9月16日、トヨタ社員の労災認定裁判が名古屋高等裁判所で午後1時30分から開かれ判決がありました。一審で強度が「中」とされていた精神障害(うつ病)について、裁判長は「客観的に見て精神障害を発病させるだけの(強)度のあるパワハラを受けていた」と「新認定基準」で認定しました。また業務と発病との関係でいうと因果関係があると認める」と指摘し、一審判決を破棄し「労災」として認める判決を下し、「逆転勝訴」となりました。
上告期限は9月30日です。裁判終了後に会場を移して、報告会を(記者会見も行われました)終えた後に弁護士と原告本人と支援する会メンバーで労働局を訪ね「上告しないよう」要請をしました。原告本人はトヨタに「謝罪をしてほしい」と述べていました。
マスコミが企業に対してコメントを求めるとほとんどは「判決文を読んでいませんので」と差し控えるのですが、今回ネットニュースを見ると、トヨタ本社は「ー会社として手を差し伸べることが出来なかったことは反省すべきで、風通しの良い職場風土を築くよう努力を続けるー」とコメントしたようです。
トヨタに対して、資料等の情報を求めても「黒塗りであったり、白抜きであったり」で手を差し伸べてこなかったことへの反省なのか、いずれにしても手際よくコメントを発表したことは評価しても良いかなと思います。
ただトヨタ社長の思いは空回りしていると思わざるを得ません。まだまだ自己保身に走るばかりに「ハラスメント」をやってはならない意識の薄い管理職或いは監督職がいるのです。
今回の裁判の特徴は、長時間労働により過労で死んでしまったと言うものではなく、アメリカ発リーマンシヨックにより経費削減で「人員を削減する」「残業は一切禁止」でした。しかし開発業務の手を緩めることはなく、短時間或いは短期間で業務を進めなければならないジレンマに置かれ、業務の負荷が重くのしかかり、身体的・精神的に追い込まれているところに、同僚の前で大きな声を張り上げて業務の進捗状況をなじるなどのパワハラが横行していたのです。
トヨタ生産方式は「ムリ」「ムラ」「ムダ」を無くし秒単位で生産時間を短縮することを日常の業務として行われ、効率よく生産し最大の利潤を得る目的としています。ですから、業務に従事する労働者の能力・技能力は皆同じで同じようにできるとみなされています。がどっこい、それでは人事評価はと言うと、絶対評価ではなく、相対評価です。
2016年に「技能発揮考課・技能発揮給制度」なるものを導入して、技能職メンバー(労働者)の日々の働きぶりを毎月評価し加点方式で上げたり下げたりと賃金に反映させることでモチベーションを上げていくという狙いです。つまりアメとムチで働かせ過酷な労働をさせているのです。
今回の裁判は、トヨタにおける「働き方」「働かせ方」「労務管理の在り方」「人間尊重」の観点から業務の在り方を見直すきっかけになるよう働きかけていかなければなりません。
もう一つの裁判で、トヨタ自動車を相手に「損害賠償請求」裁判を名古屋地裁にて行っています。次回の裁判は11月17日(水)に行われます。皆さんのご支援を引き続きお願いします。