波打ち際の考察

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波屋山人

席を倒す際のトラブル

2016-10-08 22:28:55 | Weblog
飛行機や新幹線で、座席の背を倒す際のトラブルはめずらしくない。
前の人が急に席を倒すことにより、後ろの人のテーブルの飲み物を倒してしまったり、しゃがんでいた人の頭を直撃することになってしまったり。
さまざまなトラブルが報告されているので、近年では「席を倒す際は後ろの人に声掛けください」というようなアナウンスを耳にすることもある。

ただ、そのような、後ろの席の人に対する配慮がされているのは、主に日本国内のことのようだ。
海外では、あまりそのような配慮を聞かない。
ある外国人が、「日本の新幹線では席を倒す時に後ろの人に声掛けをする傾向があるけど、海外でも席を倒す際のトラブルはあるのだから、取り入れたほうがいいのではないか」というようなことを書いていた。

それでも、「席を倒すのは当然の権利。何も言わずに急に倒しても、後ろの席の人に批判される筋合いはない。そんな非常識人は見下されて当然」と感じる人もいるようだ。

否定されるべき絶対悪を設定して見下したり否定したりするのは、差別や争いに満ちた世界の人にありがちな思考パターンではないかと感じる。

それはともかく、前の席の人が後ろの席の人に対して何も言わず席を倒すのは当然の権利だろうか。

少なくとも、席を倒すことによって、後ろの人のくつろいでいたエリアを狭めることになる。
モニターで映画を見ていた人は、急に適正な角度や距離を変えられてしまう。
深く倒されると、テーブルの飲み物にぶつかって倒れそうになる。
そういった、後ろの人の不利益が想像できる人は、ひとこと、席を倒す前に声をかけるのではないだろうか。

「席を倒してもいいですか」「席を倒します」そういったひとことを投げかけるだけで、突発的なトラブルを避けることができる。
(もし、声をかけたときに、後ろの席の人に「倒さないで」と言われたら、その時はCAさんに自分の権利を主張すればいい)

ただ、「飛行機の席を倒すのは当然の権利だから一切うしろの席の人に許可を得ようとしたり注意を喚起したりする必要はない」と言い切る人は、「正しい」と信じたことに疑いを抱かない人なのかもしれない。
だが、そこからトラブルや対立が生じてしまう。

「正しいこと」に関する価値観を共有する人からは「当然の権利を非常識人に邪魔されて災難でしたね」と言ってもらえるかもしれないけど、違う考えの人もいるだろう。
「この人の思考はどのようなパターンに基づいているのだろうか。常識という名の先入観にとらわれすぎていないだろうか。論理学を学ばれたことはあるのだろうか。自分も何を言われるかわからないから距離を置くことにしよう」と感じる人もいるのではないだろうか。

尊敬する言語学者のブログを見ながらそんなことを思った。
http://fjii.blog.fc2.com/blog-entry-1130.html


それにしても、エコノミークラスで移動するからそんなトラブルに見舞われるのではないだろうか。
この1年、ビジネスクラスとエコノミークラスでそれぞれ2回くらい海外旅行に行った。
やはり、ビジネスクラスは快適だ。席は後ろに倒れてきたりしないし、なんだかCAさんも丁重だし、テレビモニターも大きいし。
エコノミークラスも昔に比べたら席の間隔も広くなり、居心地がよくなったけど、それでも前の人に深く席を倒されるとつらい。やすらぎの空間を無言で狭められるような圧迫感がある。

言語学者の人も、その人が無言で席を倒したことを不快に感じた人も、ビジネスクラスを利用していたら、豊かな時間をすごすことができただろう。
航空会社も、席の仕様をすべてビジネスクラスのようにするか、席を倒す前にことわりを入れることを推奨するアナウンスをするか、何か対策しないと、そのうち大きなトラブルが発生するかもしれない。


ちなみに、ぼくは小心者なので、後ろの席に人がいるときは、声掛けしづらくて席を倒さないことが多い。後ろに誰もいないときは少し倒す。ビジネスクラスの時だけ、心置きなく最大限席を倒す。。。



■参考
(天声人語)座席倒しのトラブル
2016年5月29日05時00分
このごろ新幹線や飛行機、長距離バスで、前の乗客から「イスを倒していいですか」と声をかけられることが増えた。そのひと言で旅の気分はほんのり温まる。かと思うと無言でグワッと倒され、一気に冷える日もある▼外国の航空路線で少し前、座席の倒し方をめぐるトラブルが続いた。「急に倒されてスマホが割れた」「頼んでも戻してくれない」。後ろの客が前の客を殴って警察へ連行された。交通手段が高速化するにつれ、乗客の頭に血がのぼるスピードまで速まったのだろうか▼鹿児島交通で長距離バスを運転する村瀬芳尚さん(39)はもめないよう一計を案じた。走り出してすぐマイクで語りかける。「後ろの方が気になって席を倒しにくいってことありますよね。後腐れのないよういま一斉に倒しましょうか。はいドーン」▼効果はてきめん、乗客が苦笑いしつつこぞって倒しにかかる。運転手が言うなら気兼ねはいらない。さえた車内放送をツイッターで紹介した客がいて、評判は広がった▼乗務マニュアルに書かれていたわけではない。「倒す倒さないでもめると、終点の福岡まで6時間ずっと雰囲気が重くなります。僕が声かけ役を一手に引きうけようと考えました」▼座席倒しトラブルの多さに手を焼いた英航空業界には、全席を倒せないよう固定した社もある。だが乗る側の快適さでいえば、一斉ドーンの村瀬さん式のほうが格段に上だろう。費用はかからず警察沙汰にもならない。何より旅の気分が温かくなる。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12382284.html




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