つい先日行ったばかりの場所、というのが大きな落とし穴だったのだ。
行けば分かると思いこんでしまった。
駅の改札を出ると、目の前を走る都電の線路を渡り、ためらうことなく
右斜め方向へ歩き出した。確か、2,3分も行くと地下へ下りる入り口が
あるはずで……
ない。道を一本ずらしてみる。もう少し先のほうだったかと、さらに奥へ
進んでみる。やっぱりない。あれぇ、おかしいなあ。 この段階ではまだ
余裕の私。直接会場に電話して訊いてみよう。
電話番号案内に尋ねる(そう、呆れたことに地図はおろか連絡先すら
持ってこなかった阿呆もの)。しかし、登録がないのか、分かりませんと
言われる。
しょうがないなあ、交番で訊こう。だが、地下のライブハウスってやつは、
ビルの名前が分からないとお巡りさんにも探しようがないのよね。そして、
住所が不明ではそのビルの名前もわからない。
こうなったら街を行く人たちに訊くしかないと覚悟を決めて歩き出した。
バイク便のお兄さんとか、郵便配達のおじさんとか、宅配便のお姉さんとか、
可能性のある人たちに声をかけまくった。しかし、成果はゼロである。
どれだけマイナーな場所なんだ。
駅からはどんどん離れていき、気がつくと、自分のいる場所すらわからなく
なってしまった。慌てて、駅への道を尋ねてふりだしに戻る。かれこれ40分
以上は歩き回っているから、ライブはとっくに始まっているだろう。
もう帰ろうかな、チケットはもったいないけど、悪いのは私なんだから。
最後の最後に思ったこと。まさか、駅の反対側じゃないわよね。ダメもとで
回ってみたら、ありました。歩いてほんの2,3分。私の記憶は間違っては
いなかったのです。