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安倍首相の施政方針演説には「イノベーション」という言葉が5回も出てきます。活字で見るとあまり目立たないのですが、テレビでの演説を聴いていると私にはこの言葉が強く印象に残りました。この言葉は、いままでは主として、産業部門や経営部門で好んで使われてきたので、イノベーションという言葉には「技術革新」という日本語が当てられています。
時代の動きに合わせて、「イノベーション」という言葉の意味も「技術」を対象とするだけでなく、いろいろな分野へ広がってきました。例えば、2006年5月4日付けの毎日新聞の1面コラム「余録」に「政治の世界のイノベーション」という言葉が出ていました。
このコラムの前半は、サッチャー政権の誕生について書かれています。後半は北欧諸国の政治システムに触れています。そして、「いま、政治システムで最先端にあるのは北欧諸国のような気がする。経済、教育、社会保障、環境問題への対応、どの指標をとっても世界のトップクラスにある。北欧諸国はすでに他の国々が気付いていない道を歩み始めているのではないか」と興味深い記述があります。
サッチャー政権の誕生とその成果が政治の世界のイノベーションというのであれば、そのイノベーションは「20世紀型の経済成長」を支える政治のイノベーションでしょう。北欧諸国の政治システムは国によりそれぞれ異なりますので、北欧諸国と十把一絡げに論ずるのにはやや抵抗がありますが、スウェーデンの政治システムそれ自体は、サッチャー政権の80年代のシステムと基本的には変わらないと思います(進化はあったでしょうが)。
重要なことは、北欧諸国が相対的に他国よりもすぐれた「民主主義の手続きを基本にした合意形成のシステム」と「政治システム」を用いて、他国よりも早く、21世紀にめざすべき新しい社会を構想し、国をあげてその実現に向けて努力していることでしょう。
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安倍政権に切に望みたいのは、20世紀の政治システムの改良ではなく、21世紀をはっきり意識した新しい政治システムの構築です。20世紀の政治システムの改良であろうと、21世紀を意識した新しい政治システムであろうと、真っ先に取り組むべきは長年の課題である「行政の縦割り構造の改革」ではないでしょうか。
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