気軽に洋書ミステリー

家にいてもすることがないおじさんは考えました。このままではボケる。そうだ!好きなミステリーを英語で読もう!英語力???

 Lost Tomorrows by Matt Coyle

2021-08-22 09:24:30 | 読書感想

2020 PWA  Best Novel

14年前、Santa Barbara警察のパトロール警官Rick Cahillの妻が海岸で殺されているのが発見される。犯行時刻のアリバイがないことで、彼は妻殺しの疑いで逮捕されるが、検事によって証拠不十分で釈放される。しかし、警察官の同僚は皆、彼の有罪を信じていて警察に対する市民の信頼を傷つけたとして彼を敵視し、彼は警察を首になる。

そして今、San Diegoで私立探偵を営んでいるRickのもとにKrista Landinghamの葬儀の知らせが届く。14年前の警官時代、彼女は彼のパトロールのパートナーで指導教官だった、また彼の妻が殺された犯行時刻、ベッドを共にしていた女性でもあった。彼女には夫がおり、自分も不倫、彼女に迷惑をかけないためにも彼は自分のアリバイを主張することはできなかった。以来、妻に対する自責の念から彼女との連絡は絶っていた。ネットのニュースによるとKrista は深夜通りにいたところ轢き逃げに遭い死亡、警察は逃げた車から犯人を特定しようとしていた。

葬儀に参列した後、彼はKristaの妹Leahに会う。Leahは、深夜2時にKristaが通りに出ていることはあり得ないと主張し、これは単なる轢き逃げ事件ではなく殺人事件だと断言して彼に捜査を依頼する。

捜査を始めたRickは、彼女のPCや自宅に保管していた捜査資料が紛失しているなど轢き逃げ事件では証明できない事実を発見する。さらにKristaが死亡する1週間前から迷宮入りとなっていた彼の妻殺しの事件の捜査を再開していたことを知る。何故、今になって?何か手がかりを見つけたのか?彼女の轢き逃げ犯人と妻殺しの再捜査とは関連があるのか?彼は事件の真相を求めて捜査を進めていく。

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私立探偵Rick Cahillのシリーズの6作目、他の作品を読んでないので雑な判断になるかもしれないが、このキャラクターはあまり好きではない。一人称の文体は探偵小説らしくて良いし、Rickの捜査のポイントを見極める能力は感心させられる。自分を妻殺しの男として敵視して向かってくる男には、容赦なくやり返す、過去のしがらみに絡め取られて生きる彼の唯一の生きがいは、嘘や偏見によって隠されている真実への探求というのもハードボイルドぽっくてカッコ良い。

ただ、いたる所で亡き妻との思い出が語られて、後悔と自責の念にかられている様子なので倫理に反した行為はしないだろうと思っていたら...

妻を殺した奴は俺の手でというハードボイルド小説によく見られるキャラクターと思って読み進めていたら...

ありゃ!と思う行動!ハードボイルドに生きようぜ、Rick!と呼びかけたくなった。

E-book(Kindle版)★★★ 368ページ 2019年出版 


Fatal Defence by Larry A Winters

2021-07-22 14:28:51 | 読書感想

ペンシルベニア州、Philadelphiaの 検事Jessie Blackが、法学生の夏期インターンの採用面接を行なっている場所に少女が乱入してくる。少女は彼女が検事であることを確認すると父親が女に殺されたが、警察は女を罰することなく釈放したと主張し、女を逮捕して刑務所に収監して欲しいと訴える。人を殺して罪に問われないことはあり得ないと思いながらも少女の話を聴いていたJessieは少女の話している事件が今、マスコミなどで話題になっている事件であることを知る。1か月前、Brooke Rainesは交際中の市会議員のCorbin KeeleyのDVに耐えかね、市内の食堂で別れ話を告げ、その場を去る。激高したCorbinは殺してやると叫びながら彼女を追いかけ、身の危険を感じた彼女は銃で男を殺した。事件はマスコミに大きく取り上げられていて、マスコミは被害者のCorbinは3年前、当時結婚していた女性にもDVを行っていた証拠写真を載せる。そして、Brookeがカッとした彼の暴力から身を守るために銃で彼を殺したのは当然の行為だという趣旨の記事を連日掲載し、女性の行為を称賛していた。警察もBrookeの行為は正当防衛である認めて彼女を罪に問わなかった。

Corbinの娘Carrieはマスコミも警察も母親へのDVを証拠にしているが、父親は母親へのDVを深く反省して、酒を断ち、感情をコントロールすることを学んで、他の女性に暴力を振るうことは絶対ないと話す。少女の公正な法執行が行われていないという非難と熱意とに心動かされて、Jessieは事件について調査してみることを約束する。

事件を担当した刑事にあった彼女は、刑事はBrookeの供述とCorbinのDVの過去から裏付けの捜査をすることなく彼女の正当防衛を認めたことを知り唖然とする。自ら事件現場に向かった彼女は事件当時、現場にいた複数の人からBrookeの供述と矛盾する証言を得る。彼女は少女の父親は変わったという証言が正しいと信じてBrookeを殺人罪で起訴する。その決断はBrooke をDV被害者と信じている世論を敵に回すことになってしまうが、JessieはBrookeが犯罪行為を犯したならばそれを見逃さず罪を問うのが検事としての自分の義務であるとして公判に臨む準備をしていく。

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法律用語が出てきて戸惑うけど法廷でのやり取りは緊張感があって面白かった。被告の行為が自分を守るための正当防衛ではなく故意の殺害だという絶対的な証拠や証人を見つけてこれで有罪になるかと思っていたら、被告の弁護士が有能で見事な反対尋問で被告の正当防衛を陪審員に印象づけていく。Jessieが、読む側も今度こそと有罪を立証できると思うのだが、どうしても、被害者には女性に暴力を振るった過去があり、Jessieが今は暴力的でないと陪審員に立証しようとするのだが、被害者が妻に暴力を振るったときの写真がマスコミに掲載されて世論も被告の正当防衛を支持しているので、反証するのがなかなかうまくいかない。彼女の恋人の元刑事が自分が扱った事件に似たような事件があったことを思い出し、事件の関連性を調べていくのを早くしろと叫びたくなる。

犯人や事件の背景などはすぐに分かるので、恋人の助力を得ながらJessieがいかにこの背景を突き止めていくのか、その過程がワクワク感があって面白かった。

Jessie Blackの性格も魅力的。世論やマスコミが被告人に同情的で被告人を告発する側に立つ証人に対して嫌がらせなどで彼等が傷つくことがないよう思いやって証人として裁判に呼ばないことにする態度など、彼女の法廷で証言する人たちへの思いやる性格が好ましい。

 

E-book(Kindle版)★★★★ 338ページ 2017年出版 kindle読み放題(または553円)


The Puppet Show by M.W.Craven

2021-03-21 12:49:43 | 読書感想

CWA Gold Dagger Award 2019

イングランドのCumbria州に散在するストーンサークルで老人が滅多刺しにされた後焼き殺される事件が立て続けに3件起こる。犯人は現場に何の手がかりも残さない。型通りの捜査では駄目だと感じた地元の捜査本部はSCAS(the Serious Crime Analysis Section)、 連続殺人犯やレイプ犯などの重犯罪について動機や犯人像を調べその情報を捜査員に与えて捜査をサポートする部署、に捜査の支援を依頼する。

3番目の被害者の断層写真を検証していたSCASのTilly Bradshawは検死の時には発見できなかった死体に刻まれた5、Washington Poeという文字を発見する。

SCASの警部Washington Poeは1年前の誘拐事件で致命的な捜査ミスを犯し、以来停職処分を受けていた。犯人は何故彼の名前を刻んだのか?Poeが5番目の犠牲者であるという殺害予告なのか?

SCAS部長はPoeを警部から巡査部長に降格した上でPoeの停職処分を解除しStephanie Flynn警部の下でこの事件についてプロファイリングするよう命令する。Poeは捜査資料から3人の被害者が裕福で社会的地位がある高齢の男性であることを知り、自分と彼らの共通性を思い浮かべることができない。しかし、自分が5番目に狙われる可能性を考え、部で最優秀な調査、分析能力を持つTilly Bradshawを助手にして犯人に迫ろうとする、16歳で大学の学位を取得している彼女の情報収集能力の高さに頼りながらも、融通が効かず言われたことを鵜呑みにする彼女の世間知らずさに戸惑いながら...

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何気なく読んでしまう部分にさりげなくプロットが散りばめられていてよく考えられたストーリーだと感心。事件も残酷だけど、事件の背景も残酷、読んだ後も重苦しい感じが残る。

Washington Poeというキャラクターで思い浮かんだのがその男凶暴につきという言葉。正義のためならあらゆる手段を尽くす、証人が何か隠し事していると感じると、脅し付けてでも隠し事を白状させる。上司の意見や警告を無視して、独断で捜査していく、上の人間と折衝しなければならないFlynn警部は大変そうだ。酒場で女性にしつこく絡む男など社会的弱者に対するいじめを見ると凶暴性が現れる、身分を明かしてやめるように説得する前に腕力を行使して男達を沈黙させた後に身分を明かす。ただ捜査手腕は抜群、事件での被害者に対する分析力、犯人像の分析は明解で説得力があリ、ひとつの発見が次の発見へとテンポ良くつながっていく展開は読んでいて心地良い。ポーが最後までこだわった問題、何故、犯人は自分の名前を被害者の胸に刻んだのか、最後に明かされるその深い意味に納得。

 

E-book(Kindle版)★★★★ 335ページ 2018年出版 136円(2021年3月現在)


The Last Place You Look by Kristen Lepionka

2021-03-07 11:12:48 | 読書感想

2018 winner of PWA for Best First P. I novel

オハイオ州の州都コロンバスに隣接する町、Belmont市

15年前 17歳のSarah Cookの両親Elaine CookGarrett Cookが自宅で刺殺される事件が起きる。使用された凶器であるハンティングナイフがSarahの恋人Brad Stockton(当時20歳)の車のトランクからSarahの衣服に包まれて発見されたことから彼が逮捕される。Sarahは事件後、行方不明になっているが、検察は彼女も両親と同じように殺されて何処かに埋められたと主張し、裁判でBrad Stocktonの死刑が確定する。

今、2ヶ月後に彼の死刑執行が行われることが告知された時、私立探偵Roxane Wearyの事務所にBradの妹Danielle Stocktonがやって来る。Danielleは、事件後、行方不明になっていているSarahの姿を2週間前にBelmontで見かけたと話し、彼女を探し出して欲しいとRoxane Wearyに依頼する。

 

Roxaneは、ここ9か月の間、警察関係者の誰からも敬愛され、彼女も敬愛していた名刑事と云われていた父親Frank Wearyの殉職に動揺して酒浸りの生活をしていて、ほとんど仕事はしていなかった。しかし、は淋しくなってきた懐具合と15年間兄の無実を信じているDanielleの熱意にうたれて彼女は依頼を受ける。

彼女は恋人でアーティストでもあるCatherine WalshにDanielleの情報をもとに現在のSarahの似顔絵を描いてもらい、その似顔絵を見せながらDanielleがSarahを見かけたという場所の近隣一帯に聞き込みをかける。その結果、Danielleが見かけたという女性は別人の可能性が高いことがわかる。また Danielleと一緒にいてSarahを見たはずだというBradの友達だったKenny BrayfieldもDanielleの見間違いだと指摘する。

KennyやBradの弁護士の調査員だった男もSarahは殺されたと確信していた。しかし、当時のBradを知る彼らは皆、彼がそのような犯罪を起こしたことに疑念を抱いていた。刑務所でBradに面会した彼女もまた彼の無実を信じ始める。

Roxaneは警察は早々に彼を犯人と決めつけたため、他に犯人がいる可能性をまったく考えなかったと確信する。彼女は、当時、同じようにハンティングナイフを使った殺人事件がこの地域で起こってないかデータベースで調べ、Cook夫妻殺害事件の前の年にBelmont在住のMallory Evance という18歳の女性がナイフで刺されて殺された未解決事件があったことを発見する。行方不明になっているSarah17歳と同世代の女性が同じ手口で殺されていることに彼女は興奮する。2つの事件はつながっていると感じた彼女は、詳しく事件の内容を調べようとするが、事件の捜査主任が父親のFrank Wearyであったことを知る。彼女は父親が几帳面に書き残していた捜査日誌を参考にしてこの事件を調べていく。

やがて彼女は、犯行に使われたのがハンティングナイフという以外2つの事件を結びつけるものは彼女の直観しかないことに気づく。Mallory の遺体は森に埋められて隠されていた、Cook夫妻の遺体は隠されることなく現場に放置されていて同一犯とは思えない。2つの事件が本当に関連があるのか悩む彼女に、父親の相棒だったTomは、捜査に直観は必要だと父親が言っていたと話し、彼女の捜査方法は父親に似ていると話す。彼女は、その言葉に勇気づけられ、Bradを死刑から救う道は、父親が成し遂げなかったMallory 殺害の犯人を突き止めることだと信じて、2つの事件の接点を求めてMallory の関係者と会い、犯人に迫ろうとする。

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死刑執行まで2か月、誘拐小説もそうだけど、こういう時間との勝負のストーリーはハラハラドキドキさせてくれるので僕の好きなジャンル。ただ、この本も執行の期日が迫るにつれ緊張感が上がっていくのがと思ったけど、あまりそういう展開にはならなかった。しかし、やっと突き止めた真相にぐっと盛り上がっていく展開は読み応えがあった。特に印象に残ったのはヒロインの私生活を含めた個性。

ヒロインの行動を見て、頭に浮かんだのは昔、角川映画の金田一耕助シリーズに出てきた警部、新しい事実が発見されると「よし、分かった!犯人はアイツだ!!」と直ぐに犯人を特定してしまう早とちりの警部、難事件による胃の痛みを軽減しようと常に胃薬を飲んでいる警部、胃薬をアルコールに変えると我らがヒロインになるというのは言い過ぎ?被害者との繋がりがあるのはこの人物だと思い込むと一直線、その男が犯人と決め込んで捜査を進めていく、誰かと協力して行くなら良いが1人で犯人と思しき人物に接近していくのでヒヤヒヤの連続。せっかく、殉職した父親の相棒だった刑事Tom Heitkerの助けを得られるのに、父親から娘を見守って欲しいと頼まれたと彼に告げられ、その言葉が父親から自分は半人前だと指摘されたと感じて、誰に頼らなくても仕事ができることを見せようと1人で奮闘する。

また、父親ゆずりの酒好きの彼女、聴き込み先で酒を勧められるとつい、グビリ、グビリと飲み過ぎて、聴き込みに来た目的を忘れてしまったリ、警察の捜査状況を調べようと110番通報した時、名前を聞かれると恋敵の名前を告げるなど、ハチャメチャな性格が魅力的。

このシリーズの次の本What you want to seeもおすすめです。

Kindle版 ★★★★ 323ページ 2017年初版 


Home Before Dark by Riley Sager

2021-02-21 13:41:12 | 読書感想

EwanとJess Holt夫妻は娘Maggie の子育てのため、そして作家志望の夫の創作活動を支援するため、Jessの祖父の遺産でアパートから一戸建ての家に引っ越す決意をする。不動産屋に案内された邸宅は、Vermont州のBartleby郊外にある住民からBanebery Hallと呼ばれている邸宅。周囲を3メートルの塀で囲った広大な敷地に建つ3階建の古い豪邸。どう見ても彼等が考えていた予算の倍以上の価値がある邸宅、訝る彼等に不動産屋は、この物件が訳あり物件であることを伝える。この家の代々の所有者に悲劇的な出来事が起きていて、近隣住民からこの家は悪霊が棲み付いている家と言われ、買い手がつかないため彼等でも買えるほど売値が格安に設定されていた。夫妻は、念願の子供部屋や書斎、豪華な家具があることに惹かれて、過去に起きた出来事は気にしないし調べないことと2人で約束し、その家を購入する。

しかし、家に引っ越してくると、消したはずのシャンデリアが点灯していたり、誰もいない部屋でレコードが鳴っていたりする不可解な現象が起こる。さらに、夜な夜な娘の寝室にやってくる娘にしか見えない幽霊、娘が幽霊のせいだと主張する屋内を徘徊する物音。身の危険を感じた彼らは20日後、身一つでその家から逃げ出す。

作家志望のEwanはその邸宅の恐怖体験を実話小説として出版する。彼が実話だと言い、実際に起こったことを書き記したと主張する小説は大ベストセラーとなる。

25年後、古い家のリフォームの仕事をするMaggie Holtは父親が亡くなりBanebery Hallを相続する、彼女は父親が書いた小説の中で幽霊が見え、幽霊に怯える娘と描かれていて、多くの人が彼女をそのように見ていることに苛立ちながら半生を過ごしてきた。彼女は、幽霊や怪奇現象などは信じていなかった。豪邸に戻った彼女は、父親が書いた小説は真実とは認めず、なぜ、一家は慌ただしく家を去ったのか真相を探ろうとする。だが、家に戻った彼女は、小説に書かれていた怪奇現象に遭遇、父親は書いたことは実際に起こったこと、幽霊など存在しないという確信が揺らぎ彼女は不安にかられる。

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玄関や窓の鍵はしっかり閉めてあり外部からの侵入はありえない状況で、誰も居ない部屋でレコードが鳴り出したり、シャンデリアが突然点灯していたり、まるで密室ミステリーのよう、さらには娘には3人の幽霊が付きまとっている現象をどう説明してくれるのか、手品の種明かしを待つ気分で楽しく読めた。

そしてもうひとつの謎、何故、突然、両親は家を去ったのか?物語中盤からある程度、どういう結末になるか予測していたのだけど、見事外れ!、すごい捻りがあって面白かった。

 

Kindle版 ★★★★ 340ページ 2020年出版 130円(2021年2月)


Never Look Back by Mary Burton

2020-12-27 11:28:44 | 読書感想

TBI(テネシー州犯罪捜査局)の捜査官のMelina Shepardは売春する女性達のための救護施設を運営している友人の聖職者Sara Beckettからここ2週間で2人の売春婦が行方不明になっていると相談を受ける。Melinaは売春婦と彼女達のヒモとの間でトラブルがあってヒモが2人を何処かに監禁したと推理。自ら売春婦のふりをして仲間の女性達から2人の情報を得ようと聴き込みを行う。その時、彼女を売春婦と勘違いした男の車が寄ってきて、拒否する彼女を力づくで車に拉致しようとする。突然の暴力にパニックになりながらも、彼女は持っていたナイフを男の腿に刺して反撃、男は逃走する。彼女は手錠やドラッグ入りの注射器などを装備した車や拉致しようとした時の手際の良さから男が常習者であると上司に警告し、ナイフについた男の血のDNA 検査をFBIに求める。

事件から一週間後、FBI捜査官Jerrod RamseyがTBIにやって来る。彼女がFBIに照会したDNAはわかっているだけで10人の売春婦を拉致、拷問して殺しているKey Killerと呼ばれる男のDNAと合致することが分かる。Ramseyは7年にわたってこの男の捜査に従事していた。

彼女はRamseyと、男や男の車を見かけた売春婦がいないか聴き込みを行ったり、逃走した車などの捜索を行うが犯人への手がかりを得ることはできずにいた。そんな時、彼女は上司から車の追突事故があった現場に向かうよう指示される。街路樹と追突し大破した車は16日前にカリフォルニア州San Diego で盗まれた車で、車の運転手は指紋を拭き取ってその場を去り、後部座席に6歳の少女Elena Sanchezが置き去りにされていた。そして、車のトランクからはもう1人のシリアルキラーの存在を確信させる物が発見される。彼女は、Ramsey の協力を得て、2つの連続殺人事件の捜査を進めていく。感情的にならず冷静に捜査をするべきだと考えながらも、彼女は保護者から見捨てられて怯えるElenaに会った時、言いようの無い感情の昂ぶりを覚える。やがて、少女を置き去りにした運転手の正体を突き止めた時、彼女は辛い彼女自身の過去の出来事と向き合わざるを得ない事態に追い込まれて行く。

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物語冒頭、いきなり殺人犯が登場して手際良く女性を拉致する場面から始まったと思ったら、拉致しようとした女性は潜入捜査官だったという展開に、一気に物語に引き込まれた。

数年にわたって若い女性を殺しているシリアルキラーの捜査の物語かと女思って読んでいると突然、他の連続殺人犯の捜査になって、あれ最初の事件の捜査はしないかと戸惑ってしまうが、最後でうまくまとめられていて面白く読めた。

BBと呼ばれる老獪な詐欺師のキャラクターは強烈。会う人々を悉く自分のペースに巻き込んで自分の思い通りに事を運んでしまおうとする口のうまさはすごい、Melina も最初は胡散臭い目で見ているが徐々に彼女の話に引き込まれていき彼女のペースに乗せられそうでヒヤヒヤする。でも彼女の求めるものが何かと分かると物悲しい気分になった。

E-book(Kindle版)★★★ 327ページ 2020年7月出版 Kindle読み放題(686円)

 


Dead End Girl by L.T.Vargus,Tim McBain

2020-12-06 12:28:54 | 読書感想

殺人、レイプ、人身売買などが多発する社会、Violet Darger はそのような犯罪から市民を守る一員になろうと思いFBI捜査官になる。しかし、捜査官になって殺人や誘拐事件などの捜査を担当すると考えていた彼女は、2年経つても、事件を担当することなく本部で他の捜査官が担当した事件の事務処理を行う日々に不満を感じていた。

そんなある日、ボーイフレンドで今は上司でもあるCal RyskampからOhio州のAthens郡で起こった猟奇連続殺人事件の捜査に向かうよう命令される。1年に一件殺人があるかないかというAthens郡で女性が3人続けざまに殺される事件が起きる。マスコミからTrash Bag Murders とかDoll Parts Murdersとか名付けられた犯人は、女性を拉致殺害した後、死体を切断してゴミ袋に入れて住宅街などの空き地に放置するという残虐な犯行を繰り返していた。凶悪な事件の捜査の経験がない地元の保安官事務所はFBIに捜査の協力を求める。

FBIは要請に応じてベテラン捜査官Victor Loshakを派遣するが、彼は他の捜査官と組むことを嫌い、1人で捜査することを好み、本部に捜査状況を報告してこないという評判を持っていた。今回も評判通り、本部に報告しないばかりでなく地元警察との連絡も絶っていた。事件の残虐さに地元住民とマスコミが騒然とする中、捜査状況が分からず困惑していたRyskampは、彼の捜査の補佐としてDargerを派遣することを決断する。

Dargerは、捜査状況の報告係という役割に不満を感じながらも初めての現場、連続殺人事件の捜査に向かうことに興奮する。現場に着いた彼女は、Loshakは体調が悪くほとんど寝込んでいる状況であることを発見し、ひとりで地元警察との捜査会議に参加し事件の捜査を行なっていく。

そして、Darger は捜査資料から犯人に拉致されたが監禁場所から逃げたという少女Sierra Petersという目撃者の存在を知る。犯人は現場に何の遺留品を残しておらず、彼女の目撃証言は重要だと思われた。しかし、捜査にあたる刑事達は少女がドラッグ常習者で常に警察とトラブルを起こしている非行少女であり、事情聴取のたびに供述内容を変えることから彼女が連続殺人犯に襲われたという証言を信用していなかった。Sierraと会ったDargerは、捜査官になる前にVictim SpecialistとしてFBIの被害者支援課にいた経験を生かして、警察官から嘘吐きと思われていることに苛立っているSierraをリラックスさせた状態にして、当時の状況を聞き出そうとする。そしてマスコミに公表していない事実を彼女が述べたことでSierraが連続殺人犯の手から逃れた唯一の女性であると確信する。しかし、更なる情報を得ようと意気込む彼女の前からSierra は突然行方をくらましてしまう、彼女の車と金を盗んで…

男はマスコミのニュースや警察官が集まる酒場で彼についての捜査の進展具合をチェックしていた。そして報道されるニュースの中に映る女性FBI捜査官に目を止める。男は、彼女が滞在するモーテルを突き止め監視し始める。彼を罠に嵌めて逮捕しようとしている警察の裏をかいて、彼女をターゲットの1人にしようと決意して…

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犯人の異常な行為についてなどストーリーの描写が細かすぎ、途中で読むのをやめたくなる。でも、最後まで読ませたのはヒロイン、Violet Dargerの魅力。初めての現場、初めての連続殺人犯の捜査ということで、共同捜査する地元警察との付き合い方が分からず刑事達から総スカンをくったり、被害者の遺族とのやり取りで重大なミスを犯し、自分は捜査官に向かないのではと落ち込む。そこから、なんとか立ち直って独自の視点から犯人に迫っていく過程は面白く読めた。

また、刑事達からは嘘つき呼ばわりされ、母親からは見捨てられ頼るべき人が誰もいないdead end girlと呼ばれる彼女の絶叫が心を打つ。This isn’t fair. I was doing good.I tried really hard.And then all this stuff happened. I give up.

E-book(Kindle版)★★★ 505ページ 2017年4月出版 Kindle読み放題


Fun & Games by Duane Swierczynski

2020-08-30 11:01:49 | 読書感想

2012 SHAMUS AWARDS BEST PAPERBACK ORIGINAL P.I. NOVEL

Los Angelesの Decker Canyon Road 。山腹に刻まれた数マイルも続くヘアピンカーブがドライバーに緊張感を与え続ける道路。運転を誤れば谷底に真っ逆さま。女はこの道路がお気に入りのドライブコースだった。危険なカーブを運転自慢のドライバーよりも速いスピードで通り抜けるスリル、タイヤが地面を捉えるグリップ感に魅せられていた。そして今、女は必死の形相で、いつも以上のスピードでその道路を運転していた。間近に迫る死から逃れようとして…

男は警察官だった3年前、自分のミスで捜査中の犯罪組織に、相棒の刑事とその家族を殺されてしまう。自らも何発も銃弾を受けるが男は生き残るという不運(?)にあう。

男は警察を辞め、金持ちが仕事やバカンスで自宅の豪邸を留守にする間、窃盗や火災などの被害に遭わないためその豪邸に住み込み管理する仕事をしていた。誰も訪れることがない豪邸の留守宅でバーボンを飲みながら自分が持ち込んだDVDの映画を大画面のテレビで観て、悔やんでも悔やみきれないあの日の出来事をバーボンで忘れ去る、彼にとって人と会わずに生活できる理想の仕事だった。

だが忌まわしい出来事が起きてから3年たったその日、新たな仕事先の豪邸に赴こうとした男は不運に見舞われる。到着した空港では彼のスーツケースが行方不明になり、依頼先の豪邸の指定された場所に玄関の鍵はなく、男は自ら窃盗犯のように豪邸への侵入を余儀なくされる。さらに屋内の見回りをしていた男は浴室に隠れていた若い美女に襲われ胸を刺される。

襲った女は男を彼女を狙うThe Accident Peopleという犯罪組織の一員だと思ったと云う。女は警察や政府内部にも情報網をもつその組織は事故死に見せかけて人を殺す凄腕の殺し屋の集団であると話す。

男は女はドラッグをやっているのではと考える、自分が組織からの攻撃で死体袋に入っているのを発見するまで。男が死んだと考えた組織が女を探している間、男は女を助けに向かうべきか、救助を求めて自分だけでもこの場を逃げ出し女を助けるのは警察に任せるべきか究極の決断を迫られる。

3年前、男は相棒を助けに向かうことによって、犯罪組織に相棒とその家族を殺されてしまうという過ちを犯していた。男は同じ失敗を繰り返すのではという不安から女を助けようとする行動を躊躇っていた。

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一気に読みたくなる面白さがある。

でも僕の期待していた終わり方ではなかったのが残念。爬虫類並みの脳と自称する男がもう少し現状打開のために頭を働かせてくれたら良かった…

対照的に、殺人を自殺や事故と見せるための舞台設定を考える秘密組織のリーダーの頭脳明晰なこと。予想外の男の出現に慌てることなく、即座に次なる殺人の 舞台設定(シナリオ)を考える決断の速さ、実行力は敵ながら天晴れという感じ。

きっちりと練り上がられた殺人計画が待ち受けてても、頑丈な肉体でピンチを強行突破していく男、最初から最後まで息つく暇なく攻防が繰り広げられいく。

男が守る女優、襲われてパニックになりながらも自分の身を自分で守ろうとする姿は格好良かった。

E-book(Kindle版)★★★★ 2011年6月出版 286ページ


Dark Sacred Night by Michael Connelly

2020-08-02 12:11:53 | 読書感想

LAPDの刑事Renée Ballardは、3年前、上司のセクハラを告発したため、強盗殺人課(RHD)からlate showと呼ばれる誰もが就きたくない夜間勤務に異動させられる。この日2度目のWatch Commander(夜間指令?)の出動命令で向かった事件現場から戻って事件の報告書を書いている時、Ballardは見知らぬ男が事件ファイルが入ったロッカーを漁っているのを目撃する。

男はHarry Boschと名乗る。元LAPDのRHD所属の刑事で今は退職してSan Fernando警察(SFPD)の非正規職員の刑事としてCold Caseの捜査をしていると話す。彼女は無断で事件ファイルを閲覧していたBoschに不信を感じる。彼が管轄外の署にやってきた目的を調べた彼女は、彼が9年前にこの管内で起こった未解決の強姦殺人事件を捜査していることを知る。9年前、売春相手を探していたDaisy Clayton という家出少女が 通りから拉致され、強姦されたうえ殺されてゴミ置き場に放置されているのがパトロール警官によって発見される。犯人は少女を殺した後、証拠隠滅を図り漂白液につけて少女の死体を洗い、爪を除去、衣服を持ち去って全裸で死体をゴミ置き場に捨てていた。担当した刑事は死体を洗うためにホテルのバスタブが使われたかと考え、近辺のホテルなどを聞き込んだが手がかりは全く掴めず、他に犯人に行きつく手段が見つからず事件はコールドケースとなっていた。

Ballardは、犯人の残酷さ、用意周到な犯行手口に怒りを覚え、自らもこの事件を捜査すると決意し、Boschに共同で捜査することを提案する。BallardはBoschが刑事部屋のファイルを漁っていたのは、事件当時のパトロール警官の職務質問の記録(shake card)だと推理していた。犯人による完璧な証拠隠滅で手がかりが皆無である中、Boschは膨大な数のshake cardの中に犯人と結びつく手がかりを探し出そうとしていた。彼はBallardの明晰な洞察力に感心し、共同捜査に同意する。Ballardは彼女の監視の中でBoschにshake cardを調べることを許容し、勤務時間前や出動要請のない暇な時間にshake cardを調べるときにBoschの同席を認める。

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よく映画などで大物俳優が共演するとき、監督はどちらも平等に見せ場や出演シーンを割り振る、俳優があちらの方が出番が多いとか、カッコ良く撮られていたと不満を持つことがないように。この小説を読んでいて、これもBoschとBallardの両主役のファンのどちらも失望させないように書かれていると思った。Ballardが好きなキャラクターの僕にはそこそこ楽しく読めたが、ミステリーを期待している人には物足りない展開だと思う。

相変わらずAcronym(短縮英語(?))が多いなと思って、MDC(Mobile Digital Computer)などネット検索していたら、他の人からも要望があったのかMichael Connellyのサイトに警察のAcronymの用語の一覧が掲載されていた。でもCode5、Code6などの説明がないな。もっとくわしく掲載してほしいな。

But we just got a B and E call …(p130より) B=burglary ?  E=???

BallardのことについてはLate Showという彼女が主役の小説があります。

E-book(Kindle版)★★☆ 438ページ 2018年10月出版


The Stranger Diaries by Elly Griffiths

2020-07-12 09:42:02 | 読書感想

2020年 MWA BEST NOVEL Winner

高校の英語教師Clare は、高校が10月の期末休みを利用して開設している成人向けの講座で小説作法の講義をしている。講義のテキストは彼女が伝記を書こうとしているヴィクトリア朝時代の怪奇小説作家Roland Montgomery Hollandの『Stranger』という短編小説。講義する場所は今は高校の一部として使われているが以前はR. M. Hollandが住んでいた邸宅、螺旋階段を昇った最上階には彼が使っていた書斎がそのままの状態で保存されている。生徒には立入禁止となっている書斎に上がるたびに彼女は研究する作家の邸宅で教鞭を取る幸運に感謝していた。

授業の休み時間、生徒が去った月曜日の午後の教室で彼女が行き詰まっている伝記やほぼ毎日書いている日記について考えている時教科主任のRickから電話がある。

Rickは彼女の同僚で親友のElla Elphickが昨夜殺されたと告げる。親友が事故で死んだのではなく殺されたという事態、彼女ともう会えないという事態が呑み込めず動転する彼女に、Rickは、この夏の教育研修の期間に彼がEllaと浮気したことを刑事たちには内緒にしてほしいと彼女に頼む。

事件の手がかりを求めてClareに会いに来た刑事Harbinderは、Ellaには付き合っていたボーイフレンドはいなかったか尋ねるが彼女は否定する。しかし、HarbinderはEllaのSNSに彼女がこの夏の教育研修合宿で起こったことについて後悔している記述をみつけClareの証言に疑問を持つ。さらに、Harbinderは犯人がEllaの死体のわきに『Stranger』からの引用と思われるメモを残していることに注目し、犯人はClareの身近な人物、もしくは彼女自身ではないかと推測する。

Clareは教育研修期間の出来事について再確認しようと日記を読み返すが、日記の余白に何者かが彼女に対してメッセージを書き残していることを発見する。人に触れられるはずのない日記を何者かに読まれて、書き込みがされていることに恐怖を感じた彼女はHarbinderに連絡する。そして、日記の提供を受けたHarbinderは殺害現場に残されたメモと日記に書かれたメッセージの筆跡は同一人物の物であることを突き止める。

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ゴシック小説は中盤まではゆったりとした展開で読者を焦らせて、一気に最後に盛り上がるとヒロインのClareが小説作法の授業で生徒に説明しているが、この小説もそのパターンを踏襲している。終盤までは殺人などの事件は起こるがClare母娘、Harbinderの3人の心情が印象に残り、殺人という残酷な事実が頭に思い浮かばないゆったりした展開。終盤になって次々と事実が明らかになり、一気に事態が緊迫していく展開は面白かった。

物語はClare母娘、刑事のHarbinderの3人の観点から同じ出来事が異なった視点で語られていく。3人が事件やお互いをどのように観ているのか、心情が細かく描かれているので3人のキャラクターに同調しやすい。ただ、時系列が前後するので混乱する時がある。

15歳の娘のGeorgiaのキャラクターが良い。母親にはそこらにいる同じ年頃の少女と変わらないと思わせて、実は魔女だという女性に惹かれ、殺された母親の親友のために降霊術を行なったりする。大学の公開講座で小説作法を学び、こっそりと小説を書いたりしている。親友が殺されたことで精神的に不安定になっている母親のことも心配している優しさがある。そして最後に魅せる名探偵ぶりも見事。

刑事のHarbinderも魅力的。Clareの日記に自分が小さいと書かれているのを読んで彼女が大きいのであって自分が小さいわけではないとムッとしている場面。校長が教師の仕事のハードさを主張するのを聞きながら刑事の方がもっと大変なんだと内面では反論しながらも、それは大変だと同情する素振りを見せるなど...

 

E-book(Kindle版)★★★★ 323ページ 2019年