環境問題スペシャリスト 小澤徳太郎のブログ

「経済」 「社会」(福祉) 「環境」、不安の根っこは同じだ!

「将来不安」の解消こそ、政治の最大のターゲットだ

もし、“もしドラ”に触発されていなかったら、ドラッカーを誤解したままだった!

2010-12-25 14:55:44 | 社会/合意形成/アクター

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“もしドラ”に触発されて、12月12日、15日、17日の3回にわたって、8年前に読んだドラッカーの『ネクスト・ソサエティ』の中から私が疑問に思う個所と、共感/賛同できる個所を抜き出して皆さんに紹介しました。ドラッカーは日本のビジネス界に圧倒的な支持を得ていた偉大な経営学者ではありますが、私がこれまでに読んだドラッカーの作品は後にも先にもこの『ネクスト・ソサエティ』だけでした。17日のブログでは、『ネクスト・ソサエティ』を読んだまとめとして、次のように書きました。

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この「訳者あとがき」に次のようなメッセージがあります。

しかしいまや、経済が社会を規定するとの思想どころか、経済が経済を規定するとの理論からさえ脱却しなければならない。間もなくやってくるネクスト・ソサエティ(異質の次の社会)においては、経済が社会を変えるのではなく、社会が経済を変えるからである。

このメッセージこそ、ドラッカーが276ページの『ネクスト・ソサエティ』に込めたもっとも重要なメッセージだと思います。この点では私は100%ドラッカーに賛同します。しかし、私がそう考えるのは、環境問題への基本認識が不十分なドラッカーとは大きく違って、経済活動の拡大の目的外の結果の蓄積が今私たちが直面している「環境問題」であり、21世紀の市場経済システムを揺るがす最大の問題である、と考える「私の環境論」に基づくからです。 

ですから、ドラッカーが主張する「ネクスト・ソサエティ」はスウェーデンの国家ビジョンである「20世紀の福祉国家から21世紀の緑の福祉国家への転換」とは方向性が一致しますがドイツの政策の根底にある「エコロジー的近代化論」日本の政策の大前提である「持続的な経済成長」(小泉、安倍、福田、麻生の自民党政権、それに続く鳩山、菅の民主党政権)とは方向性が一致しません。 
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20世紀の「福祉国家」(旧スウェーデン・モデル)で強調された「自由」、「平等」、「機会均等」、「平和」、「安全」、「安心感」、「連帯感・協同」および「公正」など8つの主導価値は、21世紀の「緑の福祉国家」(新スウェーデン・モデル)においても引き継がれるべき重要な価値観です。

このブログ内の関連記事
緑の福祉国家3 スウェーデンが考える「持続可能な社会」(2007-01-13)

「大不況」、ドラッカーなら、ケインズなら、ではなくて、現在のスウェーデンに学んでみたら(2009-01-11)


2002年に『ネクスト・ソサエティ』を読んだ私の印象は、「21世紀の社会を議論する上で、環境問題に対するドラッカーの意識は極めて不十分」ということでした。そこで、今日は、ためしに、グーグルに「ドラッカーの環境問題に対する認識」と入力し、クリックしてみました。

すると、予期に反して、約470,000件がヒットしました。そして、大変驚いたことに、約470,000件最初の記事に、なんと「環境問題」は人類全体の問題であるとの共通認識なくしては効果なし・・・とあるではありませんか。この認識は「私の環境論」と見事なくらい一致します。そして、この記事の次の2番目の記事がなんと、私のブログ記事、“もしドラ”が思い出させてくれたドラッカーの「ネクスト・ソサエティ」でした。

約 474,000 件 (0.22 秒)
検索結果

「環境問題」は人類全体の問題であるとの共通認識なくしては効果なし ...
2010年11月1日 ... ドラッカーは、生態系に対する問題意識と政策は、国境を越えざるをえないという。危機にあるのは、人類の生存 ... 「環境の破壊は地球上いずこで行われようとも、人類全体の問題であり、人類全体に対する脅威であるとの共通の認識が ...
diamond.jp/articles/-/9913 - キャッシュ

“もしドラ”が思い出させてくれた、ドラッカーの「ネクスト・ソサエティ ...
2010年12月12日 ... この本に示されたドラッカーの「環境問題に対する基本認識」は、彼が主張する経営学の中では「ほとんど意識されていない」と断じてもよいのではないでしょうか。私の環境論では「環境問題」は、「市場経済が直面する21世紀最大の問題」 ...
blog.goo.ne.jp/.../e/619f8cd8aba33fc0d30582b5b156ae5c - キャッシュ


何だか、とても不思議な気がします。インターネットという無限とも思える空間で、2つの記事がバッタリ出会うとは! まったく信じがたい出来事です。一気にドラッカーとの垣根が取り払われ、濃霧が去ったような気持ちです。検索のキーワードとして別の言葉を入れて検索したり、別の検索エンジンを使っての検索では、このような奇跡は起こらなかったでしょう。

せっかくの与えられた機会ですから、検索の結果ヒットした「約470,000件」の中から、「ドラッカーの環境問題に対する認識」を示す次の記事を紹介します。

●「環境問題」は人類全体の問題であるとの共通認識なくしては効果なし(2010-11-01)

●歴史には文明を分かつ“峠”が存在する その峠が転換期である(2010-11-29)

●ドラッカーの環境意識
ドラッカーの環境意識(1)~分煙スペースはない  

ドラッカーの環境意識(2)~絶えざる創造的破壊  

ドラッカーの環境意識(3)~普遍性を持つ教養人間

●「アジア太平洋文明」とドラッカー

●人を幸せにするのは何か-「脱」経済至上主義のあり方

●ハーバード・ビジネス・レビュー 2009年12月号
 

●ドラッカーのIT経営論 『ネクスト・ソサエティ』を再読する



私は、今、ドラッカーの2002年の作品『ネクスト・ソサエティ』に付けられたサブタイトル「歴史が見たことのない未来がはじまる」の意味するところが理解できたような気がします。私が8年前に偶然手にしたドラッカーのこの1冊が「私の環境論」と基本的な枠組みでほとんど完全なまでに一致することを知り、改めて、ドラッカーの思索の深さにうたれました。そして、私は遅まきながら今日からドラッカーのファンになりました。

今日のブログ上の「奇跡」とも言える事実との出会いは、私にとってすばらしい、そして忘れがたい「2010年のクリスマス・プレゼント」となりました。今年最大の収穫といってもよいでしょう。もし、“もしドラ”に触発されて、このブログを書いていなければ、このようなミラクルは起こらなかったでしょうし、私は「経営学の神様」とも呼ばれているドラッカーを「環境問題」に対する認識が極めて薄い、多くの他の経営学者と同列に評価し、ドラッカーを誤解したまま年を重ねていったことでしょう。その意味で“もしドラ”には感謝でいっぱいです。“もしドラ”ありがとう。




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2 コメント

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環境問題とドラッカー (isoroku-hitoshi)
2010-12-28 14:06:30
小澤先生のこのブログで、知の巨人であるドラッカーが、環境問題に関する本格的取り組みを行っていることがわかりました。
小澤先生が紹介された「ドラッカーの環境問題に対する認識」の記事を全部印刷しました。走り読みしましたが、いづれもすごい内容で、しっかり読まなければいけないと思いました。
小澤先生の「私の環境論」とドラッカーの環境論が本質的に同一であったということは、素晴らしいご縁ですね。
来年は学ぶことがいっぱいで、武者ぶるいしています。

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なぜ、日本の企業人はドラッカーの環境論にまなばなかったのか? (小澤)
2010-12-30 18:09:35
isoroku-hitoshiさん、
コメントありがとうございます。

私のブログにも書きましたように、私は数あるドラッカーの著書の中から、たまたま表題のタイトルに惹かれて『ネクスト・ソサエティ』を手にしたにすぎません。ドラッカーの「環境問題に対する認識」を調べて見ましたら、彼の経営学の主張にはしっかりと環境問題に対する認識が組み込まれていることがわかりました。

私の環境論は環境問題の現実から出発して、政治・行政・経済・経営・社会など幅広く論じてそれらの統合を確立しようとしていますが、ドラッカーは経営学・社会学という学問体系の基盤に「環境」があることをしっかり意識しているようです。出発点がどうであれ、環境の重要性を共有できていることを知ることができたことは私個人にとって得難い発見でした。

それでは、なぜ、日本の企業人はドラッカーの「環境問題に対する認識」を学ばなかったのでしょうか。日本の企業人は環境問題を矮小化し、環境問題への投資を経済活動のコストと考えているのではないでしょうか。そうであれば、日本の産業界の考えは「公害の認識」はあっても、未だに「環境問題に対する認識」は不十分なのではないでしょうか。

そのことを示唆する2007年11月26日の私のブログ「不十分な日本の「省エネルギーという概念、正しくはエネルギー効率の改善という概念」をご覧ください。日本の企業人による、欧州との環境問題に対する考え方の相違が明らかにされています。
http://blog.goo.ne.jp/backcast2007/e/fc02587002cfbca1dd581e8422716032

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