波打ち際の考察

思ったこと感じたことのメモです。
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波屋山人

青森、八戸

2010-02-09 23:13:39 | Weblog
週末は青森の酸ヶ湯温泉でのどかなひと時を過ごした。
外は吹雪いていても、湯気にかすんだ広い浴槽につかっていると外界のことは忘れてしまう。

最近、嵐山光三郎さんの本をいろいろ読んでいて、ぼくも身軽な旅をしたくなった。
北の町に行きたい気分になり、ライターさんとの飲みを早めに切り上げて夜行バスに乗った。

ほんとうは、「一人でちょっと津軽海峡冬景色を見てくる」と言って彼女を置いて行こうとしたけど、一緒に中欧や東南アジアを夜行バスで旅した彼女は、今回も「私も行くー」と言ってついてきた。

朝、青森駅の前に到着すると、嵐山光三郎さんの本にも出ていた駅前のビル地階の市場へ。
まずはしじみラーメン850円を食べて市場を見学。
大間のマグロの中落ち、タラの白子、新鮮なホタテ。さすが青森だ。

すぐに酸ヶ湯温泉の無料送迎バスに乗って1時間、雪の山道を登って到着。
まだ12時前だけど、チェックイン。
さっそく温泉に行こうとしたが、一休み。
夜行バスであまり寝られなかったので休憩が必要。

売店で1合800円の田酒(でんしゅ)を見つけ、さっそく購入。
枡で飲む田酒の特別純米はなかなかの味。

午後早めの温泉はあまり混んでいない。真冬だから観光客も少ないのだろうか。
数人しか入っていないメインのヒバ千人風呂でくつろぐ。打たせ湯を浴びながらちょっと口に含むと、レモンのようにすっぱい。調子のよくないノドにも効くかもしれない。

千人風呂は混浴だけど、朝と夜の8時から9時までは女性専用。
玉の湯は現在工事中で、時間によって男女に分かれている。

混浴の大浴場はそとの寒気の影響なのか湯気だらけで、視界がきかない。
堂々と前を隠さず歩くことができる。
女性の姿は見えない。声は聞こえるけど、端の陰のほうに何人かいるようだ。
それでもなんとか湯船の中で彼女と落ち合い、ゆったりした気分を味わった。

部屋に戻ると彼女が無断でポッキーを食べようとしたので、口に入れたところを叩き折った。
食事の前に甘いものなんて食べるんじゃない。
だけど明るい彼女はそんな仕打ちにも負けず、半分食べられたことに満足している。ポジティブな人だ。

夕食までに結局3~4回も入った。
食事の時間は6時半に設定。
すこしさめているのは仕方ないけど、量は多く、地元の食材もありおなかいっぱいいただいた。
売店で買った純米酒「じょっぱり」4合瓶も一人で全部飲んだ。注文した刺身も新鮮でおいしい。
大方食べてから、またお湯に入ったけど、部屋に戻ってきてみると食べ残しが下げられていた。しかも、売店で買ったヒバのおちょこも見当たらない。
電話をかけておちょこを探してもらったらすぐ見つかったけど、間違って下げてしまったことを恐縮されてしまった。
あり合わせのおかずを少し出していただき、申し訳ない。なんとご丁寧な。

翌日、チェックインの時にも恐縮されてしまった。
夕食時に追加注文していた分は、請求代金に入っていない。
本当にこちらこそ、お気遣いさせてしまって恐縮だ。
彼女は「もうかった」みたいな顔してるけど。

ロビーにはカモシカやタヌキなどの剥製が飾られている。「日本の路地を旅する」にも出ていた、青森に一軒だけあるという剥製屋さんが手がけたものだろうか。実に精巧だ。

チェックアウトしてから送迎バスが来るまでの間は、日帰り温泉用の休憩室で休憩。
棟方志功の大きな書が3幅も掛けてあり、思わず見入ってしまう。すばらしい。
休憩室に入ったときに、なぜか墨汁のにおいがするようにも感じた。今から思えば硫黄のにおいなんだろうけど。

華厳 乾坤 巣神?

何と書いてあるのかはっきりわからないけど、すごいのだ。表情が。無駄がない。虚飾がない。
館内に飾られた棟方志功の版画や書を見るために酸ヶ湯温泉に来てもいい。
青森は、棟方志功が生まれ育ったところでもある。いいところだ。

青森市に戻ってから展望レストランで食事。
40分以上経ってもカレーが出てこないので、沈黙の中でぼくは句作。嵐山光三郎さんのように気の利いた句はなかなかできない。

 銀世界音も言葉も立ち入れず

 津軽路に日の射すところ雪かおる

むつ湾を囲む半島の雪に、時折日がさす。
明るいところは雪ばかり。あったかいわけではないけど、なんだか香りたつように感じる。

彼女は凍えそうなカモメを探してぼんやり。
結局食事が来るのが大幅に遅れ、予定していた電車に乗れなかったので八戸に着いたのは暗くなってから。

もうちょっと早く着いたら、芸術家に対して暴力的なまでの抗議行動を行った八戸の小児科医さんがいるらしい、くば小児科クリニックを見学してみようと思っていた。
(かばんの中には発売中止になった「たくさんのふしぎ2月号」を入れている)

おじいちゃんの喫煙シーンが非難されて絵本が発売中止になった件は大きな話題になった。
ネット世論調査によると、反タバコ団体の抗議に対して批判的な人が多いようだ。
http://research.news.livedoor.com/r/38267
http://blog.livedoor.jp/oyurui/archives/50914360.html#

もし、絵本を発売中止に追い込んだ小児科医の人が、反タバコ運動に対して下記のような抗議を受けたらどのように感じるだろうか。

 表現の自由を侵害する反タバコ団体の行為は社会的に許されない!
 この反タバコ団体の小児科医は医者としても2流。市民活動家としても評価できない!
 芸術の価値は、必ずしも社会的常識に拘束されるものではない!
 芸術を理解できない上に芸術をつぶして平気な禁煙ファシストを許すな!

こういった抗議文が、厚生労働省、青森県議会、八戸市議会、政治団体、医師会等々に送られ、表現の自由を侵害する反タバコ団体に対する非難決議や抗議行動が求められていたら、どう感じるのだろうか。
「へんな人につきまとわれてやっていられない」とうんざりして、
「表現の自由を侵害する一面もあったことを反省します。今後は芸術家の表現を尊重し、配慮します」というような釈明をして、反タバコ活動をしばらく中止するかもしれない。

福音館書店は、上記のような状況に追い込まれた。
反タバコ団体の小児科医さんは、法律違反ではないタバコ描写を全否定した。
(法律違反であると主張するのであればちゃんとそういった判決を得てから主張してほしい。法律の素人の思い込みで行動されても信頼性は低い)
さらに、イラストレーターさんが手間ひまかけて作った作品の芸術的価値を軽々と否定した。
また、論理で真摯に向き合わず、攻撃対象の管轄者や協力者である文部科学省や図書館の団体などに手紙を送り、周囲を巻き込んで問題化させることによって福音館書店を萎縮させた。

このような抗議の手法がまったく問題ないと思っているのであれば、反タバコ団体の小児科医さんのところにも、自分がやってきた抗議活動がはね返ってくるかもしれない。
そういうことをわかっている人は、暴力的な抗議活動を行ったりはしないけどね。


それにしても八戸は意外に大きな町だ。
関東で言うと、日立市とか水戸市とか高崎市といった規模の、中堅都市といった印象。
あまり大きな建物はないけど、意外に市街地が広い。

ぼくにとっては、天才的ポップロックバンド、スーパーカーのメンバーが出会った場所。
青森の八戸ってどんな田舎だろうと思っていたけど、意外に町だった。
スーパーカーの曲を聴きながら、スーパーカーのメンバーが通ったかもしれない楽器店の前を通った。
何人かの若い人たちが店の中にいるのが見えた。

八戸の繁華街はなかなか楽しく、おいしい日本酒を何杯も飲んだ。
東京でも陸奥八仙は有名だけど、フルーティーな鳳瑞大吟醸、ドライな如空の大吟醸、旨みしっかりの陸奥田心の純米、どれも八戸のお酒は高品質。
いい気分のまま、夜行バスで帰ることができた。
また近いうちに青森を再訪したい。


コメント
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