内容紹介
小日向水道町にある、いちょうの大樹が看板の『銀杏堂』は、嶋村夫婦が二十五年に亘って切り盛りしてきた手習指南所。子を生せず、その家に出戻ることになった一人娘の萌は、隠居を決め込む父・承仙の跡を継ぎ、母・美津の手助けを得ながら筆子たちに読み書き算盤を教えることに。だが、親たちは女師匠と侮り、子供たちは反抗を繰り返す。彼らのことを思って為すことも、願い通りに届かない。そんなある日、手習所の前に捨てられていた赤ん坊をその胸に抱いた時、萌はその子を引き取る決心を固めるが……。子供たちに一対一で向き合い、寄り添う若き手習師匠の格闘の日々を、濃やかな筆致で鮮やかに描き出す珠玉の時代小説!
銀杏手ならい
捨てる神拾う神
呑んべ師匠
春の声
五十の手習い
目白坂の難
親ふたり
読書備忘録
萌・・・
そうだったのね・・・子どもができないからってたった3年で帰されて。
母、美津・・・
二度の流産んで諦めていたところ、門前の大銀杏の根方に置き去りにされていた赤ちゃん。
それが萌
そして萌も・・・
わが子のように慈しみ、育てられた萌もまた、猫みたいといわれた名前を付けた美弥をかわいがり、めでたしめでたし・・・と思いきやひと騒動!こんなに早くめでたしで終わるわけがないでしょう。
子どもだって子どもなりの人生ってもんがあるから、それぞれいろんなものを抱えている。
そこに女師匠の萌があれやこれやと親身になって奔走する。
江戸で流行った悪い風邪で父親を亡くし、母親はすっかり弱ってしまい気力なく臥せるばかり、そうなると長男の信平が稼ぎ頭にならなくてはならない、まだ十歳!
全部よかったけれど、この「五十の手習い」のお話が特によかった。
★★★★☆