波打ち際の考察

思ったこと感じたことのメモです。
コメント欄はほとんど見ていないので御用のある方はメールでご連絡を。
波屋山人

漢検は、文科省からの天下りを拒否していじめられたのではない

2009-02-28 14:24:47 | Weblog
新宗教界の論客の1人に、金光教(こんこうきょう)の三宅善信という人がいる。
宗教情報に詳しい「レルネット」というサイトを運営されている。

http://www.relnet.co.jp/
・レルネット

金光教は神道系の新宗教で、漫画家のサトウサンペイが信仰している事でも知られている。
サトウサンペイの本によると、金光教は教会の建物がぼろく、他の宗教の悪口を言わない。
金儲けに熱心ではなく、排他的でもないらしい。
金光教は1859年(安政6年)に岡山で始まった。ちょうど今年で立教150年らしい。おめでとうございます。

それはともかく、レルネットに三宅善信さんの「天下りを拒否して苛められた漢検協会」というコラムを見つけた。
http://www.relnet.co.jp/relnet/brief/r12-236.htm
・天下りを拒否して苛められた漢検協会(09年02月13日)

ここでの論点に、気になる記述があった。
> さて、問題の漢検協会である。結論から言おう。何故、今回、
> 漢検協会がこれほどマスコミから叩かれることになったのか? 
> それは、文科省の官僚の天下りを決然と拒否したからである。
> これだけ、「天下り」や「渡り」が問題となっているにもかかわらず、
> マスコミはまんまと文部官僚に作戦の乗せられたのである。

これは、何を根拠に書かれたのだろうか。
事実がそうでなければ、風説の流布に当たる。

漢検協会は、文部科学省の生涯学習推進課が管轄している。
ざっと見ると管轄されている団体は42あるが、このうち文科省の官僚の天下りを受け入れている団体はいくつあるだろうか。

・文部科学省所管公益法人一覧(生涯学習政策局生涯学習推進課)
http://www.mext.go.jp/b_menu/koueki/syougai/02/002.htm

財団法人全国珠算学校連盟
財団法人全国理容美容学校連盟
財団法人専修学校教育振興会
財団法人日本英語検定協会
財団法人日本数学検定協会
財団法人日本漢字能力検定協会
財団法人全日本情報学習振興協会
等々、さまざまな財団があるが、これらの財団の理事、評議員のうち、文部科学省から天下った人の名前を挙げてほしい。
各団体に何人か天下ったりしているのだろうか。

少なくとも、漢検と並んで大きな団体である日本英語検定協会には文部科学省出身の人がいないのではないか。
私は理事や幹事の名前を検索してみたが、文部科学省に関係のある人を1人も見つけることはできなかった。

・日本英語検定協会(英検)の理事・幹事
http://www.eiken.or.jp/step/pdf/outline02.pdf

経済産業省の管轄下にある財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会は、経済産業省からの天下りを受け入れている。
他の省庁がそうだからといって文部科学省もそうだろうと思い込んでほしくない。

また、漢検が問題視されている原因に、
「公益法人は利益を上げないことを条件に税金が優遇されている。それを利用して儲けてもいいのか」
という視点がある。
そのことについて三宅善信さんは言及されていないのではないか。

漢検は当初、株式会社の作った任意団体が運営する民間検定だった。
だが、財団法人になってから爆発的に受験者を増やした。

文部科学省後援の公的資格を名乗ると信頼度がアップした。検定の促進に大いに利用できた。ポスターにもパンフレットにも問題集にも「文部科学省後援」と刷り込んだ。
さらに、財団法人であれば税金を優遇された。本来なら税金にとられる何億円かを支払わないで済み、稼いだお金は個人的な株式会社に流して蓄えた。

もし、民間検定のままであればこんなに受験者が増えることもなかったし、稼げることもなかった。

だが、三宅さんは下記のように書かれている。
> 「漢検」に関しては、もともと株式会社の営利事業として行って
> いた事業を、当時の文部官僚が唆(そそのか)して「公益法人」化
> させたのである。もちろん、「所轄庁」としての監督権限の拡大と、
> 将来の「天下り先」の確保の目的で…。この十年ほどの間に、
> 「漢検」が伸びたのは、大久保理事長をはじめとする漢検協会の
> 自己努力に他ならない。

これも、何を根拠に書かれたのだろう。
例えば、TOEIC(国際ビジネスコミュニケーション協会)は、当時の通産省の人が法人化を持ちかけたのではない。TOEICの運営者側が通産省に働きかけた。
財団法人化するとおいしいからだ。
漢検も、文部科学省のほうから財団化を持ちかけたという話は聞いたことがない。

文部科学省の肩を持つつもりはないけど、各省庁の中で、文部科学省の人たちはまだがんばってくれているほうではないかと思う。
経済産業省や農林水産省などはともかく、文部科学省をいじめなくてもいいのではないかと思う。
「まじめに問題提起しただけなのに、『献金しないから脅すのか』と言われてしまった非族議員」みたいなことになりませんように。

どの省庁からどの団体に天下っているか、ちゃんと確認してから言わないと、正義感の強い人を恐喝者呼ばわりしてしまうことになりかねない。


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新大久保ランチ ベスト3

2009-02-26 23:12:43 | Weblog
冬は新大久保でランチを食べることが多い。
最近毎週2~3日は職安通りに通っている。

寒い季節に韓国料理の赤色は魅力的。
スープ料理や鍋料理(チゲ)が多いので、あたたまることができる。

突き出しの小皿が数種類付いてくるのもうれしい。
見た目も豪華。

いろんな店に行っていると、かなりのボリュームのナムルやキムチや和え物など充実した突き出しを出してくれる店はいい店が多いと感じる。
逆に、突き出しの貧弱な店では、料理に対して満足することが少ない。

4、5年前は韓流ブームで日中も多くの人でにぎわっていたけど、最近は落ち着いている。
ブームは去ったのか、人通りもそんなに多くなく、以前に比べるとどの店もランチ時の客数がかなり減少している。
人気店でも半分以上席が空いていることが多い。

以前のように待たされることがないのでありがたいけど、1人ふらっと軽装の男が立ち寄ってクッパなどを素早く食べている様子は、のんびりした40~50代以上の女性客が多い中で少し浮いているかも。

ブームが去ってあまり注目されなくなっても、人気店ではおいしいランチを食べることができる。
ぜひ一度おすすめの店でランチを食べてみてほしい。

おすすめの3店は、メジャーなお店。
どこも夜行くとそこそこお金がかかるけど、昼は安いのでお得。

1.烏鵲橋(オザッキョ)
http://www.yakinikutengoku.com/shinjyuku/ozakyo_honten/index.html
突き出し5皿の充実度は新大久保トップクラス。
さらに小さなチジミ1皿がついてくるときもある。
大画面テレビではいつも韓国のダンスミュージックなどが流れている。
韓国のダンスは筋肉質というかアメリカ的というか、レベルが高い。
ウゴジヘジャンクッパも餅ギョウザスープもおいしい。
クッパは、お茶漬けのようにご飯をスープの中に入れてしまってスプーンで食べる。
プルコギ定食は、すき焼定食のような印象。

2.大使館
http://www.taisikan.com/
職安通り沿いの大きな店。
中は静か。窓の外の笹の葉に癒される。
夜はちょっと高いと思うけど、昼はお手ごろ。
お茶が香ばしくておいしい。
お皿やコップがプラスティックなので、甘辛いイカ炒め定食などをスプーンで食べていると、学食を食べているような気分になってくる。

3.東海魚市場
http://www.tokai-sashimi.com/
700~800円のメニューもあり、比較的安価。
魚メニューもある。サラダバーは食べ放題。
上記2店よりも客が入っているときが多い。
ちなみに、韓国は日本海の呼称を東海(トンヘ)に変えよと世界中で主張している。
もし、日本の魚居酒屋「日本海」が韓国で「日本海」という居酒屋をオープンしようとしたら大反発を食らうだろう。
東海魚市場という店名に何のクレームもつけない日本の人はかなり優しいと思う(無知なだけか?)。


昼は以上のような店でよく韓国料理を食べるけど、他にもおいしい店は多い。
若者向けの店、席の座り心地のいい高級店、犬肉などの珍味を食べられる店(ぼくは食べられないけどね)、民家のような店、座敷の店、鍋中心の店、魚中心の店、冷麺中心の店などいろんな店があるので試してほしい。

深夜4時5時までやっている店も多いので、残業帰りに始発を待ちながら韓国料理屋で一人食事をするのもなかなかおもしろい。

韓国料理は好きだけど、たまに頭をよぎるのは、「韓国料理をエスニック料理のレベルからもっとメジャーな料理にするためにはどうすればいいのだろう」ということ。
辛さ甘さといった刺激を薄めるべきか。
ごちゃまぜにしても見た目が美しい料理を創作するか。

それにしても、韓国料理のランチを見ていると、新鮮な食材が少ないように感じる。
日持ちするものや保存食を元に料理をつくっていることが多い。
ラーメンといっても即席麺だったりするし。
突き出しも、キムチとか、海苔を炒めたものとか、缶詰の魚、スルメの和え物などが定番。
ナムルや焼き肉や鍋料理なども、一度下ごしらえをすると3~4日は料理を提供できるような気がする。
1日しか日持ちしないような新鮮な食材を使ってもいいのではないかと思う。

マッコルリも、熱殺菌されていない生マッコルリを出せばいいのに、ほとんどの店では熱処理された甘いマッコルリしか出さない。
生マッコルリは職安通りの向かいにある韓国市場というスーパーにも売っている。
酵母が生きている生のマッコルリは甘すぎず、清酒と甘酒の間のどぶろくのようにおいしい。

それから、店内の内装はさておき、食器が問題だ。
皿やコップが全部プラスティックだという店が多い。
高級感を出すためには、陶器のほうがよいのではないかと思う。

そんなことを考えながら新大久保ランチ。
明日はドンキホーテ横の道(新大久保のメイン路地のひとつ。味のブロードウェイとでも呼ぼうか)の新しい店にでも食べに行こうかな。


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教師によるいじめ

2009-02-23 00:42:29 | Weblog
学力調査に反対する教師もいる。
様々な問題点もあるのだろう。
悩ましい問題点の解消に苦心する先生方には同情する。

だけど、反対だけしていては、なんと創造性のない人だろうかと周辺の人を脱力させてしまう。
学力調査では教師の教える技量が問われることになるから、保身のために学力調査に反対しているのではないかと見ている人も多い。

学力調査の狙いを曲解して「こんなに悪いところがあるんですよ」と的外れな指摘をして、自分たちが面倒なことをしなくていいように抵抗している教師も見受けられる。

教育の問題について、日教組の人たちにも十分時間は与えられてきた。
だけど、自力でよりよい教育を行うことができなかったのではないか。
(何々県の学校教育はフィンランド並みにすごい、などと聞いたことはない)

基礎学力のない生徒が増え続け、学力のある生徒はレベルの低い授業に満足できず私学に流れ、教える技術に進歩のない教師が増えている。
それを改善できなかったのに、大きな顔をして学力調査に反対するというのは、寂しい話だ。

結局、日教組の人たちはゆとり教育や総合的学習を創造的に活かすことはできなかった。
残念だけど、これは反省せざるを得ないだろう。

子どもたちが苦しまないように、より良い教育を考えてきたけれども、理想を形にすることができなかった。
それは悲しいけど、教師たちの資質にも原因がある。

教育に全然関心はないけど、教師一族に育ったものとして、私も反省したい。
(3身等以内に大学、短大、専門学校、高校、中学、小学校、幼稚園、保育園などの教師、元教師がいる。幼いときからその世界を目にして、私は公務員や教師になるのはやめておこうと思った)

教師が特別な人でなくなってから久しい。
これ以上無防備に恥をさらさないように、教師は行動に気をつけてもいい。

教育のプログラムについては、プロに任せてもいい。
教える方法や教える環境作り、教えるプログラム作りや学校経営のプロだと言える教師は多くない。

一般の会社では、会社組織の効率が悪くなり業績が下がると改革を試みる。
会社の組合はそれに反対することが多いけど、組合が抜本的な改革案を提示することはほとんどない。
会社の改革に反対している人は、めんどうなことを避けたいから、保身のために反対しているのではないかと周囲から見られてしまうことが多い。

つぶれそうな会社を組合の手に任せても、破綻してしまう可能性が高い。
コンサルタントや親会社のお偉いさんをいじめたりしないで、経営のプロにいちど任せてみてもいいのではないか。

自分たちの常識が壊されるようなことがあっても、まずは謙虚に学んだり働いたりすればいい。
そうしないと、自分の居場所もなくなってしまう。

私は、元リクルートの藤原和博さん(杉並区立和田中学校元校長、大阪府特別顧問)の取り組みとか、和民の渡邉美樹さん(学校法人郁文館夢学園理事長)の取り組みを驚きをもって見ている。
日教組の人などから見ると、教師の利益を破壊するひどい人を好奇心旺盛に眺めている私などは人でなしなのかもしれないけど、それは残念。

私は日教組を否定されるべき悪などとは決め付けないから、まあ、私の姿勢も「そんなのもありかな」と眺めてほしい。
藤原和博さんも渡邉美樹さんも興味深い試みを行っていると思う。

責任を持って、行動している人を私は尊敬する。
ダメだダメだと言うのは簡単。だけど、何かを作るのは非常に難しい。

いろんな音楽や絵や詩のことをダメだと言う人は、自分ではまともな音楽や絵や詩を作れない人が多い。
そんな人が多い社会は、知的レベルが高い社会だとはいえない。
日教組の人だって、そんな社会を目指しているわけではないだろう。

まずは、自分たちで何か作ってみる。
その出来がダメだったら、自分の価値観の保身に走るのではなく、潔く見識ある人の意見に耳を傾ければいい。

そういえば、むかし身内が管理職になるために日教組をやめたら、いじめに遭ったらしい。
はっきりいじめだとは言ってなかったかもしれないけど、私はそう認識した。
いじめに値するような態度、行動を行ったことのある教師もいるだろう。
仲間はずれとかシカトとか糾弾とか。

いじめはいけないとか、いじめられる人に一切非はないなどと理想を語っていても、教師だっていじめを行う。攻撃も行う。

広島の県立世羅高校で民間出身の校長が自殺する悲しい事件が10年ほど前にあったけど、当時の日教組、広教組というのだろうか、そこの代表者は自分たちに非はない、国だか県だかに非がある、ということを主張していた。
だけどそれを信じている人は少ないかもしれない。

今も広島県の教育委員会は民間出身の校長を募集しているけど、応じる人は少ない。
広島県の日教組は保身的で思想的で、外から来た人をいじめるではないかと恐れる人も多い。

広島は戦争で悲惨な目にあったから、国や政府に対して否定的な人も多いのかもしれない。だけどみんなもう判断力のあるいい大人なのだから、人をいじめたり人のせいにしたりしないで、自力で何かやってみましょうよ、と思うこの頃。

それにしても、教師に対しての教育から取り組まないといけないとしたら、文科省はたいへん。
日教組の人も、ぜひ子どもたちのために、文科省との協力を模索してみてください。
(そうしないと、将来的に公立の学校はなくなってしまうかも)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090222-00000068-jij-soci
■学力保障に懸念の声=全国学テへの批判相次ぐ-教研集会
2月22日19時54分配信 時事通信
 広島市で開催中の日教組教育研究全国集会で22日、「教育格差と学力保障」をテーマにした分科会が開かれ、約240人の参加者が議論し「切り捨てられる子供が増えている」「すべての子供に教育を保障するのが自分たちの仕事だったはずなのに」といった意見が出た。文部科学省の全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)も話題となり、成績公表などに批判が相次いだ。
 討論会でパネリストだった広島県の小学校に勤める森崎賢司教諭は「集中力がない、生活環境がよくないなどの『しんどい』子供に教育保障ができていない」と強調。教室になじめない児童が校内の相談室で過ごし、十分な指導を受けられていない例を挙げた。
 東京都杉並区の男性教諭は「(国や自治体が)学力を点数化して学校を互いに競わせる中で、現場では、できない子供が切り捨てられるようになった」と訴えた。 

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東京マラソンまであと1か月(ドクター中松ハウスまで走った)

2009-02-22 21:27:31 | Weblog
2009/3/22の東京マラソンまであと一か月。
仕事が忙しく帰りも遅いので、準備は進んでいない。
1日に5キロ以上走った日は今年に入ってまだ3日しかない。
健康診断の再検査では中性脂肪やコレステロールが多すぎるという結果が出てるし、お腹はひっこまないし、いよいよ追い込まれた状況になってきた。

先日、思い切って自宅アパートから恵比寿駅まで5キロも走って行ったけど、足が痛くなって1週間も走るのを休んでしまった。
先週は2回ばかり代官山まで走ったけど、花粉症の症状がひどく、目もかゆく、体も重く感じて気持ちよく走れない。

いつもは深夜に走ってるけど、今日はちょっと夕方に走ってみた。
たまには方向を変えて、東横線の学芸大学にも近い世田谷区下馬のドクター中松ハウスまで。

・ドクター中松ハウス
東京都世田谷区下馬6丁目31の10

環七を南下して駒沢通りとクロスする直前、右手に「華空間」というレストランが見えるところで左折。
住宅街をまっすぐ東西に貫く道、これはドクター中松街(Dr. Nakamats Ave.)と名付けられているらしい。もちろん、ドクター中松氏の自称。

・華空間 柿の木坂本店
http://www.hanakukan.com/tokyo-top1.html

しばらくゆるやかな下り坂を走ると、ドクター中松ハウスの脇に立っていると標識を発見した。
写真では見たことがあるけど、かなり目立つ。
ドクター中松邸から南北にのびる市街地の道は、ドクター中松通り(Dr. Nakamats St.)。
東西にのびる道はドクター・中松街(Dr. Nakamats Ave.)と名付けられている。

ドクター中松ハウスの建物にはドクター中松のオフィス以外のテナントも入っているのか、ドクター・中松スクエア(Dr. Nakamats Square)と言うらしい。

まるで本物の標識のようなつくりだけど、ドクター中松ハウスの敷地内に設置してある。
通りの命名も、ドクター中松、中松義郎さんの発明の一つなのだろう。
「通りに自分で名前を付けたっていいじゃないか、勝手に名前を付けたらだめだという法律があるのか」という感覚なのかもしれない。

いったいドクター中松さんがどのような発明をどのような収入に結び付けているのか知らないけど、こんな豪邸を作ることができるのはすごいものだと思う。
一般的には、正式な博士号を持っていない発明芸人だと思われているかもしれないけど、発明で生活できているのはすごいことだ。
マラソンをしても疲れない靴とかパンツとかドリンクも発明してもらえないだろうか。

それはともかく、ドクター中松通りを北上して帰路に。
道沿いには豪邸も多い。
むかし東京に出てきたころはどの程度が豪邸なのかよくわからなかったけど、大体敷地が50坪以上の一戸建てで5LDK以上っぽくて車庫に高級車があれば東京の豪邸という感じだろうか。
田舎だったら50坪以上の庭に庭師の手の入った庭木があって、母屋が8LDK以上で敷地の入り口に門があって、蔵なんかもある家が豪邸っぽいけど、そういう家は東京ではほとんど目にしない。

それにしてもあと1か月でなんとかマラソンに耐えられる体にしなくては。
42.195キロに耐えられる膝を作らなくては悲惨なことになりかねない。

東京マラソンを2回走って感じた、自己流のマラソンのコツをメモしておこう。

1.息の上がらない速さで走る。
息が上がってしまうと走るスピードが大幅に落ち、疲労を感じる。できるだけ息の上がらないスピードを持続させたい。できれば、最初の10キロは60%の力。20キロまでは70%の力。30キロまではなんとか80%の力で乗り切って、少しでも余力を残して後半に臨みたい。

2.本番では膝や足のテーピングを行う。
どうしても走っていると膝や脚に負担がかかる。テーピングを膝やふくらはぎやモモや足先などにしておくと、おどろくほどダメージが軽減される。テーピングを行わないで初心者がいきなり根性でマラソンを走ると、一昨年のぼくのように膝を痛め数日間歩けなくなってしまうかもしれない。

3.足や体に負担をかけないフォームで走る。
スムーズに体重移動を行い、長時間は知り続けるには、フォームが重要。体を上下させすぎたり、手を振りすぎて体をひねりすぎたり、足を上げすぎたり猫背で走ったりして無駄に体力を使う必要はない。できるだけ省エネ走法を試みる。

4.給水ポイントでドリンクや水を飲みすぎない。
紙コップになみなみと注いでくれるボランティアの人も多いけど、3分の1杯も飲めば捨ててしまえばいい。まるまる1杯飲んでしまうと、水分取りすぎになる恐れがある。水分を取りすぎるとトイレに行きたくなってしまい、タイムをロスする。

5.シューズは重すぎないものを履く。
初心者用のシューズは重いものが多い。初心者はかかとをがんがん地面にぶつけながら走る人が多いので、靴底が分厚いものが多い。だけど、かかとをあまり地面にぶつけない、スムーズなフォームで走ることができるようになれば、中級者用の、やや軽めのシューズで走ればいい。重いシューズは、足を疲れさせるおそれがある。

6.音楽を聴きながら走れば飽きない。
iPodなどで音楽を聴きながら走ると退屈な風景も気持ちよく見えることがある。単調なマラソンの中で意欲を維持するために、音楽は有効。マラソンの前にいろんなアーティストの曲をiPodに入れ、ジョギングをしてみる。そこで、自分の走るリズムに合ったアーティストたちの曲を5時間分くらい入れておく。注意点としては、後半に激しいロックなどを入れないこと。威勢がいい音楽に自分の足がまったく付いてこず、もどかしさを感じてしまう恐れがある。

7.マラソンの前に栄養ドリンクを飲む。
マラソンにドーピング検査はない。マラソン直前に、栄養ドリンクを2~3本飲んでおいてもいい。糖分や栄養素を補給できるし、カフェインなどの作用でちょっとハイになって疲れを感じにくくなるかも。


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中国で11年の刑期を終えたトフティさん(東大大学院の留学生)が日本に戻れますように

2009-02-11 22:47:54 | Weblog
以前、日本シルクロード倶楽部という団体のサイトを見たことがある。
この団体はウイグル人留学生と交流や支援を行っていて、毎年新宿の京王百貨店屋上のビアガーデンではウイグルの踊りと音楽のイベントを行っていた。

星空の下、大ジョッキを飲みながらウイグル族の踊りを目にし、ぼくはシルクロードへの思いを強めた。
旅に行く前に一度ウイグルの人に会ってみたいと思い、日本シルクロード倶楽部の人と連絡をとったこともある。
いつでも事務所に来ていいよ、という返事もいただき、後楽園近くのマンションの一室の近くまで行ったことはあるけど、恥ずかしくて足を踏み入れることはなかった。(人見知りしすぎ)

その後、2003年の秋に2週間余りシルクロードを旅した。
上海から西安までは夜行の特急。
そこからウルムチまでは急行電車の2等硬座で約48時間。
向かいの席にはイーニンという国境の町に赴任する武装警察の若者が、カーキ色の制服姿のまま座っていた。

通路ではおばさんが幼児におしっこをさせたり、窓から空き瓶をぽーんと投げたり、みんなでカップラーメン用のお湯を取りあったり、夜はぼくの座席の下におじさんが寝ていたり、なかなか刺激的な旅だった。
せっせとクルミの薄皮をむいては手渡してくれた女の子たちは元気だろうか。
住所をメモしてもらったけど中国語が書けないので連絡を取っていない。

ウルムチは大都会。4星ホテルのフロントの中国人女性はすました感じで流暢な英語をしゃべる。
住民の半数以上は移住してきた漢民族らしい。
翌日ぼくはすぐにタクラマカン砂漠を縦断するバスに乗り、ホータンという町に向かった。

ウルムチからホータンまで約2千キロ。約24時間。
タクラマカン砂漠の真ん中の宿場町で食べたラグマンは、讃岐うどんにトマトソースで炒めた野菜と羊肉が乗っている印象。コシが強くておいしい。
バスを降りて砂漠の真ん中で夜中に立ちションをした時には、衝撃的なまでに迫ってくる満天の星と天の川を目にした。

タクラマカン砂漠の南に位置するホータンの人々は中央アジア的というか中東的というか、濃い顔立ちの人が多い。
漢民族の血があまり入っていないのだろう。

町の中を歩いていて市場のあたりで帰り道を見失ってしまい、ウイグル族のおじさんたちに道を聞いていると漢民族の警官がやってきた。
外国人がややこしいことに巻き込まれると面倒だと思ったのか、ホテルまでパトカーで届けてくれた。
パトカーといっても、タクシーのように乗り心地はよかった。しかも無料。

それからタクラマカン砂漠の南側沿いに8時間くらいバスで移動して、ヤルカンドという町に向かった。
若い兵士を満載したトラックが、地元民の乗るバスを追い抜かして行った。

ヤルカンドもきれいに町並みが整備されている。
ごちゃごちゃした路地が好きなのだけど。
路地の混沌を支配者は恐れるのかもしれない。
見通しのよい碁盤目状の都市のほうが支配に便利なのだろう。

それでも路地を見つけて歩いていると、子どもたちが集まってきた。
写真を撮ると、満面の笑みを見せてくれる。
男の子も女の子も。
中には目の青い、白人系の血の入った子もいる。
天真爛漫な彼女たちが、大人になっても笑顔でいられるように願う。

新疆ウイグル自治区では、大人の笑顔はあまり目にしなかった。
乾燥地帯だから、皮膚のしわが刻まれるのが早いのかもしれないけど、何か、あのしわには植民地の被支配者としての悩みが刻まれているようにも感じる。
街角では聾唖者の若者の手話での喧嘩も目にした。
おとなしそうなウイグル人だけど、心の中には鬱積したものもあるのかもしれない。

ヤルカンドからカシュガルまでは数時間だっただろうか。
新疆ウイグル自治区の西端の都市カシュガルはアフガニスタンやキルギスやタジキスタンなどにも近く、漢民族が比較的少ないので独立志向も強いと言われている。

ぼくはバザールでおしゃべりなカザフ人か何人かの商売人からオオカミの歯の首飾りを買ったり、屋台で絞りたてのザクロジュースを飲み干したりした。

クチャやアクスなどを経てウルムチに戻ってからは町をうろうろしたり、観光地のトルファンなどに行ったりしたけど、面白かったのはウイグル民族の文化が色濃いカシュガルやヤルカンド、ホータンといったタクラマカン砂漠南部から西部にかけての辺境の地だった。

そのカシュガル出身の東大大学院生が長く中国で服役していた。
中国に一時帰国して文献を集めていたら逮捕されてしまったらしい。
中国当局と通じている中国人留学生に密告されていたのかもしれない。

東大大学院の先生はずっと教え子のことを気にかけて何度も中国に足を運んだらしい。
それでも国家分裂扇動罪での懲役11年は覆らず、トフティさんは獄中生活を余儀なくされた。

ようやく刑期を終え、担当教官だった名誉教授も再会を楽しみにしていたと思う。
だが、出所の日早朝から刑務所前で待っていた佐藤次高名誉教授たちは、トフティさんに会えなかったらしい。

中国当局もつれないことをするものだ、と思う。
トフティさんや支援者たちは、中国の国家転覆を望んだりしない。
中国には中国の事情があり、やむを得ず行う規制や指導が多いことを知っている。

今後、中国政府にとって信頼できるのは、中国に対してまったく意見を言ってこない人たちではない。
事なかれ主義で文句を言ってこない人はすぐに裏切るおそれがあるし、何かの思想的背景あるいは信仰によって対立しない人は立場が代わればすぐ敵対者になる恐れがある。

中国政府にとって信頼できる人は、中国の事情もよく知っていて、時には中国の立場を代弁して擁護してくれるけど、時には友人として意見を言ってくれる人たちだと思う。
言ってみれば知中派。
ぼくはそのような立場になりたい。

親友は中国出身だし、中国のことを興味深いと思っているから、中国を敵視したり見下したり拒絶するのは寂しいことだと感じている。

日本の破壊活動防止法には反対するけど中国の国家転覆罪には反対しないという人のことを、ぼくはあまり信頼していない。
国家の組織維持に不利益を生じさせる者を拘束することに反対する、というポリシーがあるのであれば、日本だろうが中国であろうかアメリカであろうが関係なく反対すればいい。

他民族を侵略することに反対するのであれば、旧満州国(偽満)にもウイグルにもチベットにもバスクにもタイ南部にもダルフール地方にも、同等に目を向ければいい。

自分の所属する国家の悪事にだけ文句を言って他国のことは知らん振り、という態度では、自分の所属する国家に不満があるけど他国に行く勇気もない視野の狭い保守的な人だと思われてしまう。
物事の事象を目にしても構造を把握しようとしない人だと判断されてしまう。

国家を相手にこぶしを上げて自分のストレスが解消されるのならそれでもいいけど、「本当は国家組織の怖さや植民地の辛さを考えているんじゃないでしょ、自分のストレス解消がしたいだけでしょ。本気じゃないでしょ」と思われてしまう。

だから、アムネスティ・インターナショナルやアメリカの民主党はまだ筋が通っていると思う。
彼らは、物事の構造を見て、意見を言おうとしている。
どこの国のことであっても、政治犯や死刑制度や拷問に反対している。

日本の、進歩的文化人とか保守論客とか市民団体とか右翼団体は、筋が通っていないことが多いと思う。
日頃人権がどうのこうのと言う人は、なぜトフティさんの件について口ごもってしまうのか、自分なりに考えてみたりしないのだろうか。
人々が幸せに暮らせることよりも、何かを上位に置いているのではないかと思う。

日本の親中派や知中派の人も、今こそ、トフティさんのことについて発言すべきときだと思う。
そうすれば、今より支持者も増えるのでは。

中国政府も、トフティさんを自由にしてあげればいい。東大大学院に戻してあげればいい。
その行為は、中国の懐の深さとフェアな精神を示し、中国にとって不利益にはならない。
中国は怖い国なんだ、と他国に宣伝しなくてもいい。

トフティさんが、東大大学院に戻り、いつか学者として活躍されることを祈ります。

<参考>
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&rel=j7&k=2009021000420
■中国で11年の刑期終え出所=ウイグル族の東大院留学生
 【北京10日時事】東大大学院に留学中、一時帰国した中国で国家分裂を扇動したとして逮捕、投獄されたウイグル族のトフティー・トュニヤズさん(49)が10日、11年の刑期を終えて新疆ウイグル自治区ウルムチ市の刑務所を出所した。トフティーさんの早期釈放を求め支援活動をしてきた佐藤次高東大名誉教授らが刑務所に確認したところ、トフティーさんは姉とともに、親族のいる町に向かったという。
 トフティーさんは同自治区カシュガルの出身で、北京で大学を卒業し、研究活動をした後、日本に留学。東大ではウイグル民族史を研究していた。一時帰国中の1998年2月、中国当局に拘束され、新疆の公文書館で歴史資料目録をコピーしたことや出版を予定していた書籍の内容が国家分裂扇動などの罪に当たるとして懲役11年の判決を受け、服役していた。(時事通信 2009/02/10-13:19)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090207-00000047-san-pol
■トフティ氏、釈放へ 中国で逮捕のウイグル人東大留学生
2月7日8時5分配信 産経新聞
 東大大学院に留学中の平成10年2月、一時帰国中の中国で国家分裂を扇動したとして逮捕されたウイグル人の少数民族研究者、トフティ・テュニヤズ氏が10日、11年の刑期を終えて釈放されることが分かった。ただ、中国当局は釈放後も国内にとどめたい意向とされ、トフティ氏が、妻子のいる日本にすぐ戻ることができるかは不透明だ。
 トフティ氏の逮捕に関しては当初から不当性が指摘され、留学先の東大や民間支援団体などが釈放を訴えてきた。国連人権委員会も2001年5月、トフティ氏への有罪判決は世界人権宣言や国際人権規約に反するとして、中国に善処を求める勧告を行った。
 また、昨年5月の胡錦濤国家主席来日時、安倍晋三元首相が「彼の奥さん、家族は日本にいる。無事釈放され、日本に帰ってくることを希望する」と要請、胡主席が「その件は知らないので正しい法執行が行われているかどうか調べる」と答えたこともあった。
 関係者によると、安倍氏の発言以降、刑務所ではトフティ氏の布団など身の回りの品が一新され、待遇が改善されたという。
 トフティ氏の妻、ラビヤさんは長男とともに今月5日付で日本国籍を取得した。

http://www.l.u-tokyo.ac.jp/~toyoshi/tohti.html
■「トフティさんを救おう!」東京大学東洋史学研究室

http://napuusha.seesaa.net/article/43455441.html
■日本シルクロード倶楽部の閉鎖について(2008.5)
(略)日本シルクロード倶楽部の事務局を閉鎖をしなければならなくなりました。振り返りますと、新疆ウイグル自治区の皆様とご縁を頂いてから16年になります。
 94年に事務局を立ち上げ、日本人として「義を見てせざるは勇なきなり」の気持ちで、留学生に対する多少の援助等の活動をやらせて頂きました。
 世界の情勢はめまぐるしく動き、見方によると、倶楽部の立場も微妙に変化し、残念ながらこれ以上開いていると、留学生に迷惑がかかる事態も予想されます。そのことは、事務局を預かる小生の本意ではありません。

■帰らない大学院生-獄中から無実の叫び
(京都新聞 2002年10月5日夕刊)
http://www.kenkenfukuyo.org/data/kaihousha/Uygur/index.html


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文科省は漢検に立ち入り検査を行う。経産省はTOEICに立ち入り検査を行うのか。

2009-02-07 16:46:31 | Weblog
年明けから漢検がたいへんなことになっているようだ。
年末に漢検協会の理事でもある清水寺の森清範貫主が大きく「変」と報道陣の前で書をしたためていたのが印象に残っている。
漢検協会でもひそかに「変」なことが進行していたのだろうか。

文部科学省の管轄している財団法人である日本漢字能力検定協会は、多額の利益を上げていた。
不景気な時代に景気よく儲ける企業があってもいいと思うけど、財団法人は公益法人だから、多額の利益を上げてはいけないらしい。

財団法人は税金も優遇されているから、財団法人を利用して金儲けをするのは不適切なことだと文部科学省の人も認識しているのだろう。

漢検協会は2003年度から5年間で計約20億円もの利益を得ていた。
文科省から何度も検定料の引き下げなどの指導を受けていたけど、抜本的な改善を行わなかったらしい。
(別の報道では2006、07年度だけで合計約15億円の利益を上げていたそうだ)

2/7土の読売新聞朝刊には
「協会の大久保昇理事長と大久保浩副理事長がそれぞれ代表を務める計4社に対し、同協会が広報活動や採点業務などで2006年4月~08年12月の間に計約66億円の業務委託費を支払っていた」
とある。

関連会社に3年で66億というのも、おそらく割高な支払いだったのだろう。
相見積もりを取ることもなく、身内の会社が儲かるようにしていたはず。
だが、文部科学省の公益法人指導基準では、公益法人が法人関係者に有利になる取引を結ぶことは禁じられているらしい。

漢検協会も利益を隠すために、広告費を増やしたり会場費を高く払ったり職員のボーナスをはずんだり、関連会社に高値で仕事を依頼したり、様々な努力をしたと思う。
それでも使い切れないくらい儲かっていたのだろうか。

漢検協会の決算報告書は下記のページで簡単に印刷できる。
(TOEICの決算報告書は印刷できない)
・平成19年度決算報告書
http://www.kanken.or.jp/kan_towa/h19report.pdf

漢字検定協会の理事の方々も、文部科学省から指導が来ているということは認識していたのではないだろうか。
理事には高名な方々が並んでいるけど、運営を適正化しようとしなかったのだろうか。

財団法人日本漢字検定協会
理事長  大久保昇
副理事長 大久保浩(事務局長)
理事   明石康(元国際連合事務次長)
理事   犬丸直(日本芸術院顧問)
理事   坂井利之(京都大学名誉教授)
理事   千玄室(茶道裏千家家元・大宗匠、日本国連親善大使)
理事   水谷修(名古屋外国語大学学長、元国立国語研究所長)
理事   森清範(清水寺貫主)
評議員  梅原猛(国際日本文化研究センター顧問)
評議員  菊池明(全日本中学校国語教育研究協議会顧問)
評議員  倉澤栄吉(日本国語教育学会会長)
評議員  杉戸清樹(独立行政法人国立国語研究所長)
評議員  野間佐和子(株式会社講談社代表取締役社長)
(略)

そういえば漢検協会の理事や評議員にはちらっと見ただけは文部科学省出身の人が見当たらない。
むしろ外務省や経済産業省とのつながりがある人の名前がある。
だけど、文部科学省の天下りを受け入れないから摘発した、というようなケチな心で今回の騒動になったのではないと思う。
日本英語検定協会も文部科学省管轄の財団法人だけど、文部科学省からの天下り理事などはいないし。

だが、ふとこう思った人は多いはずだ。
「TOEICはどうなってるの? マークシートだけのテストだし、受験料高いし、かなり儲かっているでしょう」と。

そこで、漢検と英検と、TOEICを日本で実施・運営している財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会の決算をちょっと見てみたい。

・財団法人日本漢字検定協会 平成19年度決算報告書
http://www.kanken.or.jp/kan_towa/h19report.pdf

・財団法人英語検定協会 平成19年度収支決算書
http://www.eiken.or.jp/step/pdf/19outline04.pdf

・財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会 平成19年度財務諸表
http://www.toeic.or.jp/iibc/19_23zaimu.pdf

★財団法人日本漢字検定協会
平成19年度
■事業活動収入        71.5億
(漢字能力検定事業収入   60.0億)
■事業活動支出計       63.7億
(事業費支出計       61.6億)

★財団法人日本英語検定協会
平成19年度(2007年度)
■事業活動収入        62.2億
(実用英語技能検定収入   59.4億)239.7万人
■事業活動支出        58.9億
(事業費支出        54.3億)
(管理費支出         6.0億)

★財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会TOEIC運営委員会
平成19年度(2007年度)
■経常収益計         65.5億
事業収益(能力評価実施事業) 64.4億
(定期テスト受験料     35.8億)71.1万人
(企業別テスト受験料    25.2億)92.4万人
(ブリッジテスト受験料    3.1億)15.1万人
(S&Wテスト実施費     0.2億)4178人
■経常費用計         64.2億
事業費(能力評価実施事業費) 56.3億
(募集費           8.9億)
(定期テスト実施費     19.2億)
(企業別テスト実施費    13.1億)
(ロイヤリティー支出     8.2億)
(ブリッジテスト実施費    3.1億)
(S&Wテスト実施費     3.1億)
(指導相談事業費       1.6億)


漢検は事業活動で8億弱儲けている。
英検は3億強。TOEICは1億強。
あれ? TOEICは儲かっていないのだろうか。
広告費やロイヤリティが高いのかな。
テスト実施費がかなり高い気もする。
どこかに割高な料金でお金が流れてはいないだろうか。

平均受験料を見てみよう。2007年度のデータによると、
漢検は1級から10級まで合わせて、平均2207円。
英検は1級から5級まで合わせて、平均2478円。
TOEICは、定期的な公開テストが、平均5033円。
企業などで行われる団体テストが、平均2732円。
公開テストと団体テストの合計では、平均3733円。

漢検は1級から10級まで試験がある。問題作成に時間もお金もかかる。
英検も1級から5級まで試験がある上に、2次試験に面接まであるからお金もかかる。
漢検や、英検の上位級では記述問題もあるから採点する手間もかかる。

だけど、TOEICはマークシートだから、機械で一気に採点できる。問題はアメリカのETSが作成している。
なぜ受験料が英検や漢検の倍以上、5033円も必要なのか。高すぎる。
ちなみに、公式にはTOEICの受験料は6615円(うち消費税など315円)。

私は漢検や英検は受けたことがないが、TOEICは2度ばかり受けた。6000円以上払って。
企業での受験だと3000円以下で受けられるというのはうらやましい。
企業に対しては、受験者数を増やすためにダンピングを行っているのだろうか。
公開テストの受験料ももう少し下げてもらえるとありがたい。

それにしても、あれだけの受験者数があるのであれば、受験料が3千円以下、下手したら2千円以下でも利益を上げることができるはず。
なぜあれほど支出が多くなるのだろう。

韓国では公開テスト受験料が3万4000ウォン。2/7現在の為替で2275円。
一昨年、ウォンが強い時期でも4000円前後だった。
(TOEICの受験者は韓国人と日本人がほとんどだとか)

ちなみに、(財)国際ビジネスコミュニケーションズの周辺には様々な株式会社がある。
もっとも大規模なのは(株)国際コミュニケーションズ・スクール。他にも山王グランドビルには関連会社が入居していたと思う。

株式会社国際コミュニケーションズ・スクールは、学校や企業向けの営業活動を担当している様子。なぜ財団の中で営業活動、普及活動を行わないのだろう。公式サイトが見当たらないのも不可解。
この会社が以前、「国際コミュニケーションズ」という名前だったときはサイトもあった。

http://www.toeic.or.jp/privacy/privacy_05.html
■関連機関のプライバシーポリシー
(株)国際コミュニケーションズ・スクール(以下、当社といいます。)は(財)国際ビジネスコミュニケーション協会からの業務委託を受け、企業・団体・学校の窓口として、団体特別受験制度(IP:Institutional Program)ならびに公開テスト団体一括受験の普及促進、実施運営をサポートしております。


とにかく、TOEICの受験料は高いと感じる。
十分利益は上がっていると思う。

経済産業省の管轄する財団である国際ビジネスコミュニケーションズ、TOEIC運営委員会には文部科学省は立ち入り検査を行うことができない。
国際ビジネスコミュニケーションズの会長は通産省(現・経産省)出身だし、監事も通産省出身。

経産省にも存在感を示すようになったTOEICに対して、経産省はなかなか指導を行うことができないかもしれない。

もし、すでに指導が入っているのであれば、高名な理事の方々は、責任を問われる前に早く受験料の値下げに動いたほうがよいのではないかと思う。

ちなみに、2007年度の役員報酬は総額で7756万円。給料諸手当は9249万円。
あるいは理事という地位はお金をもらうけど経営に苦言を呈さない、お飾りの職なのだろうか。

■財団法人国際ビジネスコミュニケーションズ
理事(常勤)
会長 渡辺 弥栄司 (元通商産業省通商局長)
理事長 室伏 貴之
専務理事 吉澤 誠司
常務理事 梅澤 直臣

理事(非常勤)
有馬 利男 富士ゼロックス株式会社 取締役相談役
大山 綱明 財団法人日本関税協会 副会長(元大蔵省関税局長)
後藤 尚雄 朝日新聞社 役員待遇 事業・国際・出版事業担当
小林 英三 アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社) 副会長
佐竹 茂紀 日本電気株式会社 執行役員 人事部長
清水 哲太 愛知県公立大学法人 理事長
延原 和良 株式会社電通 上席常務執行役員
平原 一雄 財団法人東洋学林 理事長
平山 喜三 新日本製鐵株式会社 常務執行役員

監事(非常勤)
山田 康博 独立行政法人日本貿易振興機構 理事(元通産省課長補佐)
横尾 賢一郎 社団法人日本経済団体連合会 国際第二本部本部長


<参考>
http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20090206-OYO1T00648.htm?from=main1
■文科省が、漢検協に9日、立ち入り検査へ
 財団法人「日本漢字能力検定協会」(京都市下京区、大久保昇理事長)が公益事業では認められない多額の利益を上げるなどしていた問題で、文部科学省は9日に同協会へ立ち入り検査に入ることを決めた。同省は多額の利益や不動産取引が公益法人としての事業内容に抵触する可能性があるとみており、同協会の財務状況や不明朗なカネの流れについて調べる。
 同協会は、利益を上げることが認められていない検定事業などで、2003年度から5年間で、計約20億円の利益を得ていたことが発覚。同省が再三、検定料の引き下げなどを指導したが、抜本的な改善を行わなかった。また、大久保理事長が代表を務める広告会社「メディアボックス」(同市西京区)に、広報費など年2億~3億円の業務委託費を払いながら、同省に報告していなかったことも判明。
 03年に京都市左京区・南禅寺近くの住宅地に土地と建物を「資料館にする」として約6億7000万円で購入したが、住宅地のまま用途変更を行っておらず、同市右京区の天龍寺塔頭・宝厳院の墓園に「協会の発展に貢献した理事、評議員の供養塔」も建てていた。
 同省は、立ち入り検査で帳簿類を調べ、高額の利益の使途や、理事長らの関連会社との取引の経緯、土地や供養塔の必要性などを詳しく調査する。
(2009年2月6日 読売新聞)

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090122-00000048-yom-soci
■利益禁止の「漢検」20億円もうけ、経費3倍の検定料も
1月22日14時45分配信 読売新聞
 「日本漢字能力検定協会」(京都市下京区、大久保昇理事長)が、利益を上げることが認められていない検定事業などで、過去5年間に計約20億円の利益を得ていたことがわかった。
 経費の最大3倍の検定料を受検者から徴収していたという。
 同協会は1992年に旧文部省が財団法人として設立を許可した。こうした公益法人の指導監督基準は「公益事業で必要な額以上の利益を生じないようにすること」と定められており、文部科学省は近く、緊急の立ち入り検査に入ることを決めた。
 協会は、年末には、清水寺(同市東山区)で「今年の漢字」を発表することでも知られている。
 主な事業は1級から10級までの漢字検定で、受検志願者は当初12万人だったが、「検定ブーム」に乗り、2007年度には20倍以上の270万人に増大した。
 文科省によると、これらの事業により、協会は03年度から07年度にかけて最高で年9億円の利益を上げており、合計額は20億円にのぼる。
 文科省は04年以降、再三にわたって「対価が適正でない」として、級によっては受検者1人あたりの費用(約2100円)の3倍近くに設定していた検定料の引き下げなどを指導してきた。
 協会は07年度から検定料の一部を値下げして5000円~1500円としたり、昨年12月末には改善計画を回答したりしたが、文科省は具体的な対策ではないとして、立ち入り検査に踏み切ることを決めた。
 昨年12月に施行された新公益法人制度でも公益事業で利益を得ることは原則、禁じられている。内閣府公益認定等委員会事務局は「このままでは公益法人としての基準を満たさない。幅広く営利活動ができる一般法人として存続するためには、財産を別の公益事業に寄付するなどしなければならない」としている。
 同協会は読売新聞の取材に対し、「忙しくて答えられない」としている。
最終更新:1月22日14時45分



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温家宝首相はいい人かわるい人か(靴を投げられたりもするけど)

2009-02-07 11:25:20 | Weblog
中国でも景気が後退し、出稼ぎ農民労働者(民工)の失業が深刻化している。
中国政府は2月2日、世界的な景気悪化の影響で約2000万人の民工(農民の出稼ぎ労働者)が失業状態となっていることを発表した。
中国共産党中央農村工作指導小組弁公室の陳錫文主任は記者団に対して、「景気悪化により、約2000万人の農民工が職を失ったか、職を見つけられないまま故郷に帰っている」と述べたという。実際にはもっと多くの出稼ぎ労働者が失業しているのかもしれない。

つい先日、「大地の慟哭-中国民工調査」という本を読み終わった。
2005年1月に中国で「中国民工調査」として刊行され、2007年6月に日本語版が刊行。
定価は1890円だけど、古本屋で105円で買った。
2003年から2004年にかけての出稼ぎ労働者およびその子弟の問題が描かれている。
現在の中国の状況を知るには興味深い本だ。
出稼ぎ労働者やその子弟の悲惨な生活状況、ひどい扱われ方について読むと心が痛む。
後半は、民工不足や賃金の上昇、生活環境の改善などについても記述があり、少し明るさを感じることができた。

ただ、この中国民工調査という本は中国で発禁になっていない。
「中国民工調査」は、当局ににらまれて発禁になってしまった「中国農民調査」よりも、さらに政府に配慮した書き方になっているのかもしれない。

大地の慟哭-中国民工調査(PHP研究所発行)

温家宝(ウェン・チアパオ)国務院総理は1942年生まれ。
2003年に総理(首相)に就任した。
胡錦濤主席が大統領(president)、温家宝総理が首相(prime minister)、といった位置付けだろうか。
中国では比較的庶民に人気があるようだけど、日本ではあまり好意的に見られていないかもしれない。

2007年4月に訪日して国会で演説したとき、事前に配られた演説原稿から「戦後、日本が平和発展の道を歩んだことを中国人民は評価する」といった一文をとばして読んだことはニュースになった。

2008年12月に福岡を訪れた時は日帰りで、日本に10時間も滞在しなかったことも報じられた。
多くの日本人にとっては疎遠な印象の政治家ではないだろうか。

2009年2月2日には、ケンブリッジ大学での講演中に聴衆から靴を投げつけられたことが世界的なニュースになった。
(先日、イラク人記者がブッシュ大統領に靴を投げつけた事件を意識した行動なのだろう)

ロイター通信社では以下のように報じられた。
「中国の温家宝首相が2日、ケンブリッジ大で講演中、聴衆の男性から靴を投げられる騒ぎがあった。男性は温家宝首相を「独裁者」などと呼び、靴を投げつけた、という。靴は首相には当たらず、首相から1メートル離れた壇上に落ちた」

今回のヨーロッパ歴訪では、大統領がダライ・ラマ14世と会談したフランスには行かなかった。
自分たちのいやがることをする人たちは避ける、という行動パターンなのだろうか。
その手法が自分たちに利益をもたらすか、不利益につながるか、よくわからないが。

「なんだか面白みのない人かも、興味ないな」と感じる人も多いかもしれないけど、「中国民工調査」には心温まる話が載っていた。

「温家宝首相って冷酷でケチで打算的で何考えているかわからなくて自分の利益だけうまく誘導して形ばかりの笑顔でごまかしてズケズケと他人の領域を侵して知らん振りして、失礼で残忍でケシカラン男だ」とムカついている人は、精神安定のために、下記の話にも目を通してもらいたい。
温家宝首相にもいいところがあるのかも。
意外に話の通じる、心優しい人の痛みのわかる律儀な男かもしれない。


■「大地の慟哭(どうこく)-中国民工調査」 秦尭禹著p256~260

 二〇〇三年十月二十四日午後五時ごろ、三狭(サンジア)ダムの奥地のうねうねと延びている山の道を、数台のバスが万州(ワンジヨウ)区から雲陽県城(ユンヤンシエンチエン)方向へ走っていた。
 そのとき、車に乗っていた共産党中央政治局常任委員でもある温家宝(ウエンチアパオ)総理は、窓から流れる景色を見て、その日の出来事を思い出していた。その日は、午前十一時ごろ、彼は随行した国務院の関係部門の責任者とともに、重慶(チヨンチン)の万州(ワンジヨウ)についた後、移住民たちを訪問した。万州(ワンジヨウ)は三狭(サンジア)ダム地区で最も大きい移住民地区で、二十五万人が移り住んでいる。三狭ダムの工程が第三建設期という重要な時期だったので、順調に移民できているかどうか視察するためである。何軒もの移民宅に行った後、温家宝(ウエンチアパオ)総理はこのように感じた。
 「居住環境が改善されたといっても、人々の将来の生計については今後もよく考えなければならない。ダム地区の経済をさらに迅速に発展させなければならない」
 車が走る。たわわに実ったミカン畑を夕陽が照らし、丸々としたミカンがまるで小さな提灯(ちょうちん)のように緑の葉のあいだで煌(きら)めいていた。温家宝総理は「三狭ダムの農民の暮らしはどのようになっているのだろう」と思った。
 雲陽県城(ユンヤンシエンチエン)から約四十キロのところで、温家宝総理は道路のそばにいくつかの農家を見つけ、すぐさま車を止めた。そして、人々の様子を見に行った。
 でこぼこした泥だらけの狭い道に洽って、温家宝総理は随行の人たちを伴い、道路の下にある対照的な青々とした竹林の中の小さな村に入っていった。
 いくつかの溝を跳び越えて、ミカン畑や竹林を突っ切ると、十数分後、数部屋の古い農家が目の前に現れた。
 雲陽県(ユンヤンシエン)人と鎮龍泉(チエンロンチユアン)村の十組、三狭(サンジア)ダムの奥地の辺鄙(へんぴ)な山村である。
 「みなさん、われわれはお宅に上がらせてもらってもよいですか?・」
 温家宝(ウエンチアパオ)総理は、家の中でタバコを吸っていた一人の農民に気さくに問いかけた。
 田んぼでの仕事から帰ってきたばかりの農民・曽祥万(ツエンシアンワン)は、ズボンの裾をまくり上げて、泥のついた足をむき出しにして休んでいるところだった。人の声を聞いて、頭を上げたが、すぐには自分の目を信じることができなかった。彼は急いでお迎えに上がり、しっかり温家宝(ウエンチアパオ)総理の手をにぎり、「総理、テレビでしか見たことかありませんでした。まさかこんな辺鄙なところまできてくださるなんて」といった。
 「温(ウエン)総理が、俺たちの村にきた!」
 田んぼで働いていた農民は、噂を聞きつけて、曽(ツエン)の家に続々と詰めかけてきた。
 老人も若者も集まってきたのを見て、温家宝(ウエンチアパオ)総理はたいへん喜んでいた。
 「みなさん、座ってください。一緒にお喋りしましょう。私はみなさんの村の様子を知りたいんです」
 何人家族ですか?
 食べ物は充分ですか?
 飼っている豚はよく売れていますか?
 ミカンは一斤いくらですか?
 ダムに水がたまってから土地の調子はどうですか?
 子供たちはみんなちゃんと学校へ行けていますか?
 学校に行くのに一年にいくらかかりますか?
 電気代はいくらぐらいですか?・
 家で出稼ぎに出ているのは何人ですか?
 移民の保障は?……
 温家宝(ウエンチアパオ)総理はほほえみを浮かべながら、農民たちに生産や生活の状況を尋ねた。村民の堅苦しい気持ちは消え、言葉を交わしあい、総理を囲んで話が弾んだ。
 家の中はたびたび笑い声が上がり、村の静寂を破った。
 知らず知らずのうちに三十分以上経っていた。そのころには温家宝(ウエンチアパオ)総理は雲陽県(ユンヤンシエン)人と鎮龍泉(チエンロンチユアン)村の十組の状況をだいたい理解していた。やがて彼は村民に向かって、「他にどんな困ったことがありますか。どんなことをしてほしいですか」と聞いた。
 「総理、私は、出稼ぎについて話したいと思います」
 ずっと温家宝(ウエンチアパオ)総理の左に座っていた農家の女性・熊徳明(シオンダーミン)か、はにかみながらいった。
 温家宝(ウエンチアパオ)総理は彼女のほうを向いてこういった。
 「おっしゃいなさい」                     ・
 このとき、横にいた重慶(チョンチン)市委員会の書記・黄鎮東(フアンチエントン)も熊徳明(シオンダーミン)を励ました。
 「どんなことでも総理にありのままに話しなさい」
 熊徳明(シオンダーミン)いわく、現在の農民の収入は主に出稼ぎに頼っており、村でも多くの働き手が雲陽新県城(ユンヤンシエンチエン)で建築の仕事に就き、一年で五千~六千元程度の収入を得ているが、新県城(シンシエンチエン)センター広場の階段をつくっているときに、請負業者が欠配した給料をいまだに払っていない。熊徳明(シオンダーミン)の夫、李建明(リージエンミン)は、一年間も二千元余りの給料が支払われず、娘の学費に影響している。
 彼女の話を聞いて、温家宝(ウエンチアパオ)総理の表情が急に厳しくなった。
「政府は広場の階段の建築費を与えたとのことですが、請負業者たちが民工にお金を払ってくれないのです」と曽祥万(ツエンシアンワン)が話を続けた。
 温家宝(ウエンチアパオ)総理は眉を寄せ、しばらく考え込んでからいった。
「少ししたら、私が県知事と話をして、農民の金を必ず返させます」
 人々のあいだからすぐに熱烈な拍手が起こった。
「総理、ありがとうございます」
 恥ずかしそうにしていた熊徳明(シオンダーミン)が、このときはうれしそうに叫んだ。
 続いて、温家宝(ウエンチアパオ)総理は随行した幹部たちに心をこめて話した。
「現在の農民たちの多くの事情は、上層部から見ると取るに足らないことのようですが、彼らからすると大きなことなんです。毎日事務室に座っていて、農民の家に見に行ったりもしないで、どうして農民の苦難がわかるでしょうか」
 空は少しずつ暗くなり、寒さがひっそりと襲ってきた。しかし、村民の胸の内は温かかった。温家宝(ウエンチアパオ)総理は村民たち一人ずつに別れを述べ、楽しそうにみんなと一緒に記念写真を撮ろうといった。このとき、みんなは争って総理と握手したが、喜んでいた熊徳明(シオンダーミン)は、逆に人の後ろに隠れてしまった。
 「逃げないで」
 温家宝(ウエンチアパオ)総理は素早く歩み寄って、彼女と握手をして別れを告げた。このとき熊徳明(シオンダーミン)は両手を上げて恥ずかしそうにいった。
 「いま、ブタクサを刈ってきたばかりだから、手が真っ黒で汚いんです」
 しかし、総理はまったく気にせず、きつく彼女の荒れた手を握った。
 夕暮れのなか、単に乗った温家宝(ウエンチアパオ)総理は村の人々が車について走ってくるのを見た。彼はすぐに単を降りて、村人たちの手を握って改めてお別れをいった。村人の中には目に涙を光らせている者もいた。
 灯がともるころ、記者は雲陽新県城(ユンヤンシンシエンチエン)へ入った。温家宝(ウエンチアパオ)総理はまだ龍泉村(ロンチユアン)の人々のことを考えていた。県の責任者を見ると、彼はすぐ民工の給料欠配について問いただした。
 県の責任者いわく、「そういうことは確かにあります。主な原因は一部の請負業者が農民に金を渡さないからです。この件はちゃんと処理しなければならないと思います。必ず農民が満足するような答えを出します」。
 その夜十一時過ぎ、熊徳明(シオンダーミン)と夫は未払いだった二千二百四十元の給料を手にした。
                  (資料:新華社)


追記
中国には農民戸籍と都市戸籍の2種類の戸籍があり、農民がなかなか都市に移住できない仕組みになっているということを知らない日本人は意外に多い。
中国では都市と農村の格差は大きい。
中国の人が日本の農村に行くと、意外に電化製品も家も車も都市に比べて見劣りしないので驚くことがある。
中国の都市出身の人に会った時は「私はど田舎出身でね」というようなことをあまり言わないほうがいいかもしれない。無意味に見下されるおそれがある。
上海市出身の女の子と話をしていて「ぼくは田舎育ちで、子どもの頃ズボンの膝に穴があくと繕ってはいていた」と言うと信じられな~い、というような目をされたことがある。

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