「耳の日まつり」の会場へ向かうバス。乗客のほとんどが参加者だったに
違いない。車内は静かだが、その代わりあちらこちらで手話が飛び交っていた。
隣のシートに座った女性が 「あなたは健聴者? 耳の日まつりに参加する
の?」と手話で尋ねてきた。わぁ~困ったと思いつつ、知らん顔も出来ずに
うなずく。彼女はろう者ではあったが明瞭な発音をしながら手話を使ってくれた
ので何とか対話が成立した。
「基礎のコースが終わったところなのね。それにしては
あなたの手話下手過ぎよ」
遠慮のない人である。聞けば県の手話講師をしているというではないか。
名前を訊かれたので名札を見せようとしたら 「手話でやらなきゃ」と言われて
しまった。
「サークルには、ぜひお入りなさい。頭で考えていては上達しないの。
ろう者の間に入って肌で勉強するのが何より」
ぐいぐいと押し入るかのように、次々と畳みかけるかのように繰り出される
手話の嵐に、ひたすら圧倒されっぱなしの15分間。当たり前なんだけれど
「手話は言語」 を実感しました。