようとする。

警察犬の嗅覚による犯人の追跡というシーンは昔の映画には会ったが、徒歩で逃げてくれたら犯人に行き着くかもしれないが、車による逃亡という現代は無理がある、犯人逮捕にどう絡めるのかと思っていたら うまく考えていた。ただ、犬、警察犬の性質、訓練については多くのことを教えてくれるが、ミステリーとしては物足りない。

★★★ Kindle版 ¥1282円

 


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