Me & Mr. Eric Benet

私とエリック・ベネイ

金子三勇士 ピアノリサイタル 2/13 2011 鎌倉

2011-02-14 10:52:20 | ピアニスト 金子三勇士
品川から横須賀線で50分余り。
横浜を過ぎた辺りから景色は変わり始める。
北鎌倉では電車のホームまで緑が迫ってくる。
遠くに山も見えている。
前日までは雪やみぞれ、不安定だった天候がこの日は雲一つなく、
晴れ渡っている。
これから聴く金子三勇士のリサイタルもこの日の空のように、
澄み切って美しく突き抜けた音を聴かせてくれることを予感した。

鎌倉生涯学習センターホール。
駅から2分とあったが駅のロータリーを抜けるとほぼ正面。
たいへん分かりやすい位置だ。
後援は鎌倉市。主催は鎌倉市芸術文化振興財団。

今回は自由席とあり、また開場は開演の30分前。
少し早めに行くように心掛けたいと思っていた。
開場が始まった頃に到着すると受付に行列ができている。
中に入ると350席ほどのホールだろうか。
ピアノは珍しいスタンウェイのCタイプ。
大きなコンサートホールではD、
反対にシャネル・ネクサスホールなどの小ホールでは、
Bだった。

この日のパンフレット。
モノクロでアンティークな雰囲気にあえて作ってある。
サブタイトルでは「フランツ・リスト生誕200年に寄せて」とある。
その言葉に相応しくリスト中心にバッハやベートーヴェンの曲も、
演奏された。

リスト ハンガリー狂詩曲 第2番 嬰ハ短調
バッハ フランス組曲 第5番 ト長調
ベートーヴェン ピアノソナタ 第8番 ハ短調「悲愴」

ここで休憩が入る。

バルトーク ルーマニア民族舞曲
バルトーク 3つのチーク県の民謡
リスト ピアノソナタ ロ短調

アンコール
リスト 愛の夢第3番
バルトーク オスティナート(Ostinato、ミクロコスモス集第6巻より)

前半のバッハ、以前にシャネルのネクサスホールの第一回目で聴いているはずだが、
全く違った印象を受けた。
あれから2年余り、ピアニストの内面性、表現力、技術、
いろいろな意味での変化が演奏に反映している。
ベートーヴェンのピアノソナタ、金子三勇士の演奏で聴くのは初めて。
ベートーヴェン、バッハ共に金子三勇士との相性が抜群だった。

後半のバルトークの二曲。
これはいつも思うのだがハンガリーの田舎の村の景色、
鳥や獣の声、村の祭りの様子が目の前に再現されてくるようだ。

リスト、ピアノソナタ。
初めて聴かれた方はこの曲の長さが30分越えることに気づかれただろうか。
人生の美しさ、悲しさ、怖れと喜び、また天国と地獄を思わせる二つの世界が交差するこの曲。
曲の中へと深く惹き込まれていくので実際よりもずっと演奏時間が短く感じられる。

アンコール、
「明日はバレンタインデイですので。皆さんにこの曲をプレゼントします。」
リスト 愛の夢。

そして「風邪の季節、免疫力の向上のためにも、もう少し体温を上げたいと思います(本人と観客共々に)」
とバルトーク:オスティナート(Ostinato、ミクロコスモス集第6巻より)
勢いのある曲に客席から歓声が上がる。

「愛の夢」でうっとりとさせて力が抜けた観客に最後にカツを入れて元気を与えて会場から送り出す。
いつもながら心憎い演出。
今回のコンサート、盛り沢山で金子三勇士のいろいろな面を観ることができた。
いらっしゃった方々もそれぞれ心から満足されて家路につかれたに違いない。
これだけの激しい演奏、ピアノも良く付いて来てくれたと最後はピアノへのお礼、
そして鎌倉市の方達、遠くから足を運んだ観客達への感謝の言葉で締めくくられた。

この日、フランスから来日していた山下農園の山下朝史氏、
羽田からの深夜便でパリへ向かわれる前に鎌倉まで三勇士のコンサートを聴くために足を運んで下さった。
フランスで車の中で金子三勇士の1stアルバム"Miyuji Plays Liszt"を聴いてきて、
この機会にぜひ生で彼の演奏を聴きたいと思われたそうだ。
「金子君の演奏は3D、目の前に映像が浮かんでくる気がする。」
別のピアニストと比較して、そのピアニストの演奏が「小川で水が小石の間を流れて行くような演奏」
それに対し三勇士は「大海の岸壁に波が打ち寄せているようだ。」と表現された。

金子三勇士のお父様が「病気の人や辛い思いをしている人を
勇気づけられる演奏ができるピアニストになって欲しいと願っている。」と昨日話していられたが、
「世界平和に貢献する音楽家になりたい。」という志を持つ金子三勇士。
風邪が蔓延して寒さの最も厳しい今の時期、観客に明るさと喜びを与え、
体温を確実に0.5度は上昇させたはずだ。