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気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

The Litigators by John Grisham

2014-09-07 10:15:06 | 読書感想

シカゴのうらぶれた通りのうらぶれた建物に事務所を構える弁護士が二人だけのうらぶれた法律事務所「Finley&Figg」。扱う仕事は協議離婚、遺言書の作成などの家庭問題や交通事故の賠償請求。弁護士過剰と云われる中で仕事を得るために、救急車のサイレンを聞くと直ちに交通事故の現場に駆けつけ被害者の依頼を受けようとしたり、葬祭場を廻って金がありそうな遺族を探し廻る。そんな些細な仕事を続けて数十年、シニアパートナーのOscarは慰謝料が払えないためにできない妻との離婚と引退を考えながら仕事をし、ジュニアパートナーのWallyは企業の製造物責任を問う集団訴訟の新聞記事に目を奪われ、いつか自分もその訴訟に加わって巨額和解金の分配に預かることを夢見ていた。

そして今、Wallyはその夢を実現する機会に出会う。
いつものように新聞の死亡記事欄をチェックしていたWallyは、6年前、この法律事務所で遺言書を作成をしたChester Marinoと云う男の死亡記事を見つける。遺言書で資産を調べたWallyは、数千ドルの報酬になる遺言執行人の依頼を取るべく遺族がいる葬儀場に向かう。
そこで彼は Marinoの息子のLyleから父親が心臓発作で死んだのは服用していた薬のせいだと話すのに緊張する。彼によると肥満に効くというKrayoxxという薬を服用し始めた父親は、体重は減ったが同時に心臓の違和感を訴え初めていたと話し、明らかに心臓発作の原因は薬のせいだと主張していた。そして彼は新聞記事のコピーを見せ、フロリダの有名な製造物責任専門の法律事務所「Zell & Potter」がこの薬による薬害訴訟を起こしたと言い、父親の件でも訴訟を起こしてほしいと依頼する。

WallyはLyleが彼に渡した新聞記事のコピーなどから訴訟を起こした「Zell & Potter」は一人当たり2百万ドル以上の賠償金を請求しており、さらにこの薬の訴訟が全米で起きることを予想し集団訴訟を提起していた。もし訴訟を起こした場合、大手薬害訴訟専門の法律事務所の尻馬に乗って、巨額の報酬が得られる途方もない金脈を発見したことに彼は興奮する。依頼人が多ければ多いほど賠償金の分配が巨額になると察した彼は薬害被害者を捜し始める。彼は、その薬害がまだ世間に認知されていない今が他の弁護士と奪い合うことなく依頼人を増やす好機だと知り、市内の葬儀所を片端から周り心臓発作で死んだ者の中にKrayoxxを服用していた者がいないか探し回る。
さらに 過去に事務所が扱った依頼人を訪ね親族や近所の人でKrayoxxを常用していて心臓発作を起こした人がいないか探し歩く。

名門Harvard Law School出身、30代前半の弁護士Davidは、5年間、一日15時間、超一流法律事務所で債券事務の仕事をしていたが、ある朝突然、出勤途中に仕事のやる気をなくし、仕事をボイコット、近くのバーで一日中飲酒する。夕方、酔っぱらった状態でバーを出た彼はたまたま目に付いた小さな法律事務所「Finley&Figg」に転がり込み、働かせてほしいと頼みこむ。
WallyとOscarは、いきなりの要求にとまどうが、たまたま起きた交通事故でのDavidの行動に感心して彼を雇用することを決定する。翌日、はりきって出勤してきたDavidはWallyの助手として シカゴの貧民街で薬害被害者の調査をしらみつぶしに行っていく。。

その結果、WallyはLyleの父親のほかにもう一人の被害者の依頼人を見つけ、連邦裁判所に製薬会社を相手にして損害賠償の訴訟を起こす。
DavidはKrayoxxと心臓発作の因果関係に確信を持てないながらもWallyに求められるままに原告代理人として訴訟に名を連ねる。
さらにWallyは、この提訴の内容をシカゴの全マスコミに送り、この薬の危険性を訴える。そして、マスコミがこの訴訟を取り上げたことで全米でこの製薬会社を相手取っての訴訟が起こる。

全米のマスコミがこの訴訟を取り上げた後、薬害に対する問い合わせで事務所の電話は鳴りっぱなしになり、彼らはさらに6人の依頼人を得る。やがて、「Zell & Potter」法律事務所の Jerry Alisandrosから連絡があり、Krayoxx訴訟を起こした弁護士たちが密かにあって会議を行うのでWallyも参加するよう求められる。その席でWallyはJerryから自分たちの法律事務所とチームを組まないかと申し込まれる。薬害認定の専門医の手配など訴訟の段取り、陪審審理は自分たちが引き受けるからWallyたちは薬害被害者の原告をもっと増やすように提案される。陪審審理など経験したことのないWallyたちにとって、この提案は渡りに船だった。さらにJerryは裁判は陪審審理に入る前に和解に達し、賠償金の話しあいになるとの見通しを話した。薬害訴訟専門の大物弁護士に訴訟のすべてを委せ、原告側弁護士として同席するだけで巨額の賠償金を手に入れることができることにOscarもDavidも興奮する。

一方、訴えられた製薬会社はたびたび薬害訴訟を起こす薬害訴訟専門の弁護士たちに苦虫を噛む思いをしていたが、ここで一気に彼らに報復する事を決意する。そして、その手段として法律事務所「Finley&Figg」を選ぶ。

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アメリカの民事訴訟裁判、陪審審理に入る前に証拠開示手続き(discovery)があることなど裁判の進め方などがわかって興味深かったが、それなりにどきどきするところもあるが、ミステリーとしては物足りない感じがした。

しかし、2014年9月4日の各マスコミは、ルイジアナ州の連邦裁判所は武田薬品の糖尿病治療薬アクトスの薬害被害者に6300億円の支払いを認めた陪審員評決を支持する判決を出したと報じていた。まさにこの本が取り上げた薬害訴訟の裁判。この本によると弁護士報酬は40パーセント、訴訟に参加した弁護士達は2520億円という巨額の報酬を得ることになる?薬害訴訟専門の弁護士がこれを主導したのか?武田製薬は和解に動かなかったのか?集団訴訟は起こさなかったのか?この本のおかげで記事の背景を推測する楽しみができた。

日本だと弁護士を雇うときは何らかの金を支払うがアメリカでは無料で代理人となって相手方と交渉し 相手方から得た賠償金の中から報酬を得るという手法に驚く。

また 企業の製造物責任を糾弾する裁判も社会正義のためでなく、巨額の和解金目当てというのは読む気力をなくす。訴訟に参加した被害者は救われるが参加しなかった被害者は救われない。

薬害被害者の遺族も身内を亡くした怒りよりも巨額の賠償金が転がり込むことに浮かれ、おこぼれを預かろうと遺族の周りには親族や友人が集まってくる。これだけえげつなく人間の業を描かれるとDavidじゃないけどその場をさっさと立ち去りたくなる。

また Litigatorの翻訳本『巨大訴訟』(上下巻 白石朗訳 新潮文庫)のおかげでかなり法律用語も覚えた。他のリーガルサスペンスにも挑戦したくなった。

Kindle2版 ★★★


End Game (Jonathan Grave) by John Gilstrap

2014-08-24 11:26:39 | 読書感想

セキュリティ会社に所属し、紛争地域で要人を警護する任務に就いていたJolaineは11歳の少年Grahamを守るためにFBIに雇われる。

Chechenで核兵器の技術者だった彼の父親Bernardはアメリカに移住して、NATOが始めたソ連崩壊時に所在不明になった核兵器の場所を特定する作業に従事していた。ある日、Bernardは同じChechen人でロシアからの独立を目指すChechen過激派の友人Gregoryからロシアに対する報復のため核兵器の情報を教えるように脅迫される。彼は家族の身を案じ彼に同意するが、FBIに自分の窮地を電話する。FBIは彼に二重スパイになることを要求する。息子の身を心配する両親のためにボディガードとしてJolaineを雇うことを条件にして。

以来3年間、Jolaineは一家の家に住み込み学校の送り迎えなど四六時中、彼の安全を図っていた。ある夜10時、Jolaineは玄関のドアが激しく叩かれる音に気づく。夜遅い訪問者に戸惑いながらも玄関に向かう彼女に、「自分が出る」と言いながら父親のBernardが銃を構えて玄関に向かう。さらに妻のSarahも彼に従って。Bernardが銃を構えていることや普段は寝ているはずのSarahがドアを叩く音に身構えている事態の異常さにJolaineは動転する。

ドアを叩いていた男は胸に銃弾を受けたGregoryだった。息絶え絶えのGregoryは「自分たちの計画が知られた、これがそうだ」と言いながら、彼に一片の紙片を渡す。救急車と叫ぶBernardに対して妻のSarahはJolaineにすぐに息子を連れて逃げるように命令する。
Jolaineは息子を守るために雇われていた、事態の展開に呆然としながらも息子のGrahamを起こし、同じように事態が飲み込めない彼を連れて家を出ようとするが、Gregoryを追ってきた男たちが現れ銃撃戦になる。Jolaineは夫婦が応戦している中、両親の身を心配するGrahamを強引に家から連れ出し、車で脱出しようとする。その際、銃で胸を撃たれたSarahを救出し、3人でその場を脱する。

傷の手当てのために病院に行くことを主張する二人にSarahは病院に行くことを拒否し、知り合いの医者だという男に連絡する。たどりついた場所は何かのアジトのように思われた。秘密のエレベーターで着いた場所には立派な手術設備があった。手術を受ける前にSarahはGregoryがBernardに渡した紙切れをGrahamに見せ、その内容を記憶するように命令する。
Grahamは一度見聞きしたことはすべて記憶できる特殊な能力を持っていた。
Jolaineはその紙切れのためにGregoryが死んでいることから、その内容を記憶することはGrahamを危険にさらすと考え、やめるよう説得するがSarahは大切なことだとしてGrahamに記憶するよう強要する。

さらに あらかじめ教えておいた指示を実行するように彼女はGrahamに話す。指示通り、相手に会って覚えた内容を教えろと。JolaineはSarahにその紙切れの内容が何を意味するのか教えるように要求するが無視され、彼が指示通り行動すれば命の危険はなくなると言い、それまで彼を守れと命令される。
JolaineはGrahamを誰から守るか、何処に向かうかも分からぬまま、彼を連れて銃創の手術をするSarahのもとを去る。

行くあてのないままに、二人は道路際にあったモーテルに泊まる。GrahamはJolaineが買い物に出かけた隙に、彼女が禁じていたにも関わらず指示にあった電話番号に電話してしまう。電話に出た相手の対応に不信を抱いたGrahamは途中で電話を切るが、居所を逆探知されてしまう。二人は銃を持った数人の男たちに襲撃されるが、Jolaineは実戦に基づく冷静沈着な対応によって撃退する。しかし、銃撃戦を住民によって通報され、警察が来る前にその場を脱出する。Jolaineは 銃撃した男たちの一人から、Grahamが指示に従わない限り、ロシア、アメリカ、中国などすべての国が彼の命を狙ってくると告げられる。Grahamに指示とは何か?問いつめながら車を運転するJolaineは、パトカーに止まるように命令される。

同じ夜、チャリティパーティに出席していた、人質救出を専門とする民間警備会社を経営するJonathanは親友のFBI長官Wolverineの使いだというMaryanneと名乗るFBI捜査官に話を聞いてほしいと頼まれる。
彼女によると今夜、核兵器の専門家Bernard Mitchellから救急事態の連絡を受け、捜査員が駆けつけてみると、たくさんの銃弾の痕と血痕、そして彼が殺されているのが発見される。また、妻と息子、子守女の3人が行方不明になっていた。彼女によるとこのような事態になった場合、ある番号に電話して指示を受けるようにProtocolを与えているが、彼らから連絡がないと話す。

FBIはBernardをChechen過激派の情報を探る二重スパイにしていた。
FBIはChechenの過激派にBernardが与える情報を信用させるために複雑なコードを打ち込まない限り作動しないように作り変えた核兵器の所在を教えていた。しかし、Bernardは、最近、FBIとの接触を断っていた。FBIは彼がChechen側に寝返った可能性を憂慮しはじめていた。さらに、最悪なことにBernardは核兵器を作動させるコードを手に入れたと確信していた。そして、そのことを知ったロシア情報部が核兵器を作動させないためにBernardを襲ったとFBIは確信していた。

そして、コードをBernardたちに教えたり、彼がコードを得たという情報をロシアに与えた内通者が政府機関にいると思われた。政府機関が信用できない今、FBIのWilverineはこのような事態に実績のあるJonathanに窮地に陥っていると思われる彼らを捜し、保護してほしいと依頼する。

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水戸黄門のようにストーリーがパターン化している。善人である少年が悪人にこれでもかというほどに虐待され、あわやというところで善人の味方Jonathanたちが現れ、かっこよく悪人をやっつけ、彼を救う。水戸黄門のように結果は分かっているので安心して楽しめる。

しかし、結果までいく途中で、はらはらドキドキさせてくれるので、このシリーズ、つい読んでしまう。
少年を守るJolaineという女性、なかなかカッコいい、と思っていたら途中からパワーダウン、Jonathanたちを引き立てるためにはしかたないのか?

★★★  448ページ(本の長さ)  Kindle版


Final Appeal by Lisa Scottoline

2014-08-17 09:22:12 | 読書感想

かって弁護士として活躍していたGraceは、娘が生まれたことをきっかけに弁護士の仕事を辞めていた。3年前に離婚してシングルマザーになったGraceは、娘が6歳になり通学するようになったのをきっかけに3ヶ月前から週3日、法律学校出たての若者たちに混じって、控訴裁判所の裁判長のLaw clerkとして働き始める。

ある日、Hightowerという黒人の若者が白人の姉妹を殺して死刑判決が出された事件が担当地区である彼女の勤める裁判所に控訴される。
酒に酔った17歳のHightowerは学校一の美少女とその10歳になる妹を殺してしまう。
世論とマスコミは町でも評判の姉妹を殺した少年に死刑を望んでいた。
少年が死刑判決を控訴したことで、Graceの勤める控訴裁判所の前は控訴を棄却するよう求めるデモ隊であふれていた。

控訴審の裁判長のArmenはこの事件の補佐役として元法廷弁護士だったGraceを指名する。弁護士時代、彼女は経済事案を扱っていて、このような生死が決定されるような刑事裁判は始めてであり、戸惑い、拒否しようとするがArmenに説得されてしまう。

二人は、深夜遅くまで訴状を検討し、死刑は不相当であるという結論で一段落したとき、GraceはArmenに言い寄られ 一度は拒むが彼が明日にも妻と離婚するという言葉を信じ、以前から彼に好意を持っていた彼女は関係を持ってしまう。

翌朝7時半、彼女はArmenが自殺したという衝撃的な知らせを受ける。
Graceは数時間前まで一緒にいた男、今日、妻と離婚すると言った男が自殺したとは信じられなかった。
自殺に納得できない彼女は警察に自分の考えを話しに行くが、警察は、家に侵入した痕跡がないことや銃痕から、自殺と断定していた。

落胆して警察署を出てきた彼女は、上着のポケットに「今日が僕たちの愛の第一歩だ。愛しているよ」と書かれたArmenからのメモがあるのを発見する。その上着は二人が愛し合った日に着ていた上着だった。彼女はArmenは殺されたことを確信、自ら犯人を捜し出すことを決心する。

Graceは銃の所有者で自殺当日、離婚届けにサインする予定だった妻のSusanを容疑者として考える、またArmenが死んだことで裁判長になれたGalanterも怪しいと考える、彼はArmenが生きていたら裁判長になることなく定年を迎えるはずだった。

手がかりを求めてArmenの執務室の書類を調べていたGraceは、彼がGreg Armenという偽名を使って65万ドルの大金が預けられている匿名口座を持っていることやマンションを借りているのを発見する。この大金は何処から得たのか?収賄?彼はこの金に関係して殺されたのか?Graceは彼女がほとんどArmenについて知らないことに呆然とする。

そんな中、Graceに二人の男が近づいてくる。一人はフリーのレポーター、一人はFBI捜査官と称して、二人はそれぞれArmenは殺された可能性が高いと言いながら Graceに協力を求めてくる。

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児玉清さんの「寝ても覚めても本の虫」という本を薦められて読んでみた。行間からこの人は本当に本が好きなんだという思いが伝わってくる。
そんな彼がこの著者の本を紹介していたので、彼が推薦していた本とは違うが、以前この本を購入したのを思い出した、1995年のMWAのBest PB受賞作ということで。しかし、購入して読み始めたが途中で読むのをやめてしまった。アメリカの裁判になじみがない僕にとって延々と続くlaw Clerkたちのやりとりは退屈で途中で断念。
でも児玉さんが紹介している作品はかなりおもしろそうな作品。この作品も面白いかもしれないと思い再挑戦。

しかし・・・
死刑問題、人種問題、家族問題、裁判官の汚職等、欲張りすぎて物語のテンポが悪い。
最後にわかる犯人も欲張りすぎが高じて拍子抜けする。

でも この作品は彼女の2作目、児玉さんが紹介している作品「Moment of Truth」は7作目、作家として上手くなっているはず?紹介された本を読むか考慮中。

 ★★ 356ぺーじ(本の長さ)


 Stay Alive  by Simon Kernick

2014-08-10 08:44:10 | 読書感想

Amandaの不運、災難は父親と喧嘩して実家に泊まらずに予定を変更して自宅に帰って来たことから始まった。帰宅した彼女は出張で不在のはずの夫の車があるのを発見する。かねてから夫の浮気を疑っていた彼女は、自分の留守を知っている夫が浮気相手の女性を自宅に招き入れたと思い、二人と対決すべく寝室に向かう。そこで彼女は、二人の死体と血塗れのナイフを持ち目出帽をかぶった男に遭遇、いきなり襲われ殺されそうになるが、必死に逃走してかろうじて窮地を脱する。

犯行の手口から男はこの一年半、カップルの男女を襲い、女性に性的暴行を加えた後ナイフで二人を切り刻んで殺すという残虐な犯行を3件繰り返しているDiscipleと名乗る男と思われた。事件を担当した刑事Mike Boltは彼女が連続殺人犯と対峙した唯一の目撃者であることから犯人の手がかりを聞き出そうと意気込むが、逃げることに必死だった彼女は犯人について腕に入れ墨があったこと以外有力な情報を与えることができなかった。
BoltはDescipleが捕まるまで 彼女を警察の保護施設に置くことを主張するが 彼女はたいして情報を持っていない自分が狙われることはないと主張し、スコットランドの森に囲まれた住宅に引っ越す。

しかし、彼女の災難は終わってなかった。
事件から3週間、閑静な環境の中で 事件のショックから立ち直りかけていた彼女は、散歩の途中、3人組の男たちに銃を突きつけられ拉致されそうになる。しかし、一瞬の隙をついて彼女は男たちの拘束を逃れ川へと続く森の中に逃げる。彼女は彼らが何故自分を追いかけてくるのか、理由も分からぬままに自分の不運を呪いながらもひたすら逃げる。

叔父夫婦との楽しい川下りをしていた17歳のJessと10歳の妹Caseyの不運は Amandaが銃を持った男たちに追われて二人の前に現れたときにはじまった。
彼女が何者かわからないまま、彼女の言うままに男たちから逃れるために川にカヌーを漕ぎ出す。しかし、男たちの銃撃で叔父夫婦が殺され、JessとCaseyはカヌーを捨て対岸の森の中にAmandaとともに逃げ込む。それは男たちの執拗な追跡を受けることになっていくのだが。

Frank Keoghの不運は無能の配下を雇ったことを知ったときに始まった。Amandaが散歩に出たところを拉致するという簡単な仕事を無能な部下のために失敗、カヌーで川下りをしている家族を巻き込んだことから事態は最悪となっていく。彼は自分たちの顔を見られたことから家族とカヌー業者を殺す決断を下す。そして、その決断は彼に予想外の敵をこの追跡ゲームに加える結果になり、さらなる不運を招く。

Mike Boltの不運は4ヶ月前、Discipleの捜査責任者の刑事が事件解決のプレッシャーから心臓麻痺を起こし死亡し、彼が代わりに捜査責任者となったときに始まった。Discipleの残虐な犯行に世論は恐れ騒然とし、犯人を逮捕できない捜査当局の無能を非難し有能な捜査責任者を要求していた。Discipleは残虐なだけでなく頭も良く、殺害現場にDNAなどの証拠を残していかなかった。
しかしこの4件目の犯行で、彼ははじめて目撃者を作ったという事実にBoltは運がむいてきたと感じる。そして、彼の予想通りDiscipleはこの現場で致命的なミスを犯し BoltはDiscipleの逮捕に自信を深めていく。

そして、Boltは森で繰り広げられている追跡劇に何時気づくのか?不運を幸運に変えるのは逃げる女性たちか、それとも追うKeoghか。どちらも自分たちの幸運を信じて森の中を駈ける。

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武装した男達から必死で森の中を逃げる女性と少女、逃げきったと思ってほっと一息しながら耳を澄ます 静寂、しかし、バキバキと枝を踏む音がしてあわててまた逃げる。そして身を潜める。この緊張した逃亡についての描写力がうまい・・息もつかせない展開であっと言う間に読み切った。
MWA賞を取ったある作品と設定に似ている部分があるなぁと思ったが・・とんでもない展開になって・・読みごたえ十分。

Amandaという女性は魅力的。窮地に立たされても的確な判断と行動で危地を脱っしていく。
 最初は彼女をつけねらっているのは現場を目撃されたDiscipleかと思ったがなぜか4人組の男達。なぜ男達が彼女を狙っているのか?理由がなかなか明らかにならないのも読むペースを早める。

Amandaと一緒に逃げている姉妹もたくましい。捕まっても、瞬時の隙をついて相手の拘束を逃れてまた行方をくらます。両親が死んだために叔父夫婦に引き取られたCaceyを守ることが自分の使命だと信じて行動するJessとその姉を信頼していたずらにパニックに陥らないCaceyの姉妹愛は微笑ましい。

女性たちのナイトとして現れるのが、あの「Siege」という作品に登場したScope,あいかわらずかっこいい!また、他の作品で登場することを期待。

Kindle版  ★★★★   354ページ(本の長さ)  986円


 


2nd Chance(Women's Murder Club) by James Patterson

2014-07-27 09:39:15 | 読書感想

3ヶ月前、連続殺人事件を解決した後、精神的落ち込みから立ち直るため現場を離れていたLindsayは黒人居住区の教会で起こった銃乱射の連絡を受けて現場に復帰することを決意する。
銃の乱射はちょうど聖歌隊の子供達が教会から出てきたときに起こり、多くの子供達が逃げまどう中、11歳の黒人少女Tasha Catchingsが胸に銃弾を受けて死亡する。
現場に赴いたLindsayは、教会の壁に穿たれた無数の銃弾の痕、ステンドグラスの破壊の様を見て、犠牲者が一人だけだったことに意外性を感じる。

近所の聞き込みに回ったLindsayは Bernardという8歳の少年から犯人はドアに双頭のライオンの絵のステッカーが貼ってある白い車に乗っていたという証言を得る。

署に戻ったLindsayは署長のMercerから黒人の教会に対する襲撃は、人種差別主義者(Hate Group)による犯行の可能性が高く、市長も世間が騒然とすることを懸念しており、次の事件が起きる前に犯人を逮捕するように要求される。

そんな中、サンフランシスコ・クロニコルの犯罪担当の主任のCindyが会いたいと連絡してくる。
Lindsayは以前の事件を契機に女性に関する犯罪を独自に捜査する組織、Women's Murder Clubを発足させていた。メンバーは新聞記者のCindy,検察官補Jill,検視長Claire、そしてLindsayの4人で構成されていた。

Lindsayと会ったCindyは この犯人の仕業と思われる事件が、もう一件起きていると話す。2日前、オークランド市で高齢の黒人女性が電気コードで首を吊って死んでいるのが発見される。自殺と思われたが検死の結果、女性の指の爪から殺人犯のものと思われる皮膚が検出され殺害されたことがわかる。電気コードは首にしっかり食い込むように細工されており、犯人は被害者を縛り首の私刑にかけたようにみえた。Cindyは人種差別主義者の同一犯だと断言していた。

Cindyの情報が気になりオークランドの現場の検分に行ったLindsayは被害者が吊り下げられていた部屋の壁に双頭のライオンの絵が描かれているのを発見、二つの事件は同一犯によるものであると確信する。

そんな中、少女の検死を行ったClaireから電話がある。少女は胸を2度撃たれており、たまたま流れ弾に中ったのではなく、乱射は少女を殺すために意図的に行われたものだった。

そして CindyとLindsayはほぼ同時にHate Groupの中に双頭のライオンをシンボルにした白人の人種差別主義者グループの存在を突きとめる。Cindyの新聞社の資料によると双頭のライオンはキマイラと呼ばれ、不敗の獣とされていた。Lindsayは部下の刑事にキマイラをシンボルにしているHate Groupの捜査を命じる。

また、二人の被害者にはどちらも身内に警察官がいたことがわかる。

犯人の動機は警官への恨みから、それともHate Crimeとよばれる人種差別主義者による犯行か?

Lindsayはメンバーの会合を開き、捜査関係者や世間がHate Groupの仕業と考えているが、彼女はHate Groupの手口を真似た個人の犯行であると考えていると話し、メンバーに捜査の協力を求める。

そんな中、第3の黒人の犠牲者が出てLindsayは捜査責任者として窮地に追い込まれていく。

・・・正確にはHate Group(特定の人種、国、宗教などに対する偏見、差別憎悪を持つ団体)と人種差別主義者は意味が一致しませんが 分かりやすくするためにあえて同一の意味として扱いました。


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Women's Murder Club、殺人事件を解決するための集まりか と思っていたが、2巻目になって、そればかりではなく、メンバー同士の、お互いの喜び、悲しみを共有していく心の繋がり、結びつきも強く感じられた。ひとりが落ち込んでいると皆が駆けつけてその悲しみを共有し彼女に孤立感を抱かせない。仲間って良いなぁと思わせる。

また、犯人を追いつめていく過程も前回、Lindsay 一人で捜査を進めていく感じがしたが、今回はCindyがオークランドの殺人事件の情報を教えたように、チームワークを発揮して事件を解決していく。Women's Murder Clubの名にふさわしいストーリーになってきた。
今後もこの展開を期待。

★★★★  本の長さ 410ページ Kindle版  ¥794


 


Into the Dark by Alison Gaylin

2014-07-09 13:38:28 | 読書感想

失踪人捜査を専門とする私立探偵Brenna Spectorは助手のTrentに言われ、今度調査することになるLura Belleと言う女性のパソコンに映し出された映像を見ていた。Lulaはバックからの照明で顔を判別することができず、ヌードと思われるシルエットがビデオの中で動いていた。
Lulaはperformance artistと称し、Webで自らのビデオを有料で公開していた。彼女はヨガのようなポーズを取りながら、南部訛のハスキーボイスで視ている者に自らの少女時代の思い出を話していた。Trentをはじめ多くの男が彼女の魅力に引かれ 彼女のサイトは盛況を呈していた。しかし、3ヶ月前に彼女は、突然、Webのサイトを閉鎖して消息を絶っていた。

自分が見聞きしたことはすべて記憶する能力を持つBrenna は Lulaが何気なくした仕草に、2ヶ月前に娘のMayaとナイアガラの滝を見物に行ったとき、同じ仕草をした女性がいたことを思い出す。男と一緒にいた20代と思われる美しい女性はとても悲しそうな目をしていて、死にたいと思っているように見えた。

その女性とLulaが同一人物か判断できないものの、BrennaはLulaに興味を引かれるが、依頼人の名前がErrol Ludlowと分かるとこの仕事を断ることを決心する。彼女は独立する前彼の事務所で働いていたが、その間、彼の配慮のなさで4度も生命の危険に会っていた。

しかし、映像を見続けていた彼女は Lulaが子供の頃の思い出としてセメントミキサーの歌について話していることに衝撃を受ける。その歌はBrennaと彼女の父親しか知り得ないはずの歌だった。どうして Lulaはこの歌を知っているのか?興味を持ったBrennaはこの仕事を引き受けることにする。

Brennaは依頼人のErrolと会って、真の依頼人がGary Freemanというハリウッドで有名な少女専門の大物プロデュウサーであることを突きとめる。

Garyは、Lulaの依頼でWebに有料サイトを立ち上げたことは認めたが、彼女との連絡はE-mailで行っており彼女と会ったことはなく、何処に住んでいるかわからない、とBrennaに告げる。

Garyは、Webで得た収入をLulaに送っていたが、Lulaが送り先に指定した私書箱はBrennaが子供時代を過ごした町だった。
彼女は伝てを利用して私書箱の設置者を突き止めるが、設置者はLulaではなくRobin Tannenbaumという男だった。そして、RobinもLulaとほぼ同じ時期に消息不明になっていることがわかる。また、彼の部屋にはBrennaについて書かれた本が残されており、さらに彼のPCには幼いBrennaと姉Cleaが一緒に映っている子供時代の写真が保管されていた。

BrennaはRobinの母親から彼は映画学校に行っていたことがあると聞き、Webに流されていたLulaの映像は彼が撮っていたと推測する。

Brennaは Lulaが行方不明になっている姉ではという想いが心の中で徐々に膨らんでいくのを感じる。一刻も早く、二人の行方を突き止めることが 長年、Brennaの重荷になっている姉の消息を掴めることになると信じ彼女は捜査を進めていく。

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ひとつの手がかりが次の手がかりへとつながり、読むスピードをゆるめない。ただ、一つの手がかりを発見する度にBrennaのそれに関連した回想シーンが入り込んできて読んでる僕を混乱させる。
ミステリーとしては必須かもしれないが、単なる人探しの調査のはずが殺人事件が起こり、Brennnaたちも命の危険にさらされるなど、物語も次第に緊迫感を増していく。

また、最後の最後まで、Lula BelleがBrennaの姉であるかどうか曖昧にしたままでストーリーが進むので、Lulaが姉でハッピーエンデングの終わりになるのか?ミステリー小説なのだから、うまく理由づけして他の終わり方をするのか?どちらも可能性がありそうで最後まで興味が尽きることなく読めた。


読んでいて一番印象に残ったのは、Dinandraという若く美しい女性、男は皆彼女の魅力に一目惚れしてしまう。ここまで男に尽くす女性はいないのではと思うほど敬愛する男に対する彼女の献身的、無上の愛、一途さ・・ちょっとほろりとしてしまう。

また、昔のすらりとした体型の面影が消えてしまったBrennaの高校時代の友人が彼女に情報を与える代わりに、高校時代の彼女の話、チアガールをしていた彼女がどんな服装をして、どれだけ男達にモテていたのかをBrennaに話をさせ、自分の輝いていた時代を懐かしがる。この気持ち分かる、思わずにやりとしてしまう。

384ページ ★★★  Kindle版 519円


1st to Die (Women's Murder Club) by James Patterson

2014-06-29 08:20:47 | 読書感想

サンフランシスコ市警殺人課でただ一人の女性警部Lindsay Boxerは健康診断を受けた医師から出勤前に立ち寄るように言われる。軽い気持ちで病院に立ち寄った彼女は血液中の赤血球が異常に少ない病気、再生不能性貧血(Negli's aplastic)の症状が診られると言われる。そして、このまま赤血球が減り続けると命の危険があり、輸血の必要性を医師から告げられる。自分がかなり深刻な病気にかかっていることに呆然とするLindsayに部下の刑事から高級ホテルでの殺人事件の報告が入る。

被害者は結婚式をあげたばかりの新郎新婦だった。新郎はナイフの一突きで殺されていたが新婦は三回も胸を刺され、さらに性的な虐待を受けていた。新婦の眠っているような死に顔を見たLindsayは、この先に待ち受けている夢と希望を新婦から奪った殺人犯に怒りを覚える。また 同僚の男達の事件に対する扱いの軽さに・・

殺人者は新郎にドアを開けさせるために用意した祝い用の高級シャンペーンと新郎の返り血がついた自らが着ていたタキシードを殺害現場に残していった。

殺人者がタキシードを着ていたことからLindsayは結婚式の参加者を疑い、一人一人調べていく。また、性犯罪者のデータベースで同じ手口の有無を調べる。しかし、めぼしい手がかりが得られないままに一週間が過ぎた土曜日、またも新婚のカップルが犠牲になる。

Lindsayは、被害者の女性の苦痛、痛み、無念に心から共感できるのは同じ女性だけであると確信し、女性が被害者となった事件を解決する女性だけの独自の組織の必要性を痛感する。Lindsayは長年の友である検視官Claireと、この事件を通して知り合った新聞記者Cindyをメンバーとして秘密の組織The Women's Murder Clubを結成する。そして、各々が職務で得た情報を持ち寄り検討し事件を解決していくことを提案する。

3人で会合を重ねる中、現場に残された遺留品から殺人犯は顎髭をつけた男であること、犯人と新婚カップルの接点として花嫁衣装を買った店の可能性が検討される。その可能性をもとにLindsayが捜査を進めた結果、殺された二人の新婦が同じ店で花嫁衣装を買ったことが分かる。また、その店の店員が顎髭の男を目撃していたことをつきとめる。

そんな中、同一犯と思われる犯行の知らせがLindsayに入る。しかし、犯行の行われた場所はカリフォルニア州から数千キロ離れたOhio州のCleveland。模倣犯では、と疑ったLindsayだったが 新婦に対する残虐な手口と式場の監視カメラに顎髭を生やした男が映っているのを発見し、同一犯だと確信する。
何故、殺人犯は州外に犯行を移したのかLindsayは、疑問を感じる。そして、殺された新婦が花嫁衣装を二人の被害者と別の店で買っていたことを聞き出したとき、Lindsayは探していた解決の糸口を見つけたと感じる。殺人犯は、今までの2件の被害者はブティックに来た客からランダムに選んでいたが、今回の被害者は殺人犯が新婦を知っていたために選ばれたとLindsayは推測する。やがて被害者である新婦がかってサンフランシスコに住んでいたことがわかる。そして、新婦の友人から彼女は当時付き合っていた恋人の性的虐待から逃れるためにサンフランシスコを去ったという事実を知る。次いで、渋る新婦の家族から彼女の恋人だった男の名前を聞き出す。

現場に残された遺留品、男の異常な性的嗜好、顔に生えている顎髭など、すべてがその男が犯人であることを示唆していた。

しかし、男は世間の誰もが知る有名人だった。警察上層部はLindsayに決定的な証拠が出るまで男との接触を禁じ、検事補のJillと密に連絡を取り合って慎重に捜査するように命令する。

この事件を担当しているJillは数年前、誰もが二の足を踏んでいた政界に暗躍する大物ブローカーを起訴し刑務所に送り込んだことで勇名を轟かせていた。
彼女はLindsayの持ち出した証拠では裁判を維持できないとしてLindsayの逮捕請求を拒否する。苛立つLindsayにJillはもっと決定的な証拠が見つけられない限り、彼に警察がマークしていることを知られてしまい、永遠に逮捕できないと話す。そして、彼が犯人であることにLindsayが絶対の自信を持っていることを確認すると 彼が犯人であるという前提で捜査をしていくことに合意する。そして起訴に持ち込むにはなにが足りないかを話しあう。LindsayはJillの口調に自分と同じ犯人に対する怒りを感じ、彼女をWomens Clubの仲間にすることを決断する。

Lindsayは、さらに悪化した血液の病いに苦しみながらも、この犯人を捕らえることが彼女の病気を克服することになると信じ、仲間とともに逮捕に向けて全力を挙げる。

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 ヒロインの難病、女性被害者に対する残虐な犯行、読んでいると気が重くなるようなストーリーだがさらさらと読める。
プロットも良くできていて、Lindsay達が一歩一歩犯人に近づいていく過程がテンポ良く描かれていて心地良い。しかし、犯人が特定されてからテンポががらりと変わって緊張感を持った激しい展開になり最後の最後まで息がつけないストーリーになっている。

Womens Clubという女性だけで独自に捜査を進めるという設定はおもしろい。4人が、お互いの得意とする分野を生かしあいながら犯人に肉薄していく。
要所要所で会合を開き、その結論を下にLindsayが捜査をしてほかのメンバーに結果を報告する。Lindsay以外の存在感がちょっと希薄。

いまも続いているシリーズなのでこれ以降各自の存在感が大きくなっていることを期待。

僕としてはこのプロットには無理があると思うがLindsayが作ったWomens Clubの魅力に引かれて☆4つ。

Kindle版 ¥ 797円     484ぺーじ(本の長さ)      ★★★★   


Now You See Me by S.J.Bolton

2014-06-15 12:46:23 | 読書感想

レイプ被害者に告訴するように説得するのに失敗して車に戻ってきたロンドン市警の刑事Lacey Flintは瀕死の女性が彼女の車にもたれているのを発見する。
女性は喉を切り裂かれ、腹部には凶器のナイフが突き刺さっていて、一言も発することもなくLaceyの腕の中で死亡する。
この事件を扱うことになったMIT(Major Investigation Team)の捜査責任者のDana Tullochは、殺人犯はLaceyを見て逃げたと考えて、Laceyが目撃者として狙われることを心配して、保護を目的に現在の部署からMITに彼女を異動させる。
刑事になって初めて遭遇した殺人事件に興味津々だったLaceyは捜査に加わることに興奮する。

そして、捜査本部から自宅に戻ったLaceyをEmma Bostonと名乗る女性が待ち受けていた。Emmaは自分は新聞記者であると言い、殺人犯からLaceyに宛てた手紙を持っていると話す。その中で殺人犯は自らを「切り裂きJack」の再来と称しLaceyによろしくというメッセージを残していた。
Laceyは子供の頃からシリアルキラーについて興味を持っていて、特に「切り裂きJack」は最大の関心事だった。

Laceyは、殺人犯が自分の名前を知っていること、「切り裂きJack」の再来と名乗っていることが気になってネットで今回の事件と切り裂きJackの事件を比較する。

その結果、被害者が売春婦と中流家庭の主婦という違いがあるものの犯行の手口、犯行日などが一致していることから彼女は捜査主任のDanaに手紙の件を報告する。本部に呼び戻された彼女は 犯行に使われたナイフの柄に、「切り裂きJack」の最初の犠牲者の名前(Polly)が刻まれていたことを教えられる。
また、Emmaが持ってきた手紙には被害者Geraldineの血痕がついていることが鑑識の調べで分かる。
Laceyは捜査本部の中で 一番「切り裂きJack(Ripper)」に詳しいということで捜査員から一目置かれることになる。
ただ、彼女は遊軍として捜査に加わっているDanaと同期の警部Joesburyが彼女に向ける目に言いようのない不安を感じる。

 そして、Ripperが第2の犯行を行った9月8日、捜査本部は緊張してその日を過ごしたが、何事もなく終わりそうに見えた。しかし、夜9時、LaceyはEmmaから事件に関して緊急に会いたいというメールを受け取る。指定された場所に赴いた彼女は、それが模倣犯が仕掛けた罠だと知る。

そこにはEmmaの自宅から盗まれた携帯電話と、かってRipperが警察に送りつけてきたことを真似たプラスティクバッグに入れられた女性の臓器が置かれていた。そして、翌日、死体に関する情報の電話がLaceyあてにあり、それに基づいて捜査した結果、子宮を切除された女性の死体が発見される。

しかし、模倣犯は致命的なミスをしていた。Emmaから盗み、犯行現場に残した携帯電話から模倣犯の指紋が検出され、強盗、傷害などで前科のある男だと判明する。
犯人が特定でき事件の解決は時間の問題だと思われたが・・

** 切り裂きJackの被害者
  
  8/31 Polly Nichols
  9/8   Annie  Chapman
    9 /30  Elizabeth  Stride

  9 / 30 Catharine  Eddowes
    11 / 9  Mary  Kelly

******************************************************************

最後の捻りがすごい、ここまで捻られているとは思わなかった。この本はLaceyシリーズの1作目、この本を読む前にすでに3、4作目を読んでいる。そのため、犯人についてはわかっていると思っていたが、こんなにプロットが複雑に作られていたのには驚いた。

この本は切り裂きジャックを題材にしているが この題材を扱っているミステリーは多いように思う。日本の推理作家が3億円事件を扱うのが多いように、英国の推理作家にとって一度は取り上げてみたい事件なのだろう。

このLaceyという女性刑事のキャラもユニーク。元路上生活者、元麻薬常習者。金曜日の夜は一夜の相手を求めてバーに向かう。意外と弱い?犯人が潜んでいるかもしれない現場に踏み込むときに震えを押さえることができない。しかし、警察官は人を助けるのが仕事だという信念を持っていて怯えながらも救出に向かう。眼が悪いわけではないのに眼鏡をかけ、化粧はせず地味なかっこうをしている。

読み終わった後に 彼女が人目を引かないように生活している理由がわかる。また、模倣犯がLaceyに固執したわけも。思わずジーンとなる。

395ページ   ★★★★

Kindle版 188円 (安かった!!)


   


Now You See Me by S.J.Bolton

2014-06-15 12:46:23 | 読書感想

レイプ被害者に告訴するように説得するのに失敗して車に戻ってきたロンドン市警の刑事Lacey Flintは瀕死の女性が彼女の車にもたれているのを発見する。
女性は喉を切り裂かれ、腹部には凶器のナイフが突き刺さっていて、一言も発することもなくLaceyの腕の中で死亡する。
この事件を扱うことになったMIT(Major Investigation Team)の捜査責任者のDana Tullochは、殺人犯はLaceyを見て逃げたと考えて、Laceyが目撃者として狙われることを心配して、保護を目的に現在の部署からMITに彼女を異動させる。
刑事になって初めて遭遇した殺人事件に興味津々だったLaceyは捜査に加わることに興奮する。

そして、捜査本部から自宅に戻ったLaceyをEmma Bostonと名乗る女性が待ち受けていた。Emmaは自分は新聞記者であると言い、殺人犯からLaceyに宛てた手紙を持っていると話す。その中で殺人犯は自らを「切り裂きJack」の再来と称しLaceyによろしくというメッセージを残していた。
Laceyは子供の頃からシリアルキラーについて興味を持っていて、特に「切り裂きJack」は最大の関心事だった。

Laceyは、殺人犯が自分の名前を知っていること、「切り裂きJack」の再来と名乗っていることが気になってネットで今回の事件と切り裂きJackの事件を比較する。

その結果、被害者が売春婦と中流家庭の主婦という違いがあるものの犯行の手口、犯行日などが一致していることから彼女は捜査主任のDanaに手紙の件を報告する。本部に呼び戻された彼女は 犯行に使われたナイフの柄に、「切り裂きJack」の最初の犠牲者の名前(Polly)が刻まれていたことを教えられる。
また、Emmaが持ってきた手紙には被害者Geraldineの血痕がついていることが鑑識の調べで分かる。
Laceyは捜査本部の中で 一番「切り裂きJack(Ripper)」に詳しいということで捜査員から一目置かれることになる。
ただ、彼女は遊軍として捜査に加わっているDanaと同期の警部Joesburyが彼女に向ける目に言いようのない不安を感じる。

 そして、Ripperが第2の犯行を行った9月8日、捜査本部は緊張してその日を過ごしたが、何事もなく終わりそうに見えた。しかし、夜9時、LaceyはEmmaから事件に関して緊急に会いたいというメールを受け取る。指定された場所に赴いた彼女は、それが模倣犯が仕掛けた罠だと知る。

そこにはEmmaの自宅から盗まれた携帯電話と、かってRipperが警察に送りつけてきたことを真似たプラスティクバッグに入れられた女性の臓器が置かれていた。そして、翌日、死体に関する情報の電話がLaceyあてにあり、それに基づいて捜査した結果、子宮を切除された女性の死体が発見される。

しかし、模倣犯は致命的なミスをしていた。Emmaから盗み、犯行現場に残した携帯電話から模倣犯の指紋が検出され、強盗、傷害などで前科のある男だと判明する。
犯人が特定でき事件の解決は時間の問題だと思われたが・・

** 切り裂きJackの被害者
  
  8/31 Polly Nichols
  9/8   Annie  Chapman
    9 /30  Elizabeth  Stride

  9 / 30 Catharine  Eddowes
    11 / 9  Mary  Kelly

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最後の捻りがすごい、ここまで捻られているとは思わなかった。この本はLaceyシリーズの1作目、この本を読む前にすでに3、4作目を読んでいる。そのため、犯人についてはわかっていると思っていたが、こんなにプロットが複雑に作られていたのには驚いた。

この本は切り裂きジャックを題材にしているが この題材を扱っているミステリーは多いように思う。日本の推理作家が3億円事件を扱うのが多いように、英国の推理作家にとって一度は取り上げてみたい事件なのだろう。

このLaceyという女性刑事のキャラもユニーク。元路上生活者、元麻薬常習者。金曜日の夜は一夜の相手を求めてバーに向かう。意外と弱い?犯人が潜んでいるかもしれない現場に踏み込むときに震えを押さえることができない。しかし、警察官は人を助けるのが仕事だという信念を持っていて怯えながらも救出に向かう。眼が悪いわけではないのに眼鏡をかけ、化粧はせず地味なかっこうをしている。

読み終わった後に 彼女が人目を引かないように生活している理由がわかる。また、模倣犯がLaceyに固執したわけも。思わずジーンとなる。

395ページ   ★★★★

Kindle版 188円 (安かった!!)


   


Ordinary Grace by William Kent Krueger

2014-06-08 11:55:22 | 読書感想

1961年、人々がまだ貧しかった時代、人々は若きケネディ大統領の登場に自分達の明るい未来を期待する。
しかし、世界大戦、朝鮮戦争と続いた戦争の後、Minnesota州New Bremanという小さな町の大人達は、ある者は肉体的、ある者は精神的な戦争の後遺症をひきずっていた。

だが家族の絆は強かった時代。家族はお互いを愛し、また支えあっていた。
13歳の少年Frankも家族を愛し、家族も彼を愛していた。
戦争に行く前は弁護士になろうとしていた父親Nathanは、戦争で悲惨な体験を得た後、牧師になる。そんな彼の変節に不満ながらも妻として夫の仕事を支える美しい母親Ruth。秋には音楽家の登竜門Juilliardに入学が決まっていて、Frankが悩んでいると相談に乗り励ましてくれる姉Ariel、人前では、どもる癖があるため引っ込み思案、いつも自分の後をついてくる、しかし、時には大人を振り向かせるほどのコメントをする弟Jake
そんな家族を愛し、好奇心旺盛で、いつも大人の会話を盗み聞きするFrank。

1961年、Minnesota州New Bremanの夏はFrankと同じ歳のBobby Coleの死で始まった。町の人々が少年の死を悼む中、Frankは川辺でホームレスの死体を発見する。死の意味がまだよく理解できないFrankは仲間の少年達に発見したときのことを得々と話す。

しかし、第3の死体が発見されたとき、彼は、死とは何か、神とは何かという問題に直面することになる。そして Frankはこれらの死を通して大人の残酷さ、狡さ、そして人種差別を知る。また、今まで当たり前のように考えていた家族の絆が崩れバラバラになっていく危険が彼を襲う。

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MWA賞最優秀作品

この本はミステリーと言うよりは文学的な要素が強いと思う。MWA賞として、僕には物足りない。もっと、ミステリー色が強いものが受賞して欲しい。

少年の目を通じての町の様子や人々の様子、当時のテレビ人気番組や人気俳優の名前が次々と語られ、60年代を知る者にとって懐かしさと共感を感じる。

たんたんと物語が進み退屈な本だと思っていたが、物語の終わりになって登場人物のひとり一人がそれぞれ印象深く残っていることに気づいた。登場人物の後日談が最後に語られているのだが、その人達がその後どういう風に生きていったかそれぞれの性格を思い浮かべながら読んでいるうちにしんみりとしてしまった。

また このタイトル Ordinary Grace も納得。

308ページ Kindle版 ★★★