波打ち際の考察

思ったこと感じたことのメモです。
コメント欄はほとんど見ていないので御用のある方はメールでご連絡を。
波屋山人

言論

2018-05-26 22:04:12 | Weblog
世の中には、ムカついている人が少なくない。
不満をかかえ、そのイラつきを解消するために、時には攻撃的あるいは見下したような言葉を使う。
だけど、そういった言葉を使っても、問題が解消され、より居心地のよい環境が整えられるわけではない。

いつまでたってもネガティブな感情を抱いて楽しくない日々をすごしている人は、どうすれば環境を変えることができるのか、まずは状況を分析することからはじめればいい。

分析力があまりなくても、世の中の仕組みを誠実に観察していれば見えてくることも多い。
なぜ自分が不満を感じるのか、自分の価値観について振り返ることもできるだろう。

しかし、残念ながら、60代や70代に限らず、20代や30代であっても自分の価値観が硬直化してしまっている人も多い。
自分が若いときに受容した価値判断基準を客観的に眺められず、多様な価値観が混沌としている世界の構造を認識することもできない。些末なことに一喜一憂し、問題は解決せず、眉をひそめたりため息をついたり声を荒げたりして堂々巡りを続けている。

右派でも左派でも、保守でも革新でも、自分の価値観というひとつの枠組みを絶対視するような人は、似たような思考パターンに陥りがちだ。
攻撃的なヘイトスピーチをする人も、ヘイトスピーチを暴力的に攻撃する人も、性質が似ている。

アマゾンのレビューを見ると、さまざまな立場のコメントが目につく。
冷静に分析をしているレビューは比較的高く評価され、荒っぽい言葉で否定するレビューは評価が低いことが多いのは興味深い。

世の中は、マイナスイメージのレッテルを貼り付けて否定しようとする人よりも、物事の構造をありのままに把握しようとする人が増えているのではないかと感じる。

たとえば、元駐韓大使の書いた、『韓国人に生まれなくてよかった』という本がある。昨年だったか、ベストセラーになっていたと思う。
書名にぎょっとするが、内容は意外に分析的。簡単にヘイトだと否定できるものではない。
この本が、知性の感じられない憎悪表現にあふれていると言うのであれば、どの部分がどういった観点から憎悪表現だと認識されるのかきちんと指摘し、その認識を他の人に共有してもらう必要があるだろう。
そでなければ、一方的なヘイト呼ばわりこそがヘイトスピーチだと思われてしまうかもしれない。
(丁寧な言葉で事実を指摘し、状況を分析しても、それを不愉快に感じる人が「喧嘩を売っているのか」と暴力的に迫ってくる場合もある。そういった、言論を封じ込めようとする動きにはきちんと「それこそヘイトだよ」と指摘してあげたほうがいい)

「民族主義や国家主義の否定」「周辺国との友好優先」「資本主義体制の否定」などといった価値観を重視する人にとっては、元駐韓大使の言説は受け入れがたいものだろう。身の毛のよだつものかもしれない。
だが、なぜ自分がそのように感じるのか冷静に分析してこそ、ストレスを減らし知的に成長することができるのではないだろうか。

下記のレビューを見ると、安易なネガティブイメージを貼り付けようとする言葉が多い。
右派左派限らず、このような表現をする人のレビューの評価が低いことは、言論空間の成熟を示しているのかもしれない。

> ネトウヨ張りの中国観
> ネトウヨ本のレベル
> ポピュリズムの申し子・三浦氏
> インチキ政権
> 中身は少しはまともなことがあると思いきや、ただのヘイト本であった

Amazonのレビュー(くまちゃん)
https://www.amazon.co.jp/gp/profile/amzn1.account.AEZBZEIOYSA2KMZW5JT55PZFV6CQ/ref=cm_cr_dp_d_gw_tr?ie=UTF8



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時事放談

2018-05-15 17:53:47 | Weblog
連休最終日の朝、すばらしく澄んだ空気と青空を感じながらテレビをつけると、ふと浜矩子教授の下がった口角や眉間のしわに目がとまった。
尊敬する作家・写真家の藤原新也さんは、安倍晋三首相の人相についてかなり評価が低いが、浜矩子教授の人相はどう評価するのだろか。

TBSの時事放談という番組は、反権力というか、社会主義擁護というか、とりあえず左派的姿勢だと認識されている人が多い。少なくとも、保守的ではないだろう。
しばらく番組を見ていると、案の定、政権を否定していた。
ただ、「非人間的」とか「この人たちに火星などに行ってほしい」とか「こんな人」などといった言辞を使用して、生理的に受け入れがたいという感覚を押し出している。
それでいて、「ですよね」などといった、同調を求める言葉は多いが、わかりやすい論理を聞くことはできない。

好き嫌いで物事を受け入れたり拒絶したりする、という行動は理性的とは言い難い。
現代では小学生でもロジカルシンキングという言葉を知っていたりする。
自分の意見を人に伝えようと思ったとき、好き嫌いを共有してもらうためのレトリックを使用するのは有効ではない。
自分と同じ意見の人には共感してもらえるだろうけど、意見の違う人からは距離を置かれてしまう。

TBSの時事放談は、左派内不満放談会として仲間内のストレスを解放しあう場所として存続させたいのだろうか。
さまざまな考え方の人にとって参考となる認識を提供したいのであれば、日曜の朝から眉をしかめたり口角を下げたりして不機嫌な言葉を感覚的にならべる人ではなく、すました顔で現状認識や解決方法の提案についてきちんと論理的に述べられる人に出演してもらった方がいいのではないかと思う。

浜矩子教授のような、一般的に左派と認識されている人の意見を好む視聴者が多い番組だから出演者は変えられないのかもしれない。
そうだとしても、クールな論理ではなくネガティブな感情によるレッテル張りの否定によって不平不満を解消しようとすると、現在の左派はそういう思考レベルなのかと疑われてしまう恐れがある。

視聴率は、朝6時台で2%弱?しかないのかもしれないけど、日曜日の朝だと小中学生もテレビを目にするかもしれない。
現代の小中学生は、論理的思考を意識している子もけっこう多い。そういった子たちにとって良い見本となるような言葉の使い方を増やした方が、番組の存続のためにもよいのではないかと感じる。

コメント (10)
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原画

2018-05-08 22:59:24 | Weblog
手塚治虫のサインが入った鉄腕アトムの原画1枚がパリでオークションに出され、約3500万円で落札されたという。

時事通信の報道ではその事実しか書いていない。
だが、「ヨーロッパではフランスが最大のアニメ・漫画大国」「ヨーロッパでは漫画の原画が芸術品として高く取引されている」という背景も重要だ。

4月12日に、九段のイタリア文化会館でフランスで活躍するイタリア人漫画家と、「テルマエロマエ」などで有名なヤマザキマリによるトークイベントを見に行った。
ヤマザキマリさんは50歳くらいだけど若く見え、ぼくの斜め前の席にいた参議院議員の小野田紀美さんもすらりといて映像で見る以上にきれいだった。
それはともかく、イタリアでは漫画専業で生活できている漫画家はとても少なく、マーケットも小さいので、イタリア人漫画家でもフランスで活動することがあるらしい。

また、ヨーロッパの漫画家は、時間をかけてカラーの漫画を描くことが多く、原画も高く取引されることが多く、それも一つのマーケットになっているとのことだった。
(もしかしたら印税収入よりも原画販売収入の方が多い?)

ヨーロッパでは漫画の原画を収集しているコレクターが多い。
日本の漫画はあまり原画が出回らない。
だから、ヨーロッパで日本の漫画の原画がオークションに出ると、高値が付きやすいのではないだろうか。

日本の漫画家も、海外のマーケットを視野に入れて、原画の制作・販売を進めてもおもしろいかもしれない。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018050500561&g=soc
■鉄腕アトム原画に3500万円=「日本国外で初めて競売」-仏
 【パリ時事】パリで5日、故手塚治虫が描いた漫画「鉄腕アトム」の原画が競売に出品され、当初予想の約6倍の26万9400ユーロ(約3500万円)で落札された。競売商「アールキュリアル」は、鉄腕アトムの原画が「日本以外で競売に出されたのは初めて」と述べている。
 原画は縦35センチ、横25センチの紙に墨汁と水彩絵の具で描かれ、手塚治虫のサイン付き。1950年代後半の月刊誌「少年」の連載用とされ、主人公アトムの戦闘シーンが6コマにわたり描写されている。
 アールキュリアルの漫画専門家はAFP通信の取材に「手塚治虫の作品としては世界最高額だ」と話している。落札者については「手塚治虫の原画購入を長らく夢見てきた欧州の収集家」とだけ説明され、詳細は明らかでない。
 鉄腕アトムは52~68年、「少年」に連載された漫画が最も有名。手塚治虫自らアニメ化し「ASTRO BOY(アストロ・ボーイ)」と名付けて海外販売を進めた経緯がある。(2018/05/06-00:36)


コメント (4)
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