絵本と児童文学

絵本と児童文学、子ども、保育、サッカーなどの情報を発信する

聖火をめぐる攻防

2008-04-20 17:54:46 | 生活・教育・文化・社会
 オリンピック聖火が、長野市をリレーする26日がいよいよ迫ってきた。この間ロンドンに始まった(4月6日)聖火リレーへの抗議行動は、パリ(7日)でさらにエスカレートし、その後は聖火リレーに人を近づけない厳重な警備のもとでリレーされている。
 本来の聖火リレーの意味は失われ、オリンピック委員会と中国の威信をかけた行事になっている。
 サンフランシスコ(9日)ぐらいからは、聖火リレーを声援する中国人の行動が加わり、政治問題の色が濃くなっている。いずれも人を寄せ付けないため、聖火が見えないところでの、リレーとなっている。

 長野市は善光寺が出発点とされていたが、寺側が辞退したため別な場所に変更された。善光寺は長野市の象徴であり、多くの人が訪れる場所として選んだだろうが、今回のチベット問題への中国政府への抗議ということからして、仏教寺院としては当然の辞退であろう。
 善光寺を出発点としたならば、国際的に見れば仏教寺院が中国政府を擁護し、チベットの仏教徒同胞への理解を示さない、というメッセージを発することになるのである。

 今回の聖火は、3月24日にアテネで採火されたたものが、いったん北京に運ばれて胡錦濤国家主席を中心にすえて出発式が行われた。北京から1カ月かけて世界中をリレーするという計画に、今日の中国の事情を色濃く反映したものである。欧米型の民主主義でない、いわば近代的な国家でない一党独裁国家であり、中国が国家の威信を国際的に発信するイベントとして位置づけているといえよう。
 そのコースの都市は、中国ゆかりの地が多く選ばれている。ロンドンは中華街の歴史が長い、パリは現在の国家を作った人たちが若いとき学び、サンフランシスコはその開発に中国人が大量に移民した地である。アジアでは華僑の多いバンコク、さては香港、マカオとなっている。

 聖火リレーで、今日の中国の人権弾圧問題を中心に、近代国家としての仕組みを持っていないという問題が露呈した感がある。国際社会は、オリンピック開催に中国の近代化を期待していたが、道半ばである。むしろ「中華思想」が依然として底流にあるのではないか、とらえる向きもある。人口が世界の20%弱を占め、中国製品が隅々まで席巻し経済成長が著しい。世界中に中国人街があり、途上国と位置づけられているものの、ポストアメリカと見る人もいるぐらいである。
 聖火リレーを中国批判する機会と考える場合、欧米ではチベット弾圧という人権問題への批判であるが、日本ではそれだけではなく反中ナショナリズムの立場から批判している人も多い。
 日本は近隣国外交としては、欧米と同じ立場で行動するのは難しい。ダライ・ラマ14世が、アメリカへ行く途中に立ち寄った際日本で記者会見したことが、精一杯ということか。欧米からは、日本は中国の人権弾圧問題に対して沈黙している、と見られる可能性は否めない。