第1回 / 第2回 / 第3回 / 第4回 / 第5回 / 第6回 / 第7回
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2日後
【こないだはごめんね。突然10枚も手紙だしちゃって。驚いたでしょ。でも、あれが僕の気持ちなんだ。あれほど君のこと好きなんだ。わかってくれたかな?なかなか答え出すの難しいと思うけど、返事ください。そうしないと、僕の首は、今のところ、雲の上でジャンボジェットに、こんにちはって感じだけど、もうすぐ大気圏に突入して、燃え尽きちゃって、流れ星になって君の家に降り注ぐよ。って冗談です。本気にしないで下さいね。今回は長くならないようにこの辺でやめておきます。ともかく、早く返事ください。OKでもNOでも、どちらでもいいから、答えを下さい。でも、できればOKと言って欲しいな。大好きだよって言って欲しいな。そしたら、今度の日曜日、いきなり二人でってのもなんだから、お互いに友達何人か連れてさ、映画でも観に行こうよ。それじゃ、返事待ってるよ。それじゃあ、また。SeeYa!】
「ま、こんなもんでいいか」
返事の催促の手紙を1枚書いた。
外の月は、小さい。
「いやよ、こないだ言ったでしょ、1回だけだって」
天川は椅子に座るなりそう返した。
「いいじゃんか。たのむよ」
「やだったら、やだ。も~、そんなに渡したかったら、自分で渡しなよ」
「いや、できないよ、そんなこと。だからさ、ね」
手紙を天川に差し出した。
「ねえ、お願いだから、もう私を頼らないでくれる?」
差し出した左手を、押しのけた。
「今回だけで終わりにするからさ」
「だから、絶対、やだって」
「別にいいじゃん、手紙渡すくらいしてくれたって」
「なんなのよ、私は郵便屋じゃないのよ」
「そんな怒んなくてもいいじゃん」
「怒ってないよ。ともかく、どんなことがあっても手紙は渡さないからね」
「もう、わかったよ。じゃ、頼まないよ」
右手で数学の教科書に挟み込んだ。邪魔するプリントも気にせずに押し込んだ。
「・・・ってさ、滑っちゃたんだ」
「え~、そんなことある~?話つくってない?」
ブラスの音が響く音楽室。カーテンの隙間からこぼれる、赤の矛先に座っているかおりんと裕子。
「別につくってないよ」
(ほんと、あの時はびびったんだから)
「ほんと~?」
「ほんとだよ~」
(あ~、楽しいな~。こんなに気兼ねなく会話できるなんて)
「ねえ、かおりん」
黒。影。クラリネットを首から提げた、天川が隙間に入り込んだ。
「え、なに?」
「あんたさ、あいつに、いつ返事するの?」
「え」
(あ、そういやそんなことあったな)
「あいつさ、ずっと、あんたの返事待ってるんだよ。早く返事してあげなよ」
「でもね~」
(僕は当事者じゃないんだから)
「別に嫌いなら嫌いで、断ればいいじゃない。返事しないで逃げようなんてずるいよ」
「ずるいとか言われてもさ」
(勝手に決められないよ)
「ねえ、かおりん、何の話?」
「いや、あのね・・・」
(言っちゃっていいかな?)
「裕子、別にあなたには関係がない話なの。ちょっとどっか行っててくれる?」
かおりんの言葉を遮るように、天川がドアを左手で指差しながら言った。
「なによ、その言い方。ひどいじゃない。私だけ仲間はずれにしようっていうの?」
「そうよ、その通りよ。これは私たちの問題なの。首突っ込まないでもらえる?」
「ちょっと待ってよ。そりゃいくらなんでも言い過ぎだって」
(天川さん、いきなりどうしたんだ?)
「なによ、かおりんもかおりんよ。返事してないくせに裕子と楽しそうに話しちゃって。もうちょっとあいつのこと考えて悩みさいよ」
「なんで?」
(なんか中年女のヒステリーやってるよ)
「なんでって、なによ。なんでって。ふざけないでよ、ラブレター送ったあいつの気持ち考えてみなよ」
「え、かおりん、ラブレターもらったの?誰に?」
「裕子、あんたは黙っててって言ったでしょ」
「私はかおりんに聞いてるんです。あなたには聞いていません」
「あ、そうでしたか?でもですね、今、かおりんは、私とお話しているので、あなたにかまってる暇なんて、どこにもないんです」
「いえ、それはあなたの思い込み。かおりん、嫌がってるじゃない」
「そんなことないわよ。かおりんは、私とお話したいの。ね、そうだよね」
「いや、あの」
(どうすりゃいいんだよ)
「ほら、かおりんは、あなたと話したくないって。あなたこそ黙りなさいよね」
「うるさいわね。あんたがいるから、かおりん話さないのよ」
「なによ、人のせいにして。自分が悪いんでしょ。突然、話に割って入って来たくせに」
「あんたこそ、自分に関係ない話に入ってこようとしたじゃない」
「関係ないことないでしょ、私だってかおりんの友達なんだから。何があったか聞いたっていいじゃない」
「よくないわよ。あんたごときに聞かせるようなことじゃないの」
「ごときってなによ、ごときって。あなたは何様なわけ?」
「あ、あの、ちょっと、いい?」
(このままほっといたら、喧嘩になっちゃうよ)
「なによ」
「え、どうしたの、かおりん?」
「いや、あのさ、天川。裕子にも教えようよ」
(こうするしかないって)
「なんで?なんで裕子に教えなきゃならないわけ?」
「だってさ、僕一人じゃ決められないから、裕子の意見も聞いた方がいいかなって思って」
(秘密を共有すれば、より親密な仲になれるし)
「なんで一人じゃ決めらんないのよ」
「あいつに対してさ、恋愛感情ってやつが本当に無いんだ。だから、本当に付き合っていいのかどうかなんて、自分じゃ決めづらいじゃない」
(僕的には、付き合う気なんてまるでないんだけどね)
「じゃ、なんでそれが裕子じゃなきゃいけないわけ?私じゃ駄目なの?」
「え、いや、別に、駄目とかそういうのじゃなくて、たくさんの人の意見聞きたいじゃない。その中で自分の答えが出せるっていうかさ、いろいろ考えられるじゃない」
(本当は裕子と話しがしたいだけなんだけど)
「ま、そりゃそうだけど」
「だからさ、裕子にも教えようよ、ね?」
(お、うまくいったか)
「いや、でも、それはちょっと待って。あいつがさ、他の人に言わないでって言ったんだ。だから、あいつがいいって言ったらにしようよ」
「うん、わかった。じゃ、裕子、それまでの間ちょっと待っててくれる?」
(とりあえずこれで収集ついたな)
「うん、わかったら相談に乗ってあげるよ」
「ありがとう」
(やった、これでまた話す機会が増える)
数学の教科書から手紙を抜き出すと、机の引き出しに押し込んだ。
「かおりんがね、あんたへの返事考えたいから、裕子って子に相談したいって言ってきたんだけど、いい?」
翌週の月曜日、「おはよう」「ねむいね」の次に、天川の口から出た言葉はこうだった。
「え、いや、あの、ま、いいよ」
「じゃあ、そう言っとくから」
「あ、それじゃ、返事のこと聞いてくれたんだ」
「ばか、聞くわけないでしょ。かおりんが勝手に言ってきたの。なんで私があんたのために聞かなきゃならないのよ」
「いや、俺のこと心配してくれたのかな?って思ってね」
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第9回
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『想い』
彼 の こ と を
友 の こ と を
想 う 気 持 ち
決 し て
嘘 じ ゃ な い
と
胸 を 張 っ て 言 え る な ら
そ れ で い い と 思 う
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第8回あとがき
[当時]
今回は無茶苦茶ベタなことをやってしまいました。
あんまりこういうのはやりたくないんだけど、
この作品はこういうのも入れなきゃいけないんです。
[現在]
いけないって断言されては、どうにも反論できません。
そもそもこのお話書いたの覚えてないし。。。
少女マンガの王道ラブコメみたいですね。なんか。
と同時に、無駄っぽいものを細かく取り上げる、
やっぱり雰囲気重視の邦画的構造になってますね。ふむ。
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2日後
【こないだはごめんね。突然10枚も手紙だしちゃって。驚いたでしょ。でも、あれが僕の気持ちなんだ。あれほど君のこと好きなんだ。わかってくれたかな?なかなか答え出すの難しいと思うけど、返事ください。そうしないと、僕の首は、今のところ、雲の上でジャンボジェットに、こんにちはって感じだけど、もうすぐ大気圏に突入して、燃え尽きちゃって、流れ星になって君の家に降り注ぐよ。って冗談です。本気にしないで下さいね。今回は長くならないようにこの辺でやめておきます。ともかく、早く返事ください。OKでもNOでも、どちらでもいいから、答えを下さい。でも、できればOKと言って欲しいな。大好きだよって言って欲しいな。そしたら、今度の日曜日、いきなり二人でってのもなんだから、お互いに友達何人か連れてさ、映画でも観に行こうよ。それじゃ、返事待ってるよ。それじゃあ、また。SeeYa!】
「ま、こんなもんでいいか」
返事の催促の手紙を1枚書いた。
外の月は、小さい。
「いやよ、こないだ言ったでしょ、1回だけだって」
天川は椅子に座るなりそう返した。
「いいじゃんか。たのむよ」
「やだったら、やだ。も~、そんなに渡したかったら、自分で渡しなよ」
「いや、できないよ、そんなこと。だからさ、ね」
手紙を天川に差し出した。
「ねえ、お願いだから、もう私を頼らないでくれる?」
差し出した左手を、押しのけた。
「今回だけで終わりにするからさ」
「だから、絶対、やだって」
「別にいいじゃん、手紙渡すくらいしてくれたって」
「なんなのよ、私は郵便屋じゃないのよ」
「そんな怒んなくてもいいじゃん」
「怒ってないよ。ともかく、どんなことがあっても手紙は渡さないからね」
「もう、わかったよ。じゃ、頼まないよ」
右手で数学の教科書に挟み込んだ。邪魔するプリントも気にせずに押し込んだ。
「・・・ってさ、滑っちゃたんだ」
「え~、そんなことある~?話つくってない?」
ブラスの音が響く音楽室。カーテンの隙間からこぼれる、赤の矛先に座っているかおりんと裕子。
「別につくってないよ」
(ほんと、あの時はびびったんだから)
「ほんと~?」
「ほんとだよ~」
(あ~、楽しいな~。こんなに気兼ねなく会話できるなんて)
「ねえ、かおりん」
黒。影。クラリネットを首から提げた、天川が隙間に入り込んだ。
「え、なに?」
「あんたさ、あいつに、いつ返事するの?」
「え」
(あ、そういやそんなことあったな)
「あいつさ、ずっと、あんたの返事待ってるんだよ。早く返事してあげなよ」
「でもね~」
(僕は当事者じゃないんだから)
「別に嫌いなら嫌いで、断ればいいじゃない。返事しないで逃げようなんてずるいよ」
「ずるいとか言われてもさ」
(勝手に決められないよ)
「ねえ、かおりん、何の話?」
「いや、あのね・・・」
(言っちゃっていいかな?)
「裕子、別にあなたには関係がない話なの。ちょっとどっか行っててくれる?」
かおりんの言葉を遮るように、天川がドアを左手で指差しながら言った。
「なによ、その言い方。ひどいじゃない。私だけ仲間はずれにしようっていうの?」
「そうよ、その通りよ。これは私たちの問題なの。首突っ込まないでもらえる?」
「ちょっと待ってよ。そりゃいくらなんでも言い過ぎだって」
(天川さん、いきなりどうしたんだ?)
「なによ、かおりんもかおりんよ。返事してないくせに裕子と楽しそうに話しちゃって。もうちょっとあいつのこと考えて悩みさいよ」
「なんで?」
(なんか中年女のヒステリーやってるよ)
「なんでって、なによ。なんでって。ふざけないでよ、ラブレター送ったあいつの気持ち考えてみなよ」
「え、かおりん、ラブレターもらったの?誰に?」
「裕子、あんたは黙っててって言ったでしょ」
「私はかおりんに聞いてるんです。あなたには聞いていません」
「あ、そうでしたか?でもですね、今、かおりんは、私とお話しているので、あなたにかまってる暇なんて、どこにもないんです」
「いえ、それはあなたの思い込み。かおりん、嫌がってるじゃない」
「そんなことないわよ。かおりんは、私とお話したいの。ね、そうだよね」
「いや、あの」
(どうすりゃいいんだよ)
「ほら、かおりんは、あなたと話したくないって。あなたこそ黙りなさいよね」
「うるさいわね。あんたがいるから、かおりん話さないのよ」
「なによ、人のせいにして。自分が悪いんでしょ。突然、話に割って入って来たくせに」
「あんたこそ、自分に関係ない話に入ってこようとしたじゃない」
「関係ないことないでしょ、私だってかおりんの友達なんだから。何があったか聞いたっていいじゃない」
「よくないわよ。あんたごときに聞かせるようなことじゃないの」
「ごときってなによ、ごときって。あなたは何様なわけ?」
「あ、あの、ちょっと、いい?」
(このままほっといたら、喧嘩になっちゃうよ)
「なによ」
「え、どうしたの、かおりん?」
「いや、あのさ、天川。裕子にも教えようよ」
(こうするしかないって)
「なんで?なんで裕子に教えなきゃならないわけ?」
「だってさ、僕一人じゃ決められないから、裕子の意見も聞いた方がいいかなって思って」
(秘密を共有すれば、より親密な仲になれるし)
「なんで一人じゃ決めらんないのよ」
「あいつに対してさ、恋愛感情ってやつが本当に無いんだ。だから、本当に付き合っていいのかどうかなんて、自分じゃ決めづらいじゃない」
(僕的には、付き合う気なんてまるでないんだけどね)
「じゃ、なんでそれが裕子じゃなきゃいけないわけ?私じゃ駄目なの?」
「え、いや、別に、駄目とかそういうのじゃなくて、たくさんの人の意見聞きたいじゃない。その中で自分の答えが出せるっていうかさ、いろいろ考えられるじゃない」
(本当は裕子と話しがしたいだけなんだけど)
「ま、そりゃそうだけど」
「だからさ、裕子にも教えようよ、ね?」
(お、うまくいったか)
「いや、でも、それはちょっと待って。あいつがさ、他の人に言わないでって言ったんだ。だから、あいつがいいって言ったらにしようよ」
「うん、わかった。じゃ、裕子、それまでの間ちょっと待っててくれる?」
(とりあえずこれで収集ついたな)
「うん、わかったら相談に乗ってあげるよ」
「ありがとう」
(やった、これでまた話す機会が増える)
数学の教科書から手紙を抜き出すと、机の引き出しに押し込んだ。
「かおりんがね、あんたへの返事考えたいから、裕子って子に相談したいって言ってきたんだけど、いい?」
翌週の月曜日、「おはよう」「ねむいね」の次に、天川の口から出た言葉はこうだった。
「え、いや、あの、ま、いいよ」
「じゃあ、そう言っとくから」
「あ、それじゃ、返事のこと聞いてくれたんだ」
「ばか、聞くわけないでしょ。かおりんが勝手に言ってきたの。なんで私があんたのために聞かなきゃならないのよ」
「いや、俺のこと心配してくれたのかな?って思ってね」
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第9回
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『想い』
彼 の こ と を
友 の こ と を
想 う 気 持 ち
決 し て
嘘 じ ゃ な い
と
胸 を 張 っ て 言 え る な ら
そ れ で い い と 思 う
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第8回あとがき
[当時]
今回は無茶苦茶ベタなことをやってしまいました。
あんまりこういうのはやりたくないんだけど、
この作品はこういうのも入れなきゃいけないんです。
[現在]
いけないって断言されては、どうにも反論できません。
そもそもこのお話書いたの覚えてないし。。。
少女マンガの王道ラブコメみたいですね。なんか。
と同時に、無駄っぽいものを細かく取り上げる、
やっぱり雰囲気重視の邦画的構造になってますね。ふむ。
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