以下、教育基本法改悪反対全国連絡会の呼びかけ人の1人である大内裕和さんの発言です。論点整理もされており、私たちが今後進める方向もこうかなあと思いました。以下紹介します。
教育基本法・憲法改悪のねらいと、これからの運動の展望
~公務員は悪くない!~
全国連絡会呼びかけ人・松山大学教員:大内裕和
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本日の集会が、これだけ多くの人々の参加によって勝ちとられたことを呼びかけ人の一人として、とても嬉しく思います。また、教育基本法と憲法改悪阻止の意思を小泉政権に対してはっきりと示すことができた点で、大きな成功であったことを皆さんとまずは確認したいと思います。
2005年11月22日、自民党は立党50年記念党大会で、「新憲法草案」を発表しました。自衛軍の保持が明記され、「国際社会の平和と安全を確保する」という名目で、集団的自衛権の行使と海外派兵が可能となります。さらに米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設、神奈川県キャンプ座間への米陸軍第一軍団司令部の設置、横須賀基地の原子力空母配備といった在日米軍の再編・強化策が打ち出されています。在日米軍の再編・強化と憲法九条の改悪とは、日本を「戦争する国家」へと変えようとする企てに他なりません。
教育基本法の改悪は、憲法改悪と一体であることは明らかです。愛国心を強制することによって、国家への犠牲を正当化し、自衛軍に自らすすんで参加する「国民」を育成することが狙われています。教育内容への政治的介入を強化することによって、国家中心の新たな秩序をつくり上げることが、教育基本法改悪の目的です。自民党新憲法草案の前文に、「帰属する国」への愛情が明記され、第十二条で「国民の責務」が定められていることは、両者の関係を明確に示しているといえます。
教育基本法と憲法の改悪が行なわれようとしているなか、小泉構造改革=新自由主義による労働者への攻撃が激しく行なわれています。そのなかでも特にターゲットとなっているのは、公務員です。マスコミを通じて公務員バッシングが激しく行なわれています。例えば大阪市労連に対しては、「多額のヤミ年金、ヤミ退職金」などが挙げられ、労働者が不当な利益を受けているかのようなキャンペーンが行なわれました。しかしここでの年金や退職金は、労使の協議に基づいて決められたものであり、違法性のあるものでは全くありません。
政府は、「公務員は民間企業=私企業の労働者に比べて恵まれている、甘えている」というキャンペーンを行なって、公務員労働者に対する社会の憎悪や妬みをあおり立て、公務員労働者と他の労働者、市民とを分断することによって、支配の強化をはかっています。しかしここでしっかりと確認したいのですが、「公務員は悪くありません!」悪いのは小泉自民党政権です。小泉自民党政権は、自らがつくり出した財政赤字の責任を、それがあたかも公務員労働者にあるかのような宣伝を行ない、自らの責任を押しつけています。
政府・自民党による攻撃の本当の目的は、これまで憲法九条改悪に反対する反戦平和運動を展開してきたいわゆる官公労、公務員労働組合を解体することにあります。つまり、教職員組合の日教組、全教、公務員労働組合の自治労、自治労連などを解体することが狙われています。これらの労働組合は戦後、労働組合のナショナルセンター=総評による反戦平和運動の中心を担ってきました。現在においても、これら教職員組合、公務員労働組合は、教育基本法の改悪、憲法九条改悪を阻止する最大の潜在的可能性をもっています。つまり、政府は日教組、全教、自治労、自治労連を解体することによって、教育基本法改悪と憲法九条改悪を進めようとしているのです。
新自由主義は社会のすべての領域に市場原理を導入します。そのキーワードは民営化です。民営化というのは英語ではprivatization(プライヴァタイゼーション)ですから、より正確には私有化ということになります。公共部門が担当していた領域を民営化、私有化すること、それによって私企業の自由が社会を席巻することになります。私企業の自由の拡大、それはすなわち資本による搾取の拡大に他なりません。このことによって社会の二極化が急速に進んでいます。またこの新自由主義が、公共部門の労働組合の解体をもたらすことは明らかです。
こうした新自由主義による攻撃がかけられている現在、教職員組合、公務員労働組合はいったいどうすれば良いでしょうか。激しい攻撃に対して、首をすくませて嵐が過ぎ去るのを待とうとしたり、黙って耐えていたりしてはならないでしょう。それは公務員と他の労働者を分断しようとする政府の狙いにまんまと乗ってしまうことであり、リストラや労働強化に苦しむ他の労働者を結果的には裏切ることになります。嵐が過ぎ去るのを待とうとしたり、耐えたりするのではなく、他の労働者・市民と連帯して、この新自由主義と正面から対決することが、教職員組合、公務員労働組合に強く求められています。
その際に最も重要なことは、教職員組合や公務員労働組合が、教育基本法の改悪阻止、憲法九条改悪阻止の先頭に立つことでしょう。教育基本法が改悪されれば、教職員は子どもたちに愛国心を教えることを余儀なくされ、憲法九条が改悪されれば、公務員は住民・市民を戦時体制に動員する役割を負わされます。ここで公務員の公(こう)=おおやけ、英語ではpublic(パブリック)ですが、教育基本法と憲法が改悪されれば、このパブリックは人民=people(ピープル)とのつながりを失い、公務員は国家の手先へと変えられてしまいます。教育基本法の改悪に反対することは、教職員の権利の闘いであると同時に、子どもたちの権利を守る闘いです。憲法改悪阻止の闘いは、公務員の権利の闘いであると同時に、住民・市民の権利を守る闘いです。教職員組合、公務員労働組合は教育基本法改悪阻止、憲法改悪阻止の闘いの先頭に立つことによって、子どもたち、住民・市民との連帯をつくっていくことができます。このように他の労働者・市民との連帯を粘り強く追求することによって初めて、政府やマスコミが激しく行なっている公務員バッシング、公務員労働者と他の労働者との分断支配を乗り越えることができるでしょう。労働者の連帯や団結は、個々の労働者の利益や条件の一致から自動的に生まれるものではなく、現状を乗り越えようとする意思とそれに基づく共同の行動によってつくられるものです。教育基本法改悪阻止、憲法改悪阻止の運動は、労働者の新たな連帯や団結をつくり出す大きな可能性をもっています。
新自由主義との闘いにとって重要なのは、国鉄労働者の闘いです。今から約20年前、国鉄労働者への激しい攻撃が行なわれました。今の公務員労働者に対する攻撃は、その時の再現フィルムを見るようです。国鉄の赤字の責任が現場労働者に押しつけられ、国鉄の分割・民営化が強行されました。労働者の権利は奪われ、1047名の労働者の不当解雇が行なわれました。これに対して鉄建公団訴訟が起こされ、今年の9月15日に東京地裁の判決が出されました。不当労働行為の所在を明確にしたものの、解雇を有効とした点で、全く不当な判決だといえます。この判決後、10月24日から原告団による鉄建公団前での座り込みが続けられています。彼らの闘いはとても貴重です。中曽根元首相による国鉄の分割・民営化は、新自由主義の本格的スタートであり、現在のリストラ社会の原点となりました。彼らの闘いは、新自由主義の不当性と労働者の権利、人間の尊厳の重要性を私たちに伝えてくれます。
彼ら国鉄労働者の闘い、「日の丸・君が代」強制に反対する現場教職員の闘い、戦争協力を拒否する陸海空港湾労組20団体の闘い、そして教育労働者、公務員労働者の新自由主義に対する闘い、これらの闘いをつなげていくことによって、労働運動の新たな潮流を生み出すことができるでしょう。この労働運動の新たな潮流と広範な市民や学生の運動が結びついた時、教育基本法と憲法の改悪を阻止することが可能となります。「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」の運動は、労働者・市民・学生の新たな連帯をつくり出してきました。教育基本法・憲法の改悪、そして日本の戦争国家化を私たちの力で何としても阻止しましょう!
2005年12月17日土曜日20時11分51秒
教育基本法・憲法改悪のねらいと、これからの運動の展望
~公務員は悪くない!~
全国連絡会呼びかけ人・松山大学教員:大内裕和
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本日の集会が、これだけ多くの人々の参加によって勝ちとられたことを呼びかけ人の一人として、とても嬉しく思います。また、教育基本法と憲法改悪阻止の意思を小泉政権に対してはっきりと示すことができた点で、大きな成功であったことを皆さんとまずは確認したいと思います。
2005年11月22日、自民党は立党50年記念党大会で、「新憲法草案」を発表しました。自衛軍の保持が明記され、「国際社会の平和と安全を確保する」という名目で、集団的自衛権の行使と海外派兵が可能となります。さらに米軍普天間飛行場の名護市キャンプ・シュワブ沿岸部への移設、神奈川県キャンプ座間への米陸軍第一軍団司令部の設置、横須賀基地の原子力空母配備といった在日米軍の再編・強化策が打ち出されています。在日米軍の再編・強化と憲法九条の改悪とは、日本を「戦争する国家」へと変えようとする企てに他なりません。
教育基本法の改悪は、憲法改悪と一体であることは明らかです。愛国心を強制することによって、国家への犠牲を正当化し、自衛軍に自らすすんで参加する「国民」を育成することが狙われています。教育内容への政治的介入を強化することによって、国家中心の新たな秩序をつくり上げることが、教育基本法改悪の目的です。自民党新憲法草案の前文に、「帰属する国」への愛情が明記され、第十二条で「国民の責務」が定められていることは、両者の関係を明確に示しているといえます。
教育基本法と憲法の改悪が行なわれようとしているなか、小泉構造改革=新自由主義による労働者への攻撃が激しく行なわれています。そのなかでも特にターゲットとなっているのは、公務員です。マスコミを通じて公務員バッシングが激しく行なわれています。例えば大阪市労連に対しては、「多額のヤミ年金、ヤミ退職金」などが挙げられ、労働者が不当な利益を受けているかのようなキャンペーンが行なわれました。しかしここでの年金や退職金は、労使の協議に基づいて決められたものであり、違法性のあるものでは全くありません。
政府は、「公務員は民間企業=私企業の労働者に比べて恵まれている、甘えている」というキャンペーンを行なって、公務員労働者に対する社会の憎悪や妬みをあおり立て、公務員労働者と他の労働者、市民とを分断することによって、支配の強化をはかっています。しかしここでしっかりと確認したいのですが、「公務員は悪くありません!」悪いのは小泉自民党政権です。小泉自民党政権は、自らがつくり出した財政赤字の責任を、それがあたかも公務員労働者にあるかのような宣伝を行ない、自らの責任を押しつけています。
政府・自民党による攻撃の本当の目的は、これまで憲法九条改悪に反対する反戦平和運動を展開してきたいわゆる官公労、公務員労働組合を解体することにあります。つまり、教職員組合の日教組、全教、公務員労働組合の自治労、自治労連などを解体することが狙われています。これらの労働組合は戦後、労働組合のナショナルセンター=総評による反戦平和運動の中心を担ってきました。現在においても、これら教職員組合、公務員労働組合は、教育基本法の改悪、憲法九条改悪を阻止する最大の潜在的可能性をもっています。つまり、政府は日教組、全教、自治労、自治労連を解体することによって、教育基本法改悪と憲法九条改悪を進めようとしているのです。
新自由主義は社会のすべての領域に市場原理を導入します。そのキーワードは民営化です。民営化というのは英語ではprivatization(プライヴァタイゼーション)ですから、より正確には私有化ということになります。公共部門が担当していた領域を民営化、私有化すること、それによって私企業の自由が社会を席巻することになります。私企業の自由の拡大、それはすなわち資本による搾取の拡大に他なりません。このことによって社会の二極化が急速に進んでいます。またこの新自由主義が、公共部門の労働組合の解体をもたらすことは明らかです。
こうした新自由主義による攻撃がかけられている現在、教職員組合、公務員労働組合はいったいどうすれば良いでしょうか。激しい攻撃に対して、首をすくませて嵐が過ぎ去るのを待とうとしたり、黙って耐えていたりしてはならないでしょう。それは公務員と他の労働者を分断しようとする政府の狙いにまんまと乗ってしまうことであり、リストラや労働強化に苦しむ他の労働者を結果的には裏切ることになります。嵐が過ぎ去るのを待とうとしたり、耐えたりするのではなく、他の労働者・市民と連帯して、この新自由主義と正面から対決することが、教職員組合、公務員労働組合に強く求められています。
その際に最も重要なことは、教職員組合や公務員労働組合が、教育基本法の改悪阻止、憲法九条改悪阻止の先頭に立つことでしょう。教育基本法が改悪されれば、教職員は子どもたちに愛国心を教えることを余儀なくされ、憲法九条が改悪されれば、公務員は住民・市民を戦時体制に動員する役割を負わされます。ここで公務員の公(こう)=おおやけ、英語ではpublic(パブリック)ですが、教育基本法と憲法が改悪されれば、このパブリックは人民=people(ピープル)とのつながりを失い、公務員は国家の手先へと変えられてしまいます。教育基本法の改悪に反対することは、教職員の権利の闘いであると同時に、子どもたちの権利を守る闘いです。憲法改悪阻止の闘いは、公務員の権利の闘いであると同時に、住民・市民の権利を守る闘いです。教職員組合、公務員労働組合は教育基本法改悪阻止、憲法改悪阻止の闘いの先頭に立つことによって、子どもたち、住民・市民との連帯をつくっていくことができます。このように他の労働者・市民との連帯を粘り強く追求することによって初めて、政府やマスコミが激しく行なっている公務員バッシング、公務員労働者と他の労働者との分断支配を乗り越えることができるでしょう。労働者の連帯や団結は、個々の労働者の利益や条件の一致から自動的に生まれるものではなく、現状を乗り越えようとする意思とそれに基づく共同の行動によってつくられるものです。教育基本法改悪阻止、憲法改悪阻止の運動は、労働者の新たな連帯や団結をつくり出す大きな可能性をもっています。
新自由主義との闘いにとって重要なのは、国鉄労働者の闘いです。今から約20年前、国鉄労働者への激しい攻撃が行なわれました。今の公務員労働者に対する攻撃は、その時の再現フィルムを見るようです。国鉄の赤字の責任が現場労働者に押しつけられ、国鉄の分割・民営化が強行されました。労働者の権利は奪われ、1047名の労働者の不当解雇が行なわれました。これに対して鉄建公団訴訟が起こされ、今年の9月15日に東京地裁の判決が出されました。不当労働行為の所在を明確にしたものの、解雇を有効とした点で、全く不当な判決だといえます。この判決後、10月24日から原告団による鉄建公団前での座り込みが続けられています。彼らの闘いはとても貴重です。中曽根元首相による国鉄の分割・民営化は、新自由主義の本格的スタートであり、現在のリストラ社会の原点となりました。彼らの闘いは、新自由主義の不当性と労働者の権利、人間の尊厳の重要性を私たちに伝えてくれます。
彼ら国鉄労働者の闘い、「日の丸・君が代」強制に反対する現場教職員の闘い、戦争協力を拒否する陸海空港湾労組20団体の闘い、そして教育労働者、公務員労働者の新自由主義に対する闘い、これらの闘いをつなげていくことによって、労働運動の新たな潮流を生み出すことができるでしょう。この労働運動の新たな潮流と広範な市民や学生の運動が結びついた時、教育基本法と憲法の改悪を阻止することが可能となります。「教育基本法の改悪をとめよう!全国連絡会」の運動は、労働者・市民・学生の新たな連帯をつくり出してきました。教育基本法・憲法の改悪、そして日本の戦争国家化を私たちの力で何としても阻止しましょう!
2005年12月17日土曜日20時11分51秒