波打ち際の考察

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波屋山人

現代用語の基礎知識の売上部数は数万部?

2019-07-15 18:17:37 | Weblog
かつて、『現代用語の基礎知識』は大ベストセラーとして多くの人に読まれていた。
実家の書棚にも70年代から80年代にかけての分厚い『現代用語の基礎知識』が何冊か置いてあったことを覚えている。

その後、イミダスや知恵蔵といった類似本が出てきたが、インターネットの普及などにより売り上げが減少し、休刊(事実上の廃刊)となった。
自由国民社の『現代用語の基礎知識』もだいぶ厳しい状況なのではないかと思う。
流行語大賞とタイアップ?して今も存在感を保っているが、おそらくイベントはユーキャンや広告会社が仕切っているのだろう。
社員の少ない自由国民社が、大きなイベントを仕切るのは困難だ。

現代用語の基礎知識がどのぐらい売れているのかちょっと気になったがネット上にはあまり情報がない。
ただ、2012年12月頃に、『現代用語の基礎知識』の編集長は売り上げが15万部程度だと言っていたらしい。
(もしかしたら、実売部数ではなく発行部数、あるいは公称部数なのかもしれない)

ちょっと調べてみると、2011年の11月に刊行された『現代用語の基礎知識』2012年度版は、紀伊国屋書店全店で1年間に2500部弱売れている。
その前年に出た2011年度版も同じぐらいの売り上げ部数だ。

ところが、2018年11月に刊行された2019年度版は、1年間で1千部に届かない見込み。
2011年度版や2012年度版に比べると、同時期の売り上げが40%ほどにしかならない。

編集長が「15万部出ている」と言っていた時期に比べて60%ほど売り上げが減っているとすると、現在の売り上げは6万部ほどではないかと推測できる。

かつて、紀伊国屋書店での売り上げは全書店の売り上げの5%に達すると言われていたことがある。
近年はアマゾンに追い抜かれて影の薄くなってきた紀伊国屋書店だけど、まだそれなりのシェアを保っている。

シェア5%と仮定し、1千部を20倍すると2万部になる。
しかし、現代用語の基礎知識が2万部しか売れていないということはないだろう。

ちなみに、2018年1月に刊行となった広辞苑第七版は、1年半で7800部弱売れている。
紀伊国屋書店のシェアを5%だと推定すると、全国での売り上げは15万6千部と推定できる。
広辞苑は初版20万部止まりで増刷されていないらしいから、少なくとも売り上げは20万部以下。
紀伊国屋書店で広辞苑の8分の1以下しか売れていない現代用語の基礎知識は、2~3万部しか売れていないのかもしれない。


どちらにしても、現代用語の基礎知識ほどの厚い本を作るのは、かなり原価がかかる。
売り上げが2~3万部、あるいは5~6万部だったとしても、広告が入らないと人件費や原稿料を下げても大赤字なのではないだろうか。
部数が減ると広告も減る。売り上げが減ると人件費や原稿料を払うのも困難になる。

「週刊金曜日」や「現代の理論」などのように、使命感をもった筆者がボランティアで支えるような、非営利の道を目指す方法もあるだろうと思うが、タダで原稿を書いてくれるような人は少ないだろう。

現代用語の基礎知識は2019年度版を最後に大幅リニューアルとなるらしいが、まだ具体的な内容の発表はない。
もしかしたら、紙をあきらめ、オンラインでの情報提供になるのかもしれないと推測する。
流行語大賞を運営しているユーキャンや広告会社も、現代用語の基礎知識の名前がなくなることは避けたいだろう。
どのような方向に進むのか注視したい。


<参考1>
https://m-dojo.hatenadiary.com/entry/20161202/p2
> 実は、こんな記事をネットで見たのだけど(というかこれ以外しかみつからない)、今現在にいたるまでの「現代用語の基礎知識」の部数の推移、ご存知の方は教えてください。
>
> 「現代用語の基礎知識」の売り上げに見る教養の崩壊 - 笑いの飛距離 http://notei.hatenablog.com/entry/20130118/1360277429
>
> 藤木「去年(2012年)のね、12月の頭ぐらいかな、自由国民社っていう出版社があるんですけども、『現代用語の基礎知識』っていう」
> 江藤「はい」
> 青木「流行語大賞ですね」
> 藤木「そうですね、それをやってるとこなんですけども、あの〜、その『現代用語の基礎知識』の編集長に取材してきたんですよ、で、そのときに出た話で興味深かったことがあって、曰くね、まあ『現代用語の基礎知識』って、一番売れたのが’86年ぐらいで、65万部ぐらい出てたんですよ」
> 江藤「はい」
> 藤木「65万部って3000円ぐらいの本ですから、65万部とか売れたらものすごい数ですよね」
> 青木「そうですね」
> 藤木「それがね、90年代で30万(部)になり、今は15万(部)ぐらいしか出てない、4分の1に」
> 江藤「へぇ〜」
> 藤木「まあ、それでもね、3000円ぐらいの本で15万部出てたらそれはもう、今は大優等生ですけども、それでもやっぱり4分の1ぐらいに減ったわけですよね」

<参考2>
https://www.j-cast.com/2019/04/23355987.html?p=all
■「現代用語の基礎知識」72年目の転機へ 大幅リニューアルに向け準備、「休刊」は否定
2019/4/23 12:14
> 「ユーキャン新語・流行語大賞」の選出元としても知られる「現代用語の基礎知識」。その同書が大幅なリニューアルに向けて調整中であることが分かった。
> 筆者らへの手紙には「いったんお休み」の表現もあるものの、編集部側はJ-CASTニュースの取材に対し「休刊」を否定。具体的なリニューアル内容については、今後改めて発表するとしている。

<参考3>
https://hatenacorp.jp/press/release/entry/2005/07/11/000000
2005-07-11
■株式会社自由国民社 会社概要
> 会社名: 株式会社 自由国民社
> 本社: 東京都中央区銀座4-10-6 〒104-0061
> TEL 03-3543-5541(代)
> FAX 03-3543-5551
> 販売センター: 東京都荒川区町屋1-36-8 〒116-0001
> 創業: 1928(昭和3年)8月、サラリーマン社として発足
> (創業者/故・長谷川國雄)
> 資本金: 4,950 万円
> 代表者: 代表取締役社長 横井秀明
> 従業員数: 27名

<参考4>
https://mainichi.jp/articles/20180104/mog/00m/040/007000c
■岩波書店:「広辞苑」10年ぶり改訂 担当者が明かす知られざる魅力 - 毎日新聞
> 2018年1月4日 17時35分(最終更新 1月9日 11時42分)
> “言葉の百科事典”とも言われる「広辞苑」が10年ぶりに改訂され、今月12日に出版される。<へそくりは妻の読まない広辞苑>なんて川柳を新聞の片隅に見たことがあるけれど、広辞苑を開かないのはもったいない。岩波書店辞典編集部副部長で辞書編集歴20年余の平木靖成さん(48)に聞いた、広辞苑の知られざる魅力とは……。【小国綾子/統合デジタル取材センター】
(略)
> とはいえ、さすがの広辞苑も部数は少しずつ減ってはいる。インターネットで言葉の意味も類語も簡単に検索できる時代だ。“紙離れ”はどうやっても止められない。発行部数は第4版で220万部、第5版で100万部、第6版では50万部。

<参考5>
https://www.asahi.com/articles/ASL1D4TC3L1DUCLV00G.html
■広辞苑第7版が発売 10年ぶり改訂、1万項目を追加
> 2018年1月12日18時12分 朝日新聞デジタル
> 10年ぶりの改訂となる広辞苑の第7版が12日、岩波書店から発売された。「東日本大震災」や「がっつり」など追加1万項目を含め計25万項目を収録する。過去最多の発行部数となった第3版は約260万部だったが、最新版は初版20万部でスタートを切った。





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反差別運動の問題点

2019-07-10 21:02:18 | Weblog
長々と書いてしまったので先に雑なまとめ。
「差別問題がいつまでもなくならないのは、差別に反対する人たちが差別的な構造を正確に認識していないから」
「差別は、価値を認めないこと、犯罪視することと深く関係がある」
「差別者を見下し毛嫌いして排斥することもまた差別的だ」
「差別者も反差別者も、正しさを掲げている点が共通している」
「正しくないものを排除する意識はすでに差別的構造を内包している」
「すべての人は、何かを否定・排除することによって何かを認識している。何も差別しないで思考・判断することは不可能」
「社会的な問題として表面化している差別問題だけでなく、問題化していない差別的な構造を認識する必要がある」
「自分もまた差別的であることを自覚することなく、声高に差別反対を主張する人たちには注意が必要」
「害虫や雑草を毛嫌いするのも、人類の独善による立派な差別行為」
「現在、反差別運動に取り組んでいる人たちのアプローチでは差別問題の根本的な解決は困難だ」


***

差別に反対し、平穏な日々を求めるのは、素朴な思いから発した心優しい人の思いなのだろう。

ただ、いつまでたっても世の中から差別問題がなくならない状況を見て、自分たちのアプローチに問題があったのではないかと考える人がいてもおかしくはない。

私の認識では、差別することと、正しいことを推進することは、似通った構造を備えている。
つまり、何かを問題視し、否定することを当然のこととする姿勢が共通している。
多くの差別者は、自分たちは正しい当然のことをしていると認識しているし、差別に反対している人もまた、正しいことをしていると認識している。

社会ルールに反したもの、仲間内の共通認識を否定するもの、自分たちに害をなすもの。
そういった存在を否定し、見下し、咎め、遠ざけることは、自分や所属する共同体の存続に貢献する「良いこと」「正しいこと」「正義」だと見なされる。
否定されるべき「悪いこと」「間違ったこと」「悪」を毛嫌いし、否定し、見下すことは当たり前の常識として認識される。

民族主義者は移民を敬遠し、平和主義者は戦争を嫌い、清潔好きな人は汚れを否定し、勤勉な人は怠惰な人に眉をひそめる。
みんな、自分たちは「正しいこと」をしていると思っている。

ただ、「正しいこと」は、何かを否定し、価値を認めないところに基盤がある。
正しさを求める人は、差別的な意識構造から離れることはできないのだ。

「正しいこと」が社会の中において共通認識となっているうちは、差別的な構造は社会問題として表出しない。
しかし、さまざまな価値観が交差するときには、差別的な構造が差別問題としてあらわれてくる。

かつては当たり前のことだと思われていた男女の役割の区別は、異なった価値観が主流になることによって、差別として問題化した。
時代によって価値観は変遷する。
現在は、ペットを飼うことは何の問題もないが、将来的には動物差別と見なされ、動物奴隷解放運動がはじまる可能性もある。
犯罪者を見下すことは厳然とした差別だとして犯罪者差別をなくそうとする運動が広がる可能性もある
(すでにどこかでそのような活動をしている人もいるかもしれない)

価値観は、何かを否定し、何かを肯定することから逃れられない。
差別を「いけないこと」「否定されるべきこと」「咎められるべきこと」と認識し、正しさや正義を掲げることは、差別につながる意識だと言える。
だから、ほんとうに世の中から差別をなくしたいのであれば、まずは自分たちが「正しさ」によって何かを否定し、見下し、嫌悪することから解き放たれる必要がある。

敵をやっつける必要はないし、間違ったことを糾弾する必要もない。
声を荒げたり眉をしかめたり侮辱しても、問題解決から遠ざかるばかりだ。
逆に、力むことなく、柔和な表情のまま状況を変えることは可能だ。

そういったことを考えずに、差別を罪として否定ばかりしていても、世の中から差別問題はなくならない。


差別についていろいろ発言する先生方がいるけど、その多くは、「正しいこと」を推進し、否定されるべきものを否定すれば問題が解決すると考えているのではないだろうか。
しかし、「差別問題」という存在を消滅させれば差別がなくなるわけではない。

否定されるべき価値がないと感じられるものを攻撃し、咎めることがすでに差別的な意識を備えているのだ。
差別的な問題を起こす人を差別主義者と名付け、否定したところで、世の中から差別的な構造はなくならない。
社会問題として表出している差別問題は一時的に削除することができるかもしれないが、社会問題化していない差別構造に無自覚なままでは、またすぐに別の差別的構造が社会問題として顕出してくる。

本当に差別についてまじめに考えるのであれば、まずは、差別的に見える人の思考を、先入観なく分析するところからはじめてみてはどうだろうか。


差別反対する人は、まったく悪気はないのだろう。
しかし、差別者に対して犯罪者扱いして否定し、見下し、ときには敵意を見せる人たちを見ると、差別行為に通じる意識を感じてしまう。

「正しいこと」を掲げ、差別者を敵として否定するような反差別運動を見たら、ほんとうに差別問題が解消できるのか、対立が深まるだけではないか、実は差別者を差別しているのではないか、などと疑ったほうがいい。

差別する人も差別される人も、差別に反対する人も、どちらも意識レベルはたいしてかわらないことが多い。
結局人間は何かを否定し、何かを切り捨てることによって、自分の存在を認識しているのかもしれない。
社会問題化していないだけで、多くの人はさまざまな物や事象に価値の優劣をつけている。
宇宙規模で見たら何の根拠もないのに、自分や社会秩序の維持発展に役立つものを肯定し、不都合なものを否定する。
雑草も害虫も、人類の都合で勝手に悪役にされているだけで、自然界ではそのような、生まれながらに否定される存在はない。

「何かを否定することによってさまざまな秩序が維持されている、誰も潜在的に差別的な構造とは無縁ではいられない」などということを認識してこそ、差別を解消しようとする活動のスタートラインに立てるのではないだろうか。



意見の異なる人を病気扱いして否定することもある香山リカさん(精神科医)や、対立する人を侮辱して手を出すこともあるという関西学院大学の金明秀教授、レイシストを攻撃的に罵倒して威圧感を与える野間易道さん、「どんな理由があっても差別を受けていい人間なんて一人もいない」という“正しい”信念を元に差別に反対する川口泰司さん(ABDARC)たちは、はたして自分は差別とは無縁の「正しい」人間だと思っているのだろうか。
そんなことはない、誰だって差別的な意識構造を秘めている、そう自覚してこそ、差別問題解消のスタートに立てるのではないだろうか。
ネガティブな意味で、「右翼」「ネトウヨ」「左翼」「パヨク」「差別主義者」「産経」「朝日」「御用学者」「犯罪者」「売国」「反日」「バカ」「無能」「不潔」「うるさい」「臭い」などと言った言葉を使う人は、すでに差別的だと言える。

否定、見下し、攻撃。そんな姿勢を見せなくても、世の中を変えていくことは可能だ。
差別的なネガティブなレッテル貼り的ではない言葉を使わない思考ができてこそ、差別的な構造の解消につなげることができるのではないだろうか。

以前、ダライ・ラマの自伝を読んだとき、そこに怒りや攻撃、見下しといった表情は感じなかった。
おそらく、覚者(ブッダ)といわれる人もそのような精神状態だったのではないだろうか。
ダライ・ラマのような境地の人であれば、声高に人を非難するような行為はしないだろう。
なぜダライ・ラマは人を咎めないのか、非難しないのか、侮蔑しないのか、ぜひ反差別運動に関わる人に関心を持ってもらえたらと思う。



ちょっとネットを見てみると、反差別運動の攻撃性に違和感を覚える人もいるようだ。
差別に反対する人たちは、差別的な人たちを非難することができるのか、自分自身の足元を見ていただきたい。
もしかしたら、反差別運動に関わる人たちが、世の中の差別問題の解消を困難にしているのかもしれない。


・ネットの反差別運動の歴史とその実態(中川淳一郎)
https://www.news-postseven.com/archives/20170607_562072.html


差別者に敵対することが、差別の解消につながるわけではない。差別者を見下し、さげすみ、否定することもまた、差別的だからだ。
自分たちの意識が差別者と大して変わらないということを自覚して初めて、差別の解消につながるのではないだろうか。

聖書の言葉を思い出す。

> あなたたちの中で
> 罪を犯したことのない者が
> この女に、まず石を投げなさい
>
> 「姦通の女」ヨハネによる福音書第8章3〜11節




7/25追記
偶然見つけた記事。同感。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/54492?page=5
■「差別」とは何か?アフリカ人と結婚した日本人の私がいま考えること
> 正論の押し付け合いは無力である
> 鈴木 裕之
>
> 差別を生みだす精神構造は私たちみなが持っている。ヒトはその置かれた環境におおきく左右される動物であるから、差別主義者を攻撃するのではなく、差別が生みだされる環境を理解しなければならない。
>
> 人の心には、善も悪もある。天使も悪魔も、仏も鬼も棲んでいる。それらをどう飼いならすか。差別という「憑き物」をどう落とすか。
>
> 必要なのは抽象的な理念でも大袈裟なイデオロギーでもなく、人と人とのコミュニケーションの中で「落ちる」瞬間を具体的に体感し、その経験を積み重ねて、自身の心の中に自由な空間を広げてゆくことなのだ。


8/2追記
差別に関するニュースを見たけど、「反レイシズム情報センター(ARIC)」も、差別構造を解消することはむずかしいのではないだろうか。「差別者」を犯罪者扱いし、攻撃・否定し、ネガティブな言葉を使ってレッテル張りをしている。代表の梁英聖さんは、自分もまた差別的な人と同じようなことをしていないだろうか。「正しさ」は心の支えになるのかもしれないけど、対立する者を非難・排除する文面に少し痛々しさを感じる。
<参考>
■「一橋大の米国人男性准教授が授業時にヘイトスピーチ」 在日コリアン大学院生が国立市に人権救済申し立て
8/2(金) 7:47配信 毎日新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190802-00000002-mai-soci
レイシスト呼ばわりされている一橋大ジョン・F・マンキューソ准教授の言い分は知らないけど、梁英聖さんの姿勢に違和感を覚える第三者も少なくないのではないだろうか。
https://matome.naver.jp/odai/2153034040323751301
https://note.mu/ryangyongsong/n/nc2694ac4e2c1


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