とうちゃんのぷらぷら日記

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「たった独りの引き揚げ隊」10歳の少年満州1000キロを征く ビクトル古賀さんの物語

2018-11-10 20:44:52 | 本、作家
今週、この本の主人公であるビクトル古賀さんが亡くなられたそうだ。
ビクトル古賀さんは、高名な格闘家で、かつてのソ連邦でスポーツ英雄功労賞まで受賞されたサンボ(ロシアの格闘技)の達人であった。一般にはそのことの方が有名なのだが、この本の中のビクトル古賀さんは、サンボなど知らないまだ10歳の少年である。

トムソーヤの冒険よりも、ハックルベリーフィンの冒険よりも、冒険に満ちたビクトル少年の物語は、民族や国家の盛衰渦巻く満州国ハイラルの地で始まる。

ビクトルさんの祖父は、日露戦争で日本軍とも戦ったコサック騎兵のエリートだった。ところがロシア革命の内乱で紅軍に敗れ、満州国のハイラルの地に流れ着く。ハイラルには実の娘(ビクトルさんの母親)が、ロシア国内の動乱を避けるため、親類の家に身を寄せていた。
一方ビクトルさんの父親は、九州の柳川藩士の子孫で、関東軍関係の仕事をしていてた。やはりロシアとの国境近くのハイラルに住んでいた。両親ともに誇り高き武門の家柄である。特にビクトル少年は、コサックである祖父の強い影響を受けて育つ。

6歳にして、自分用の馬を与えられ、(名はシェルカ)ビクトル少年は愛馬シェルカにまたがりハイラルの地を疾走する。ビクトル少年の生きる知恵はコサックの伝統から学んだものだった。

その後、ソ連軍の満州進行によりハイラルの街は壊滅。父の祖国日本を目指したビクトル少年の満州の野を縦断する冒険が始まる。

自らの命をかけ、持てる技術と知恵の限りを尽くし日本にたどり着いたビクトル少年の達成感は、少年がやがて年老いた年齢になるまで忘れることが出来ない体験となった。
この本は、ビクトル古賀さん本人に取材し、筆者が当時の裏付けとなる資料を丹念に集め完成させた労作である。

それにしても世の中には、一般の人には想像も出来ないような人生を生きた人がいるものである。



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