交響曲第3番は、私が最も好きなマーラーの曲だ。
かなり昔、ベルリンフィルが日本に来て演奏したことがあったのだが、
本当に聴きに行きたいと思った。が、仕事が忙しいころで、平日に休みを取る勇気がなかった。
今回の指揮者のカーチュン・ウォンさん、
マーラー国際指揮者コンクールで優勝されていたのを知っていたので、かなり期待していた。
開演前からドキドキだった。
いよいよカーチュン・ウォンさん登場。
ホルンの力強い響きで始まると、雲間に響く雷を思わせるような静かで重々しいフレーズを、打楽器が打ち鳴らす。
その後、次々にそれぞれの楽器の見せ場がやってくる。
第一楽章だけでも壮大な曲となっているので、終わると思わず拍手をしたくなる。
音も大変変化に富んでいる。
オーケストラが出せる最大級のフォルテッシモな演奏があるかと思えば、途端に繊細で穏やかな演奏になる。
曲はシュタインバッハの景色を写し取ったと言われているようだが、むろん単に自然の描写だけでなく、山々には神々がいて、妖精や精霊も住む。
マーラーの曲は宇宙をも現わしているという。
さすがに私レベルではそこまで感じることは出来ないが、
時に哲学的であり、演奏の中でいろいろ感じるものはある。
朝日に輝く岩山、その麓の森には幸いがあり、人々は豊かに暮らす。
終楽章、人は死んだら何処へ行くのか、魂は、
そして生きとし生けるものへの賛歌で終わるのである。
な~んて勝手な解釈を聴くたびに感じるところがマーラーだ。
編成もとんでもない。フルオーケストラにメゾ・ソプラノ(山下牧子さん)の独唱、ハーモニア・アンサンブルの女声合唱団、東京少年少女合唱団、これではそう簡単には演奏出来ない。
メゾ・ソプラノの山下さん。てっきり指揮者の横あたりで歌うのかと思ったら、コントラバスのある後ろの方で歌われていた。
終楽章、最後の締め、シンバルも定位置ではなく最前列左側でジャーンとやっていた。
マーラーの指示でそうなっているのか、指揮者の演出なのか知らないが、やはりマーラーの曲はロックだ。
今回、演奏終了後は写真撮影OKとのことで、拍手をしながらちょっと写させていただいた。
コンサートは最近聴いた演奏のなかでも別格的なものだった。
さすが指揮者の思い入れのある曲だ。半端ない。
私のこの曲のイメージの基本はバーンスタインが指揮したニューヨークフィルのCDなのだが、生演奏で聴くと、CDではわからない細かい音がいろいろな所で鳴り響いているのがわかった。
マーラーほど生の演奏を聴かないとわからない作曲家はない。
と、今回あらためて感じた。
とてもすばらしい演奏だったので、出演者が全員退場するまで拍手をさせていただいた。
値千金。(日本フィルってけっこう若い方も多いんですね。)